23
何とか避ける方法を……。
「あ、あ、あの……今日ハイジとかケイジくんとか、タイガや飛野さんまで遅刻せずに来ててビックリしたんですけど!!な、何かあったんですか!?」
迫ってくるジローさんから少しでも時間を稼ぎたくて、私はキョドりながら必死で質問を投げた。
実際なんでだろうって気になってたことだし!
今聞いたっていいよね!!?
「知らねえ。そーいう気分だったんじゃねえの」
どうでもいいだろと言いたげな、返答。
こんなのじゃ、足止めにもなんない。
徐々に膨れ上がっていく、ジローさんの“早く舐めろ”オーラ。
わかってる、約束なんだし。
それでジローさん動いてくれたんだし。
でも、でもね。
私、男の子と手だってまともに繋いだことないんだよ?
まあハイジの件はなかったこととして。
それなのに、いきなり唇を舐めろだなんて。
しかも相手は目が眩んじゃうような、超絶美形。
ハードル高すぎです。
前はジローさんへの気持ちがよくわからなかったから、できないと思った。
だけど今は……好きだから。
好きだからこそ、できない。
緊張の度合いが違いすぎる。
ほんと、心臓発作起こしちゃうんじゃないかってくらい、私の心臓くんはフル活動しちゃってて息苦しいくらいだった。
「今さら、やめるなんてのはナシだからな」
うっ……!
なかなか行動に移そうとしない私に勘付いたのか、ジローさんが釘を刺してくる。
そういうとこは、察しがいいんだこの人。
他の場面でもそうだったらいいのに。
「や、やめませんよ!でももう少し待ってくださ──」
「ダメだ、待てねえ。そう言ってお前、先延ばしにする気だろ」
どこまでも勘が冴えている王様は、私の考えなんてお見通しのようで。
余裕なんてなくて、きっと顔もリンゴみたいに赤い私を、
泣き出しそうなくらい追い詰められてる私を、
知っているくせに、わかっているくせに──
いとも容易く、捕えてしまう。
惚れ惚れするほどに美しく艶のある笑みで、私の自由を奪ってしまう。
「俺がどれだけ我慢してると思ってんだよ。待たせんなよ、もう」
そんな俺様でワガママで、自分中心なセリフだって、彼の特権。
王様である彼だけが許される権限。
抗えない流れに、私は従うだけ。
一拍おいて、ジローさんはそっと私の頬を撫でた。
穏やかな瞳が、好きだと思った。
銀髪も、少し長めの前髪から覗く切れ長の目も、高い鼻筋も、形の良い唇も──
ジローさんを形づくる全てを、好きだと思った。
そうやって私を虜にしてしまったジローさんは、焦ることなく、私の様子をうかがいながら顔を寄せてくる。
私は静かに目を閉じた。
胸の高鳴りが、静かな世界に優しく響く。
そして──
唇に触れたのは、しっとりとした柔らかくて温かい感触。
重ねられたのは、好きになってしまった人の唇だった。




