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ジローさんの顔を見た瞬間、今朝の夢を思い出した。
私を捨てて、小春を選んだジローさん。
もし現実でも、そうなっちゃったら……。
想像しただけで、きゅっと胸が締めつけられる。
私、もしかしてジローさんのこと……?
……万が一そんなことになっても、小春をヤンキーズの毒牙にかけるわけにはいかないし。
そもそも小春自身、あの空気にはついていけないと思う。
「どうした」
ぽんっと私の頭に手を置いて、ジローさんは穏やかに目元を緩め、優しく撫でてくれた。
その温もりに、胸の奥がじんわり満たされていく。
この手を、失いたくない。
ペットなのに……犬としてしか、見られていないのに。
「お前、オトモダチは?」
オトモダチ……小春のことだよね。
気になるんだ、ジローさん。
「小春は家が逆方向なんです。だから、朝は別々に登校してるんです」
笑顔で答えたものの、うまく笑えていたかわからない。
複雑な気分だった。
小春を気にかけるジローさんを、見ていたくなかった。
「そうか」
ジローさんの声は、ほんの少しだけ寂しそうだった。
「ジローちゃん……頼むから、外ではシャキッとしてくれよ」
女の子と交渉を終えたハイジが、疲れきった顔でジローさんに忠告する。
銀髪の隣に立つ緑髪。
二人ともでかいし、圧迫感がすごい。
「おいハイジ……てめえ、昨日どこほっつき歩いてた!ケイジも帰ってこなかったしよ。てめえら揃って晩メシ当番サボりやがって」
ハイジを見るなり、ジローさんはぐいっと胸ぐらを掴みあげた。
目つきも鋭くなっている。
ば、晩メシ当番……?
「ま、待った!飛野さん戻ってきたって聞いたからさ!俺らが作るより、飛野さんの方が断然うめえだろ!?だからよ……」
「今日作れよ」
「ええー!?ダメだ、俺今日は予定が……」
「嫌なら出てけよ」
「……わかったよ、作りゃあいいんだろ」
押し負けたハイジはふてくされて、じとっとジローさんを睨んでいた。
──な、なに今の?
この人たち……共同生活でもしてるの!?
え、本気で意味不明だわ!?
ハイジとケイジくんは兄弟だし一緒に住んでるんだろうけど、ジローさんは違うよね!?
でも「晩メシ当番」とか「嫌なら出てけ」とか、それってどーいうこと!!?
何がどうなってんの!?




