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もう一回ハイジに聞いてみても、はぐらかされるだけだった。
どうやらいくら私が聞き質そうとも、本音をぽろりする気はないらしい。
話せないような、良くないことが起きているの?
何も言ってくれないから、不安だけが募る。
裏ではヤンキー界を揺るがすような、大事件になってるんじゃないかって。
だけど……そうじゃないのかな。
もしや、ほんとに神様がお告げをくれたの!?すんごい軽いノリの神様ね!
「もも、お前は期待以上だ」
「……ほえ?」
一人であれこれ推測していると、急にハイジが話しかけてきた。
突拍子もないそのセリフに、私は首を傾げるしかない。
「昨日の一件で、やっぱ俺の目は間違ってなかったと確信した」
昨日の一件……。
私はすぐにハイジが指しているのは、ジローさんが魁帝のヤツらにわざわざ出向いたことだと感づいた。
「あのジローちゃんだぜ?ペットに舐めてもらえるからとはいえ他人の言うこと聞いて、しかも魁帝とやり合うなんてよ……ありえねえことだ。今までのジローちゃんなら──考えられねえよ」
ハイジの眼差しがぐっと深みを増して、フザけた色なんて一つもなかった。本気でコイツの心を動かす出来事だったんだと、わからされた。
みんなハイジと同じようなことを言っていたけど、私にはそれがどれだけすごいことかなんて実際ちっとも理解できていないのに。
だって私は、ジローさんがどんな人なのか知らない。本当の彼を知らないんだから。
ペットだからだよ、“私”だからじゃない。
“私”の力じゃない。
ジローさんの大好きな、“タマちゃん”のおかげ。
「ハイジ……あんたは私がジローさんの女嫌いを治せるって言ったけど……今のままじゃ無理だよ。だってジローさん、私のこと“女”として見てないもん。あくまで“タマ”なんだもん。このままじゃ一生かかったって、女嫌い治んないよ」
ずっと胸の奥で引っかかっていたことを、ハイジに零していた。声も、沈みがちになる。
「……お前、けっこうマジで考えてんだなジローちゃんのこと」
「へっ!?そ、そーいう意味じゃなくて、何とかしないと自由の身になれないから考えてるだけであって……!!」
「わかったわかった。ももちゃん、君の気持ちは痛いくらいわかった」
キョドる私に、ニヤッとハイジは不吉な笑みを浮かべる。
うう……コイツのこの笑みは、何となく嫌な予感をさせる!
「ちゃーんと考えてっからよ、俺もそこんとこはな。もも、あの時言ったろ?俺がお前の人生を変えてやるって」
「ええ、しっかり覚えてますとも。あれが悪夢の始まりだったんですからね!おかげですっかり変わっちゃいましたよ!!」
嫌味を込めてハイジにぶつけると、ヤツはまだ何か企んでそうな眼差しを突きつけてきた。
「そうじゃねえよ、アレはそーいう意味じゃねえ。まだこれからだ」
「……どーいうこと?」
「プロジェクトがあるんだよ、お前の人生を360度変えてやるためにな」
いや、うん。一周しちゃってるよハイジくん。
元のへぼへぼ人生に戻ってきちゃってるよ。
「俺はお前に賭けてるんだ」
誤りにも気づくことなく、自信たっぷりにハイジはそう口にした。
ああもう……何なんだろうこの人。
どうしていつも勝手に、事を進めちゃうんだろう。
私絶対また騒動に巻き込まれる気がする……本気でやめてほしい。平穏な日々を返して欲しい。
「ま、そう落ち込むなって。ジローちゃんも一応昔は彼女いたんだ。アブノーマルじゃねえから」
どっと疲れて肩を落とす私に、ハイジの明るい声が沁みる。
そりゃアブノーマルは困るけど……彼女ねぇ……。
……ん?
彼女?
ジローさんに!?あのジローさんに彼女!?
手つないで顔真っ赤になっちゃうのに!?抱擁なんてしようもんなら、鼻血噴いちゃうのに!?
いったいどんな付き合い方してたの!?




