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百メートルほど先に、校門が見えてきた。


生徒の姿も増え始め、登校する人の流れが一気に賑やかになる。

その群れの中で、ひときわ頭ひとつ抜けた黒髪の人が目に入った。



あれはもしや……。



「おはようございます、飛野さん」



長身のその人に近づき、どうしようか迷った末に挨拶した。

昨日助けてもらったし、彼は他の四人ほど有名じゃないのか、周囲が騒ぐ様子もない。



「お、おお。誰かと思えば……昨日ジローと一緒にいたコか。俺のこと知ってんの?」



声をかけられたのが意外だったのか、飛野さんはちょっと驚いたような顔をした。



「はい、ハイジに聞いたんで」


「そうか、あの緑ボーズになぁ。変なこと言ってねえだろうな、アイツ」



ハイジのことを『緑ボーズ』という飛野さんは、笑顔を見せてくれた。


この人はそんなにとっつきにくい雰囲気じゃないし、優しそうだと思った。


外見が他のいかにもヤンキーなおにーさん達に比べ、落ち着いてるからっていうのもあるかもしれない。


けど──昨日、魁帝の男達に見せたあの一面を思い出すと、やっぱりただ者じゃない気もする。



「今日はちゃんと学校に来れたんですね」


「……なかなか言ってくれるな」



迷子にならずに学校へたどり着けた飛野さんに笑いかけると、彼はまいったなと苦笑を漏らした。



「それよりお前、どっかで見たことあるような気がするんだよな……。昨日から考えてんだけど、思い出せねェんだ」


「え、私は飛野さんに会うのは昨日が初めてですけど……」


「そうだよなぁ……でも初めての気がしねえんだよ」



釈然としない様子で、じっと私の顔を見つめてくる飛野さん。


人違いじゃないのかな。



もし本当に会ったことがあるなら、どこかで偶然すれ違ってたのかもしれない。


同じ街に住んでるんだし、あり得なくはない。


だとしても、私が飛野さんを覚えているっていうのならわかる。


男前だし、何よりバスケット選手並みの長身だから。



それなのに飛野さんが何の特徴もない地味キングな私を覚えてるなんて、やっぱり不自然だ。




「お前、なんて名前?」


「花鳥ももです」




そういえばまだ名乗ってなかった。

私が答えた瞬間──飛野さんの笑顔がすっと消えた。




「花、鳥……?花鳥ってお前まさか……」




真顔になった飛野さんの眼差しが、僅かに鋭くなった。


何だろう……何か思い出したのかな。


少し表情が強張っている。



飛野さんの口から何が語られるのかと、ドキドキしていると。




「ああっ!タマちゃんじゃねーの!!」




太い声が割り込んできた。


何事かと思えば、白鷹ファミリーのおにーさん達が次々と私達の横に並んでくる。



す、すごい迫力……!!



私達の二メートル圏内には、誰ひとり近づこうとしなかった。




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