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「ねえハイジ。あんたって分身の術が使えるのね」



赤ハイジにちらっと視線を投げて緑ハイジに戻せば、彼らは二人で目を見合わせ、緑ハイジがげらげら笑い出した。



「お、おい……俺はいつの間にかNINJAにされてんぞ!!」


「ちょい待ち、分身て!俺の方がイケメンやろーが!!」



赤ハイジが顔をしかめてずいっと迫ってくるから、私も合わせて一歩二歩、下がった。



「あの、誰……?」



ちーん。


そんな鐘の音が響いた……ような気がした。固まる赤ハイジ。



「ぎゃははは!なんて顔してんだケイジ!!ショックか、ショックなんだろ!!仕方がねえ、諦めろ。こいつは俺のことも知らなかったんだからよ」



口を開けて硬直している赤ハイジの背中を、バシバシ叩いて嬉しそうな緑ハイジ。


この人達のやり取りに、私はついていけなかった。



「ご、ごめんなさい……どうも私、そこらへんの事情にうといみたいで……」



緑ハイジも学校中が知っているような有名人だった。だからきっと、同じ顔をしたこの赤ハイジも名は知れているんだろう。


でもやっぱり私だけ知らなかったし、見たことがなかった。


なんだかその悲愴感漂う死んだ魚の目をした彼が気の毒に思えて、私は一応赤ハイジに謝っておいた。



「ええよ。ま~たまには、そーいうんも新鮮やしなぁ。これから覚えといてくれたらええわ。俺の名前、慧次やし。風切慧次(かざきりけいじ)



息を吹き返した赤ハイジ……もといケイジくんは、壁に寄っかかってタバコを制服のポケットから取り出すと、一本火を点けて吸い出した。昨日のハイジみたいだと、思った。


ニッと笑って挑戦的な眼差しで私を縛りつける彼は、確かに自分でも言ってたとおりイケメンだった。


でもそれより何より校内で堂々とタバコを吸うケイジくんに、私はヒヤヒヤして仕方がなかった。



「ケイジくん……って。風切?風切って、ハイジと同じ名字じゃん!!」



驚きのあまり目を丸くする私に言い放った、ケイジくんの一言。





「そらそうやろ、俺とハイジ──双子やもん」





………あ、そっか。



っていうか、もっと早く気づけよ自分……!!



考えればすぐにわかることだった。



「あは、は……」



脱力し遠くを眺めると、自然と乾いた笑いが零れる。


「気色悪ィなお前」というハイジの若干引いてる声が聞こえた気がしたけど、もう怒る気力もなかった。



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