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パウリア戦記 〜見えざる手と鉄の鎚〜  作者: Cattler


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第79話:銀の施し

本作は、作者が構築した詳細なプロットおよび世界観設定に基づき、AI(Gemini)を用いて文章の初稿を作成しています。また、物語の骨子には作者が持つ地政学、国際政治学、マクロ経済学の基礎理論を反映させており、単なる空想に留まらない国家間の動態や経済的背景を構築しています。


AIによって生成された文章は、これらの理論的整合性を含め、作者自身が精査・改稿し、表現の微調整を全面的に行っております。


挿絵の挿入&修正を、不定期でやり直しております。


【閲覧にあたっての免責事項】 本作はフィクションであり、実在の人物、団体、国家、および歴史上の出来事とは一切関係ありません。 作中で描かれる政治・経済的描写や思想、国際情勢は、あくまで物語の演出上の設定であり、特定の思想を推奨、あるいは批判する意図はございません。

クロー王国の国境、北へ続く街道は、かつて鉄鉱石や石炭を運ぶ荷馬車が絶え間なく行き交う「鉄の動脈」であった。だが、クローで産出される資源はファング産のそれと比べれば不純物が多く、質は決して高くはない。かつては王の冷徹な統制のもと、膨大な労働力による薄利多売のボリュームで、強引に採算を取っていたに過ぎなかった。


挿絵(By みてみん)


 その歪な構造が、王という重力を失ったことで完全に崩壊した。  「カイル……もう、一歩も動けん……」  敗残兵の一匹が、道端の枯れ木に寄りかかってずるずると崩れ落ちた。ソストラダーニエ王という絶対的な経営者を失った彼らにとって、数日間の不眠不休の行軍と深刻な食糧不足は、物理的な死となって迫っていた。


 カイル自身も、槍を杖代わりにしなければ立っていられないほどに衰弱していた。胃の腑は裏返るほどに空虚で、かつて王の背中を追った情熱は、今や生存本能という名の冷たい渇きに取って代わられていた。


 その時、街道の向こうから、奇妙に明るい色彩を放つ一団が現れた。  クロー王国の漆黒とも、ニャー王国の黄金色と白とも異なる、鮮やかな青と白の旗印。ユーリ商会の輸送隊である。


挿絵(By みてみん)


 「クロー王国の勇猛なる雄猫たちよ! 武器を収めよ! 我々は戦いに来たのではない。苦難にある隣人に、救いの手を差し伸べに来たのだ!」


 輸送隊の先頭に立つ商人が、朗々と声を上げる。彼らの荷馬車には、焼きたてのパンの芳醇な香りと、滋養に富んだ干し肉の匂いが、暴力的なまでの誘惑となって漂っていた。


 「食糧だ……! 食べ物があるぞ!」  兵士たちが、最後の力を振り絞って荷馬車へ這い寄る。カイルは本能的に警戒し、槍を握り直したが、目の前で差し出された真っ白なパンを拒むことはできなかった。


 「さあ、遠慮なく食べるがいい。代金などは不要だ。……今は、な」  ウィスカーの商人は、飢えた猫人たちがパンを貪り食う様子を、慈悲深い、しかし冷徹な観察者のような目で見つめていた。


 これは純粋な慈善ではない。質の悪い鉄と石炭を大量生産することでしか存立できなかったクロー王国の経済基盤は、生産効率が落ちた瞬間に破綻する。ユーリによる「一方的な贈与」は、受取側に逆らいがたい心理的負債を植え付ける。今後、彼らの安価な資源はすべて、このパンの代価としてユーリに独占的に買い叩かれることになるだろう。


 「……カイル、これ、美味いぞ……生きててよかった……」  涙を流して肉を食らう仲間の横で、カイルもまた、一切れの肉を口に運んだ。舌の上に広がる濃厚な脂の味に、脳が痺れる。だが、その背筋を冷たい悪寒が走った。


挿絵(By みてみん)


 この食糧は、かつての王が与えてくれた「規律の対価」ではない。  「……毒だ」  カイルは小さく呟いた。  物理的な毒ではない。質の悪さを量で補ってきたクローの産業構造を、ユーリの資金という名の負債で固定し、永遠に従属させる経済的な劇薬。


 パンを噛みしめるカイルの視線の先、輸送隊の馬車には「ユーリ商会、およびその番頭サファイアの慈悲」という文字が刻まれていた。  王を失い、誇りを失ったクロー王国の猫人たちは、いま、見えない青と白の首輪を自ら首にかけようとしていた。

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