第6話:強欲の救済
本作は、作者が構築した詳細なプロットおよび世界観設定に基づき、AI(Gemini)を用いて文章の初稿を作成しています。また、物語の骨子には作者が持つ地政学、国際政治学、マクロ経済学の基礎理論を反映させており、単なる空想に留まらない国家間の動態や経済的背景を構築しています。
AIによって生成された文章は、これらの理論的整合性を含め、作者自身が精査・改稿し、表現の微調整を全面的に行っております。
挿絵の挿入&修正を、不定期でやり直しております。
王都フェリスに帰還したハルモニーを待っていたのは、沈痛な空気であった。 国境付近で奪われた麦は、王国の年間蓄えの三割。だが、ニャー王国とて無策ではない。代々の王が積み上げてきた国庫の備蓄を開放すれば、単年度の飢えを凌ぐことは十分に可能であった。
しかし、ハルモニーが危惧していたのは、単なる食糧不足ではない。供給不安が引き起こす物価の高騰、そしてそれにつけ込む「隣国の目」であった。
「……王太子殿下、ウィスカー貿易領の豪商ガストロ殿がお待ちです」
侍従の報告を受け、ハルモニーは応接の間へと向かった。 そこに座っていたガストロは、手入れの行き届いた毛並みを揺らし、計算高く細めた瞳で喉を鳴らした。
「これはこれは、勇猛なるハルモニー殿下。クローの野蛮人どもを槍の壁で押し返したとの報せ、我が国でも喝采を浴びておりますぞ」
挨拶もそこそこに、ガストロは一巻の羊皮紙を机に広げた。
「緊急支援として、十万石の麦を提示しましょう。ただし――対価として、今後五十年にわたる『南西街道の徴税権』、および『未開発炭鉱の租借権』をいただきたい」
その条件を聞いた瞬間、同席した老騎士たちが声を荒らげたが、ハルモニーは逆に冷静になった。彼は帝王学の講義で学んだ交渉の理を脳内で展開する。
(……法外だ。単年度の不足を補う対価として、国家の根幹を五十年も差し出すなど釣り合わない。ガストロ殿、貴殿はわざと『絶対に断られる条件』を最初に持ってきたな。)
ハルモニーは険しい顔を崩さず、静かに言い放った。
「ガストロ殿、冗談が過ぎる。我が国の国庫には、民を一年養うに足りる備蓄がある。貴殿の麦がなくても、今日明日で国が滅ぶことはない。徴税権という『国の四肢』を切り売りするほど、我らは愚かではない」
ガストロの髭がピクリと動いた。ハルモニーは畳み掛ける。
「貴殿の真の狙いは、その後の『関税の免除』か、あるいは『通貨交換比率の固定』か? 最初にこの過酷な条件を見せることで、次に提示する条約をマシに見せようとしているのだろう。……父上から何を言質に取ったかは知らぬが、摂政たる私を通さぬ契約は認めん」
部屋に沈黙が流れた。ガストロは感心したように喉を鳴らし、深く座り直した。
「流石はハルモニー殿下。……ええ、左様です。では、現実に即した話をしましょうか。国王陛下からは、すでに『ウィスカーとの優先貿易権』については前向きな感触をいただいております」
ガストロが別の書面を取り出した。そこには、父王の震える筆跡で署名がなされていた。病床で朦朧とする父を言いくるめ、外堀から埋めていたのだ。ハルモニーは眩暈を覚えたが、交渉の席では一瞬たりとも隙を見せなかった。
「優先貿易権……。いいだろう、ガストロ殿。ただし、期間は十年、かつ我が国の小麦の市場価格が一定を下回った場合のみとする」
ハルモニーは冷徹に条件を詰め、仮契約への署名を終えた。
ガストロが去り、交渉の重圧から解放されたハルモニーが王宮の廊下を歩いていると、奥から一人の貴婦人が駆け寄ってきた。 美しい毛並みに、優雅な衣装を纏った王妃であった。
「ハルモニー! 無事だったのね、ああ、なんて誇らしいのかしら」
王妃はハルモニーの両手を握り、慈愛に満ちた瞳で彼を見つめた。ハルモニーの険しかった表情が、一瞬で「爽やかで完璧な笑顔」に切り替わった。
「ただいま戻りました、母上。見てください、クローから民の麦を守り抜きましたよ」
ハルモニーは嬉々として母に応じる。 後ろを歩いていた老騎士や侍従たちは、ハルモニーが足を止めた瞬間、示し合わせたかのように一斉に視線を床へと落とし、石像のように沈黙した。王家親子の私的な空間を邪魔せぬよう、気配を消して立ち尽くしている。王妃がハルモニーの頬を撫でる間も、彼らはただ主の背中を、無機質な無反応で見守っていた。
「さあ、お行きなさい。あなたの調和を、皆が待っているわ」
「ええ、分かっています。……爺、麦の配分を急ごう。僕の『慈悲の笑顔』と共に、国民に届けるんだ」
ハルモニーは母に軽く一礼して、再び歩き出した。 完璧な王太子の笑顔。側近たちの奇妙なまでの静寂。それらが織りなす「調和」の中で、ハルモニーは再び王宮の深淵へと消えていった。
もしよろしければ、ブックマークよろしくお願いいたします。




