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激しく後悔した。
なぜこの緑を、もっと早くに始末しておかなかったのか。
どんな手使ってでも、この世から抹殺しておくべきだった。
「デート……って、誰と誰が?」
半分、意識が飛んでいた。
朦朧とするなか、ぼそぼそと呟く私に、ハイジの目の光は衰えることはない。
「お前だよ。相手はお前が選べよ」
「は?」
この男はつくづく思いつきで動く。
もう少しわかりやすく説明してくれればいいのに。
それよりもミスコンの方がよっぽど重要なんだけど。
一刻も早く、出場なんて取り消さないといけないのに。
ハイジが何を考えて、こんな余計なことをしたのかは知らない。
でも、それを決めるのは私でしょ。
どうせ、私をおちょくるため。
私で遊ぶため。暇つぶしのため。
それだけだ。
ハイジの考えなんて、その程度なんだよ。
全部お見通しだっつーの、緑ボーズ!!
「デ、デートなんかしない!!」
「却下。お前に拒否権はねえんだよ。誰とデートしたいか選べ。お前の選択肢はそれだけだ」
「バカ?ねぇ、あんたバカなの!?なんで私がデートしなきゃいけないの!?」
「バカバカ連呼すんな、バカは承知だ。お前よ、男とデートしたことねえだろ」
「……うるさいな。あんたには関係ないじゃん」
な、何なのよ。
ないわよ、ないけど……なんでそんなこと、コイツに言われなくちゃなんないの。
デートしたことないからって、それが何だっていうのよ!
一方的に話を進めるハイジの身勝手さに、言葉が詰まってしまう。
助けを求めるように、他の三人に視線を流してみる。
ジローさ……ダメだわ、寝てる。お船を漕いでらっしゃる。
タイガは言うまでもなく、困る私をニヤつきながら眺めてるだけ。助けてなんかくれない。
残るは、あと一人。
そうだ、飛野さんだったら……!
ハイジを説得してくれる!コイツらより大人だし!
ハイジよりも権力持ってるはず!まだ飛野さんは常識人だしね!!
と思って期待の眼差しを向けてみたけれど、彼は必死に地図と睨めっこしていた。
ダメだこりゃ、と思った。
「もも、イイ女になるにはまず男を知らねえといけねーんだよ。お前は男っ気なさすぎんだ。つーことで、選べ」
選べって……。
イイ女?
私、なんでイイ女にならなきゃいけないの?
いや、なれるんならなりたいけどね?
「お、イイ女じゃ~ん」とか言われてみたいけどね!?
でもそんな自分がまったく想像できない。
そもそもイイ女って、どんな女?
美人?溢れ出る色気?気遣いできる女?
……何一つ備わってないな、私。
ジローさんも、“イイ女”が好きなのかな。
いや、そんなわけないか。
女嫌いなんだからイイ女でも通用しないよね。
そう……だよね?
ジローさん……どうやったら、女の子を好きになってくれるのかな。
私、どうしたら好きになってもらえるの……?
でもパッとしない女よりは、“イイ女”の方がいいよね?
……じゃあハイジの言うことに、従ったほうがいいのかな。
気づかないうちに、私はハイジに洗脳されかけていた。
デートの相手って、やっぱり──。




