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これで……全員だ。
ヤンキーレンジャー五人が、揃った。
赤・緑・金・銀・黒のレンジャー達が。
こんなふうに全員が揃うところを見られるなんて、初めてなんじゃないだろうか。
誰も何も言わないし、普通に振る舞ってはいるけれど
夜行性っぽい彼らが遅刻もせずに朝から登校するのには、必ず理由があるはずだ。
変だ。おかしい。
あの大教室じゃなく、みんなと同じ“普通の場所”に、別世界に住む彼らがいることが。
間違ってはいないし、むしろ真面目に出てきて偉いじゃんって思うけど。
どうも違和感が拭えない。
ちゃんと授業を受けたり、クラスに溶け込んでいる彼らを想像できない。
私がそういう姿を見たことがないから。
「か、風切……!!ウソだろ、なんでここに……」
床に座り込んだままケイジくんを見上げる田川の友達も、同じ“なぜ”を抱えていたのだろう。
その目が、そう語っていた。
さっきまでの威勢はどこへ消えたんだろう。
弱い相手には噛みつくくせに、強い相手には尻尾を巻く。
その態度に、自然と嫌気が差した。
「俺の名前は?」
「……え?」
「風切は二人おるやろ。俺の名前、言ってみろや」
白鷹ファミリーのなかでも一年生ながら、特に抜きん出た存在のハイジとケイジくん。
白鷹 次郎
黒羽 大駕
飛野 冬也
風切 灰次
風切 慧次
私が初めてジローさん達と会い、ヤンキー軍団の中に放り込まれて過ごしてきたなかで、見えてきた事実がある。
この五人は、別格だということ。
大教室であの黒いソファーに座れる権限を持つのは、この五人だけ。
とは言っても、飛野さんとあそこで会ったことないから言い切れないけど。
他のおにーさん達の飛野さんへの接し方を見ていればきっと、飛野さんもその権限を持っているはず。
誰もが興味をそそられながら、彼らに深入りしようとはしない。
彼らが作り上げた世界を奥まで覗こうとは、誰も思わない。
私だって、そうだった。
関わり合いになんて、なりたくなかった。
でも──知らなかったから。
彼らがどんな人達で、どんなヤバイことをしているのか……私は何も知らなかった。
上辺だけなのかもしれないけど、ハイジはバカだし、ジローさんは宇宙人だし、タイガはエロ大使だし、飛野さんは迷子王だけど気前いいあんちゃんだし。
それでいいんじゃないかなって。
彼らがそうやって絡んでくるから、私は私なりの対応をするだけで。
恐がる要素なんて、どこにもない。
みんな知っているんだろうか。
彼らのそんな一面を。
でもケイジくんとは私、あんまり絡んだことないな。
一番出現率が低いというか、彼がいる時に私がいないだけなのか、とにかく遭遇しないのだ。
緑のハイジを見慣れているだけに、赤髪のケイジくんを見ると、ハイジが髪を真っ赤にしたみたいでちょっと目を引く。
この先関わることはなかっただろうし、関わることもしなかったであろうケイジくんに絡まれてしまった田川の友達の顔は、みるみる青ざめていく。
ケイジくんは、彼の正面にがばっと股を開いてしゃがみ込む。つまりはヤンキー座りで。
ほんのり口角を持ち上げ小さな笑みを残してはいるものの、その目つきは穏やかではない。
「名前……?」
「……お前何回言わせんねん。イライラさせんなや」
声は押し殺したように静かだけれど、ケイジくんの雰囲気が冗談を許さないものだった。
もうすでにイライラしているのが、ひしひしと伝わってくる。
どうしたんだろう……。
ケイジくんの、こんな顔を私は見たことがない。




