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ラジオから流れているのか、車内には綺麗なメロディーの洋楽が溶け込んでいた。
大人びたその空間に身を置いているだけで、胸の奥に緊張がじわじわと膨れ上がっていく。
私は膝の上で、無意識に手をぎゅっと握りしめていた。
窓の外を流れていく景色に、目を奪われる。
街灯が流星のように連なり、夜の街を淡く彩っていた。
「ちょっと寄り道していいか。ガキ共を拾ってくから」
街の様子に意識を預けていた私に、飛野さんが声をかけてくる。
「うひぇっ!?あ、は、はい!どうぞ」
力が入りすぎていたせいで、突然話しかけられ、思わず言葉を噛んでしまった。
案の定、飛野さんには笑われる始末。
……恥ずかしいなあ。
それにしても、飛野さんの運転が上手くて驚いた。
スピードを抑えつつ、無駄のないハンドルさばきで車は滑るように進んでいく。
座席からほとんど振動が伝わってこないのは、飛野さんの腕と、この高級車のおかげなんだろう。
そして、密かに気になっていた飛野さんの方向音痴問題。
気がついたら北海道まで行ってました~、なんてことにならないよね……?
心の中で心配していると、またもや飛野さんは先回りして答えてくれた。
「なんでか知んねえけど、車に乗ると道が頭に入ってくんだよなぁ。だからそんな不安そうな顔しなくていいぞ。迷わねえから」
「そう、ですか」
笑顔を崩さない飛野さん。
車だと方向音痴が治るなんて、不思議。
でも──どこに向かってるんだろう。
ガキ共って誰のこと?
そうこう考えているうちに目的地に着いたのか、車はゆっくりと停車した。
……ここ、南遥高校じゃん。
疑問に思う間もなく、飛野さんは誰かに連絡を取り始めた。
校門前には、何十台ものギラついたバイクがずらりと並んでいる。
車種はさっぱりわからないけれど、とにかくごつくて派手な単車ばかりだった。
エンジンが唸る重低音の迫力に、鳥肌が立つ。
車内にいても、空気がびりびりと震えているのがわかる。
ライトに照らされ浮かび上がるのは、それぞれのバイクの持ち主であろう不良の男たち。
その威圧感たるや凄まじく、
暴走族!?今どき!?
なんて率直な感想を浮かべてしまう。
けれど彼らは、特攻服を身につけてはいなかった。
南高の制服姿が大半で、あとはいかつい私服の男たち。
一般人なら、近づこうとも思わない。
いや――近づくことを許さない、危険な空気を放つ集団。
その中心に立つ二人の男に、目を奪われた。
あれは、
あの銀髪と、金髪は。
白鷹次郎と、黒羽大駕だ。
昼間、学校で見るあののんきな姿とはまるで違う。
獰猛な獣のような何十人もの男達を従え、百獣の王の如く、二人は堂々とそこに立っていた。
血の気の多い野獣たちを束ねる者としての、“顔”だった。
「ったく、また大人数集めたもんだな」
いつの間にか電話を終えた飛野さんが、低く呟いた。
“ガキ共”って……あの二人のこと?
何が起ころうとしてるの?
いわゆる、“集会”とかいうやつ!?
心臓が落ち着く暇もないまま、銀髪と金髪がこちらへ歩いてくる。
エロキングなんかじゃない。
ナマケモノでもない。
私に見せる“表の顔”を、見事なまでにぶち壊してくれた二人。
周囲の男たちは、タイガとジローさんに深々と頭を下げている。
ゾクゾクする。
キングとしての、あまりにも手慣れた振る舞いに。
“裏の顔”のまま、二人は当然のように車のドアを開け、私と飛野さんの乗る車内へと乗り込んできた。




