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プロローグ 漆黒の略奪者

本作は、作者が構築した詳細なプロットおよび世界観設定に基づき、AI(Gemini)を用いて文章の初稿を作成しています。また、物語の骨子には作者が持つ地政学、国際政治学、マクロ経済学の基礎理論を反映させており、単なる空想に留まらない国家間の動態や経済的背景を構築しています。


AIによって生成された文章は、これらの理論的整合性を含め、作者自身が精査・改稿し、表現の微調整を全面的に行っております。


挿絵の挿入&修正を、不定期でやり直しております。


【閲覧にあたっての免責事項】 本作はフィクションであり、実在の人物、団体、国家、および歴史上の出来事とは一切関係ありません。 作中で描かれる政治・経済的描写や思想、国際情勢は、あくまで物語の演出上の設定であり、特定の思想を推奨、あるいは批判する意図はございません。


挿絵(By みてみん)


鋼の進軍、黄金の収穫

 極北の風は、鋭利な刃物そのものだった。


 パウリア本土の北東。地図上で「クロー」のごとく突き出した人差し指の地。そこを撫でる風は、生物の体温のみならず、魂の熱さえも奪い去ろうとする。全土を覆うツンドラの荒野に、生命の温もりを許す場所など、どこにもなかった。


 その凍てつく大地から、西へと向かう巨大な軍列があった。  先頭を征くのは、漆黒のプレートアーマーに身を包んだ精鋭騎士団である。クロー王国において「黒」は、死を厭わぬ武功を挙げた者のみに許される誇り高き色であった。


挿絵(By みてみん)


 その背後には、対照的に「白」の胸当てを纏った膨大な数の雑兵たちが続く。彼らは一兵卒に至るまで、腰に鋭い「鎌」を下げることが義務付けられていた。それは敵を斬るためではなく、略奪した土地の富を根こそぎ刈り取るための、生存の道具である。



挿絵(By みてみん)


 先頭で一歩ごとに大地震おおないのような振動を響かせるのは、国王ソストラダーニエだ。彼もまた、傷一つない黒鉄の鎧に身を包み、自らの背丈ほどもある『巨大な戦鎚ウォーハンマー』を背負っていた。


「……陛下。まもなく国境の境界線を越えます」


 傍らに控える側近、ヴラドが報告した。彼もまた黒鎧を纏う精鋭の一人であり、その鞍の横には重厚な戦鎚が吊るされている。


「ニャーの守備隊、急ごしらえの馬防柵を築いているようです。落とし穴の偽装も見受けられますな」


「……ヴラドよ。兵たちの様子はどうだ」


「限界でございます。昨夜だけで十四名が眠ったまま凍死。配給の干し肉は底を突き、もはや雪を食らって腹を膨らませております。……今、この瞬間に『黄金』を奪わねば、わが国は春を待たずして消滅いたしましょう」


 ヴラドの声は冷徹だった。だが、その奥には抜き差しならない飢餓感が潜んでいる。  クロー王国が直面しているのは、単なる食糧不足ではない。彼らの領土は農耕に適さぬ寒冷地であり、生存のためには南方の豊かな生産物を奪うか、あるいは従属的な交易を強いられるという構造的な窮地に立たされていた。


 彼らが西へ向かうのは、支配欲ゆえではない。自給自足が不可能な環境において、隣国の富を「奪う」ことは、彼らにとって生存のための唯一の合理的選択肢、いわば「西方への生存権」の行使であった。


「左様か」


 ソストラダーニエは、西の空を睨みつけた。  誇りだけでは民を救えない。地続きの隣国を喰らわねば、自分たちが死ぬ。その生存本能だけが、王の持つ戦鎚を重く、鋭くさせていた。


「全軍に伝えろ。我らがこれから行うのは、殲滅ではない。……クローの命を繋ぐための『大収穫祭』だ。鎌の準備を怠るな。麦の一粒たりとも、無駄に焼くことは許さん。奪ったものはすべて、腹を空かせた同胞たちで均等に分かち合う。それがクローの流儀だ」


 王の宣言と共に、騎兵団の速度が上がった。  眼前に迫るのは、ニャー王国が必死に築いた防衛線だ。泥土の中に打ち込まれた無数の杭と、巧妙に隠された落とし穴が、クローの重騎兵を阻もうと待ち構えている。


「ふん……。この程度の杭、わがガスポートストヴォの足元を止める役にも立たん。ましてや、このクロー歴代王の鎚を防げると思うなよ」


 ソストラダーニエは、背中の戦鎚を引き抜いた。  王が振るう戦鎚ハンマーは既存の秩序を粉砕する破壊の象徴であり、兵が振るう鎌は富を回収する労働の象徴であった。この「ハンマーと鎌」の連動こそが、クローという国家の、力による平等主義を体現していた。


「砕けッ!」


挿絵(By みてみん)


 巨馬が咆哮を上げ、爆発的な加速で柵へと突っ込む。  ニャー王国の防衛側が想定していたのは、過去の小規模な小競り合いを前提とした「守りのコスト」であった。しかし、ソストラダーニエが率いるのは、全人口の労働力を軍事に極振りした戦時体制の結晶である。彼らは想定を遥かに上回る「暴力の集中投入」によって、防衛側の計算を無意味なものにした。


 踏み抜かれる落とし穴。ソストラダーニエが振り下ろした戦鎚の一撃が、並んだ馬防柵を衝撃波とともに数本まとめて粉々に打ち砕いた。


 国境を越えた瞬間、景色は一変した。  クローの厳しい冬とは無縁の、柔らかく、豊かな大気が鎧の隙間から滑り込んでくる。掌平原に広がる黄金の麦の海が、王の瞳を射抜いた。


 ソストラダーニエは、戦鎚を肩に担ぎ、一際大きな麦畑の前に立った。  逃げ惑うニャー王国の民たちが、農具を放り出して王都の方角へと駆け出していく。そこには、奪うべき命ではなく、奪うべき「糧」が無限に広がっていた。


「……始めよ。抵抗する者はすべて砕け。だが、穀倉は傷つけるな。それは今日から、我らクローの血肉となるものだ」


 王の宣言と共に、白い鎧を纏った雑兵たちが雪崩れ込む。彼らは慣れた手つきで腰の鎌を引き抜くと、戦場を農地へと変えた。  これは、史上最も原始的で、かつ最も確実な「資産の収奪」であった。ニャー王国が積み上げてきた国としての蓄えが、市場を通じることなく、力ずくでクローの消費へと書き換えられていく。


 悲鳴と、鋼がぶつかり合う音。  焼け落ちる農家の煙が、秋の高く青い空へと吸い込まれていく。


「陛下、ウィスカーの商人が発行した銀貨の詰まった袋を見つけました! いかがいたしますか!」


 兵の一人が、血に汚れた袋を掲げた。だがソストラダーニエは、それを一瞥しただけで興味を失ったように鼻で笑った。


「そんな金属の塊、今は何の役にも立たん。それより麦だ。麦を運べ。腹を膨らませぬ銀貨など、ただの重石に過ぎん」


 王は奪ったばかりのパンをひと掴みし、そのまま口へと運んだ。  かつてアダム・スミスが「見えざる手」と呼んだ市場の調和は、ここでは機能しない。話し合いで解決するためのコストを惜しみ、暴力による解決を選んだ王の前では、商人の理屈も通貨の価値も無力であった。


 誰もが自分たちの利益だけを追い求めた結果、社会全体が破滅に向かってしまう――。この日の略奪の報せが、まだ見ぬ他国の商館に届く頃には、パウリア島の経済秩序は、戦鎚によって打ち砕かれた馬防柵のように、修復不能なまでに崩壊しているだろう。


 パウリア島を覆う、長く過酷な「三十五年を超える戦争」。  その幕が、今ここに、鉄の音と共に切って落とされた。

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