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そ、想像できない!!ジローさんが女の子と一緒にいるとこなんて……!!
いや、超美形だけどさ!
過去に彼女いたって全然おかしくないし、むしろいない方がおかしいけどさ!!
でもジローさんだよ!?
やだ、どうしよう……軽くパニックだ。
なんか……なんか言い表せないけど、複雑な気分だ……!!
「ねぇ、それいつの話!?っていうか何がどうなって──」
「あ、ジローちゃんだ」
「えっ?」
ハイジがさらりと言った一言のせいで私は取り乱してしまい、ヤツを問いつめようと必死だった。
なのに。
私達の数メートル先、住宅街の入り組んだ横道から突然ぬっと現れたジローさん。
ドキリと、一度大きく心臓が跳ねた。
やる気なさそうに前を歩く彼は、私とハイジに気づいていない。噂をすれば何とやら。
どうしてジローさんまでもが、こんな朝っぱらから登校しているのか。
そんな疑問はどうでもよかった。
それよりも、さっきのハイジの話の方が気になって気になって仕方がなかった。
なんでそこまで気になるか、自分でもわからない。
けど、胸の奥がモヤモヤする。
ジローさんに彼女がいたという、事実が。
ただでさえ渦巻くこの感情が、足を重くさせるっていうのに。
「白鷹先輩、あの……!」
ジローさんを追いかけてきたのか、彼が出てきた道からもう一人誰かが姿を見せた。
その誰かはジローさんにたたっと駆け寄ると、「受け取ってください」と彼に何かを差し出した。
遠くて、それが何なのかはっきりと確認できない。
手紙のようだった。
違う学校の、制服の女の子。
さらさらヘアーの可愛らしい女の子。
私なんかとは比べものにならない、女子力高めの子。
もうパニックとか通り越しちゃって、「お、なんだなんだ告白か!?」とワクワクしているハイジの横で私はただ茫然と、視線の先のジローさんと女の子の光景を眺めるしかなかった。
寝癖なのか無造作にセットしているのか区別のつかない髪型でも、ジローさんはカッコいい。
悔しいくらいにカッコいいんだ。
銀色が似合うのは、ジローさんだけ。
ジローさんの色だから。
綺麗な彼に、似合う色。
「これ、私のイムスタのIDなんです。えっと、白鷹先輩、私ずっと先輩に憧れてて……もしよかったら、DMください!」
女の子がジローさんに渡そうとしていたのは、あの子のSNSのアカウントが記されたメモだった。
勇気を振り絞ってジローさんに話し掛けたであろう女の子は、耳まで真っ赤になって瞳をウルウルさせて、健気さがこっちにも伝わってくる。
可愛さも倍くらいになって、私が男だったら即受け取っちゃうだろうなと思った。
そして……他校の、それもあんな可愛い子にまで憧れられちゃうジローさんが、遠いと感じた。
当たり前なのにね。
白鷹次郎なんだもんね。
うちの学校の女子もみんな、虜にしちゃうような人なんだから。
それでいて、不良の王様なんだから。
私といてくれることって、奇跡に近いと思う。
たまたまタマちゃんに似ていたおかげで、私は努力することもなくジローさんの隣にいる。
それって……もしかしたら、スゴいことなんじゃないだろうか。
ジローさんの隣っていうポジションは、女の子みんなが狙っている場所。
私なんかが、易々と居座っちゃいけないのに。
だけど私は……頭を撫でてくれるジローさんの、温かい手が好きだ。
私だけに見せてくれる顔が、好きだった。
女の子として見てもらえること。
他の子なら当然のことなのに、私には高望みなこと。
ジローさんの傍にいられるなら、ペットでもいいって子は山ほどいるだろう。
こんなこと言ったら、なんて贅沢なんだとブーイングくらうと思う。
でも私には、ジローさんに赤面されるほうが、女の子として認めてもらえるほうが、
たまらなく、羨ましかった。
──どうして?
私、どうしてジローさんにこんな想いを持ってしまうの?




