表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/123

21



自分の立場をわきまえなきゃ。月とスッポンもいいとこじゃん。


第一、まず女として見てもらうとこから始めなきゃいけないなんて。


ふっ……笑うしかないじゃんよ。



「タマ、こっち見ろよ」



鬱々としていた私の頬に指が触れて、軽く向きを変えられる。


ジローさんは、本当に何気なくこんなことをする。


そんなさらりと触れられるだけで、こんなにもいっぱいいっぱいな私に、気づかないでしょう?




「なぁ」




どうしたら、私……




「舐めて」




あなたにとって、“女”になれるの?




静かな昼下がりの屋上。


二人きりの空気がやけに濃い。



目の前にいる美男子は、じぃっと私の顔を凝視している。


少し開いた唇も、彼の色気を滲み出させていた。


妖艶な眼差しで。

低くて甘さを含んだ声で、「舐めて」なんて言われたら

──


クラクラしちゃうじゃん。

全身の骨が砕けて複雑骨折になっちゃうじゃん。


そしたらふにゃふにゃになっちゃう。軟体動物に。


朝美のお仲間になるのだけは、ごめんだ。




「ど、どこを?」




前回と同じ質問をしてしまう。



だってね、気になるじゃん!?


「舐めて」に対して「どこ舐めるの」って疑問を抱くのは、当然でしょ!?




「ココに決まってんだろ」




前は教えてくれなかったのに。


ジローさんは、すっと距離を詰めてきて──

長くて綺麗な指で、私の唇をなぞった。



気を失いかけた。



ジローさんの溢れんばかりのフェロモンを直に浴びて、マジで鼻血が出そうなくらいに体が熱い。軽く目眩すらした。



無理。


女を瞬殺できるセクシーフェロモンがムンムンな今のジローさんには、太刀打ちできない。


恋愛レベル1未満な私には、クリボーだって倒せやしないのに。


ラスボスレベルなジローさんはクッパなんだから、到底無理だ。



クッパ……クッパってどうやって倒すんだっけ。



そうだ。


私はすっくと立ち上がった。



そして、



「びよーん」



と、座っているジローさんの体を飛び越えてみた。



ふははは!

どうだ、これでラスボスジローは灼熱のマグマに落下するはず……




「座ってくんねえ?」




なかった。



ジョークをかわしたジローさんの瞳の奥に、まるで切れ味のいい刃みたいな鋭さが潜んでいる気がして。


私はやっちまったと激しく後悔し、大人しく腰を下ろした。



結局さっきと同様の体勢で向き合う、私とジローさん。


どう足掻いたって、逃げられないんだ。



ジローさんは黙っているけれど、目が「早く舐めろ」と訴えかけてきていた。



「私……昨日、すごく嬉しかったんです」



急に全然関係ない話を切り出してみても、ジローさんは怪訝そうな顔をしたものの、遮らなかった。



「私なんかのお願いを聞いてくれたこと。ジローさんが助けてくれなかったら、どんな目にあってたかわからなかった。ありがとうございます、ジローさん。とっても素敵でした」



ジローさんに笑いかけても、彼は表情を変えなかった。


なんでそんなこと言われるんだろう、というような眼差し。



「あのね、その時……ジローさん、小春を見たでしょ?可愛いって言ってましたよね、気に入っちゃいました?小春のこと……」



何を言い出すんだろう、この口は。


こんなこと、彼に聞いてどうするの?




「小春のこと……好き、ですか?」




止まらない。



駆けだした想いが、歯止めをきかなくさせる。



ジローさんが小春にいっちゃっても、大丈夫だって、仕方ないって……受け入れようって覚悟したのに。



それでも、理屈じゃなかった。



もうジローさんに惹かれていってるから。



私は……ジローさんが、好きだから。




彼に恋をしてしまったから。




だから──

好きな人が別の子を好きでいるのに、『舐める』ことなんてできない。



もし、ジローさんが「好きだ」って言ったら?




全部捨てよう。



今のこの想いも。

彼への恋心も。


全部……捨て去ってしまおう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ