18
教室に入ると、入り口の真正面。
赤髪が机に突っ伏して爆睡していた。
一瞬ビクッとなったものの、ここがケイジくんの席らしい。
廊下側の端の列。一番後ろの席。
目立たないようで、実は最も目立つ場所。
そうか、いつも空席だと思ってたら、風切慧次の席だったんだ。
って、もう寝ちゃってるのね。
あれだけの騒ぎを起こしといて安眠しているたこやきプリンスに、私は感心していた。
この人と同じクラスだということに、なんで今まで気がつかなかったんだろう。
この真っ赤っかの髪を素通りするはずないのに……。
もしかしたら、私が知らないうちに彼は教室に入ってきて、そのうちまた出て行ってるのかもしれない。
だってあの位置なら、振り返らないと視界に入らないし。
それにしても入学してから半年近く経つっていうのに、我ながらこの無頓着さに呆れる。
どうも私は興味のわかないものは頭に残らないらしく、ハイジもケイジくんも学校中で騒がれているのに記憶になかった。
今じゃ嫌というほど、知るハメになってしまったけれど。
「ももちゃんおはよ~!!さっき、廊下すごいことになってたね」
たたっと私に近づいてくるのは、小春だった。
昨日とは打って変わっていつもの愛らしい笑顔に、私も自然と頬を緩めていた。
「うん……珍しくケイジくん、教室にいるしね。何なんだろ。それより小春、昨日大丈夫だった?かっちゃんにちゃんと送ってもらった?」
「ふふっ、大丈夫だよ。克也くん今日も朝来てくれたんだよ。優しいし、いい人だね」
なんと!
かっちゃんは今朝も小春を家から学校まで送り届けたらしい。びっくらこいた。
オシャレヤンキーなかっちゃんも白鷹ファミリー。
彼も何か秘密を握っているに違いない。
ハイジが私のところへ来たのと、関係あるかも。
けど、小春はニコニコしながらかっちゃんのことを話している。
私よりも男の子に慣れていない……というより、怖がっちゃうのに。
かっちゃんめ、さすがキュートなヤンキーだけあるな。
キューティーハニーならぬ、キューティーヤンキーか。
いや、小春はまさにキューティーハニーだし、キューティーヤンキーなかっちゃんとお似合いじゃないか。
いいなぁ、キューティーな人達は。キュンキュンしまくりだもんね。みんなに愛されちゃう存在だもんね。
私なんてイモも同然だしね。
土に埋もれながら今か今かと掘り出されるのを待っているのに、やっと出られたと思ったらたき火で焼かれて食べられて、挙げ句の果てには『プ~』とかってオナラになっちゃうのが末路だもんね。
「それにしても、ほんと昨日はビックリしちゃったよももちゃん!!あの白鷹先輩と一緒に来た時なんて、私感動しちゃったもん!!夢みたいだったよ!!ももちゃん、ありがとう!!ももちゃんのおかげで私助かったんだよ」
小春は昨日のジローさんと魁帝事件に、大興奮だ。
小春がこんなテンションで話すなんて滅多にないし、それだけ彼女にとって昨日は衝撃だったんだろう。
私も小春の立場だったら、ヤンキーキング白鷹次郎が登場したら芸能人並みの扱いで浮かれちゃうに決まってる。
あのジローさんを知らなかったら、の話だけどね。
「ハイジくんと仲良しってことは、白鷹先輩や黒羽先輩とも仲良しなんだよね!?だから来てくれたんだよね?ももちゃんも有名人になっちゃうの?寂しいなぁ……」
と、すっかり私が白鷹ファミリーの仲間入りしちゃったと思い込んでいる小春。
実際、私なんかいいように遊ばれてるだけなのに……。




