銀のツバメ
厚い雲を裂くように、銀のツバメが舞い上がる。
ひとすじの軌跡を描きながら、未来は光の先にあると、迷いなき翼で飛び去った。
泣きたいわけじゃない、けれど空が裂ける音がした。
追いかける目ではなく、胸にその軌跡を焼きつけた。
雲の流れが速すぎて、自分の弱さが見えてくる。
駅のベンチに落ちた羽根を、拾わなかったあの夏の午後。
ツバメが何かを伝えた気がして、でも意味まではわからなかった。
こんなにも誰かの名を呼びたくなる夕暮れがあるなんて知らなかった。
ツバメよ、どうしてそんなに迷いなく行けるんだ。
帰れなくてもかまわないのか。
あのとき置いていかれたのは、夢じゃなくて声だった気がする。
名もなき空の旅人よ。
どうか、どうか、無事であれ。
私はここで立ちすくんだまま、声にならない言葉をもて余している。
飛べるのなら飛びたかった。
ただ光の先へ。
君のように——