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小春は、どうなんだろう。


ジローさんに好かれちゃっても、小春にはその気があるんだろうか。


恐がっちゃうかな……やっぱり。


私は小春も好きだし、ジローさんも好き。



小春もジローさんを好きになったら、応援するしかないかな。



辛いな……。


恋って、辛いんだね。



大切な友達でさえ、“嫉妬”なんて醜い感情の色で見てしまうんだから。




「お前……なに泣きそうな顔してんの」




心臓が破裂しそうなほど暴れていて、彼の答えを待つだけで生きた心地がしなかったのに。


予想外の一言に、ハッとなった。



ジローさんは、少し驚いたように私を見ていて。



その視線でやっと気づく。



私……そんな顔してたの?


泣きそうな顔、してた?




「嫌だったのか。俺がお前のトモダチの話すんの」




何も言えない。


私は黙ったまま、ゆっくり頷いた。



ジローさん、どんな顔してる?


呆れてるかな。

図々しいヤツだって、うんざりしてるかな……。




「可愛いって思ってる。好きか嫌いかで言えば、好きだろうな」




続けられる言葉が小さく刺さって、胸をちくりと痛ませた。


その先を聞くのが怖くて、でも聞きたくて。


迷っているうちに、ジローさんが続けた。




「けどそれは、お前がいることが前提だ」




意味がよくわからなくて、そっと顔を上げる。



怒ってもないし、呆れてもない。


そこにあったのは、柔らかい瞳だった。




「お前と一緒にいるから、可愛いんだ」




まだ理解するのに苦しむジローさんのセリフ。




「サイコーじゃねえか、犬とウサギが一緒にいるなんてよ。たまんねえ組み合わせだ」




……はい?



一瞬自分が日本人なのか、疑ってしまった。


日本語がわからなくなったんだと思った。



だってジローさんの目が……なんかうっとりしてる。




「犬もウサギと仲良くなれるんだな。でもよ、タマ。俺にはお前が一番だ。一番可愛いのは、お前だ」




待て待て待て。



ちょーっと落ち着こうか。




一回深呼吸をして、恐る恐るジローさんに聞いてみた。



「あの、ウサギって……小春が?」


「おう。まさかオトモダチがウサギとはな」




開いた口が塞がらなかった。



発狂しそうになった。




どうやら、彼の目には小春がウサギに映っていたらしく。


私が犬に見えるように、小春はウサギに見えているらしい。



そして小型犬とウサギが仲良くしている図は、ジローさんにとってはサイコーに可愛い組み合わせらしく、彼のツボを刺激しまくりだと。



全ての謎が解けた。


女嫌いが治ったわけじゃなかった。



彼にとっては小春はキューティーハニーではなく、キューティーバニーだったのだ。



とんだ勘違いだった。



“人間”として、彼女を好きだったわけじゃなかったんだ。



私、なにを悩んでたんだろう。



……本気で疲れた。



ジローさんは一枚どころか、百枚くらい上手だった。


やはりマジシャンなだけあって、彼は私なんかじゃ手に負えない。



こうして、『ジローさん小春に一目惚れ疑惑』はあっけなく終結したのだった。




「悪かったな、お前がヤキモチ妬くなんて思わなかった」




そう言いながらも悪びれるどころか、嬉しそうなジローさん。



人の気持ちも知らないで。




「もう言わねえよ。お前に嫌な思いさせたくねえし、お前に嫌われんのはキツい。俺にはお前だけでいい」




だけど、私の頭を撫でながらジローさんがそんなことを優しい声で言ってくれるから。


まぁいっかって、思ってしまう。


だって、安心しちゃったんだもん。


根本的なことが解決したわけじゃないけど、すごくほっとしている自分がいた。



私もとことん単純だ。


でも、それで終わりじゃない。


顎に指を添えられて、顔を上げさせられる。


視線が絡み合う。



ああ、この人なんて色っぽいんだろう……。


なんて見惚れてる場合じゃない!




「俺を舐めろよ」




問題は、ここからだ。





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