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「あ、あの……助けてくれて、ありがとうございました」




ジローさんと、腑に落ちないというような顔つきの飛野さんに、小春はおずおずしながらぺこりと頭を下げた。



私も一緒に、二人に頭を下げる。



飛野さんがタイミングよく現れてくれて、よかった。

小春を人質に取られて、身動き取れない状態だったから。



もし飛野さんが来てくれなかったら、どうなってたんだろう……ジローさんのことだから、強引に切り抜けてたかもしれない。



でもムチャクチャしそうだな、ジローさん……。




「そんな大層なことはしてねえよ、アイツらが気にくわなかっただけだ」




そう言って、飛野さんは笑った。



何となく、この人はいい人そうだなと思った。あくまでも、印象でしかないけれど。




「それより早くここを離れたほうがいいな。うるさいのに見つかったら、謹慎でもくらわされそうだからなぁ」




ジローさんに促すと、飛野さんは学校の方へ歩き出した。ジローさんもその後に続く。



だけど飛野さんは何か思い出したように立ち止まるとくるりと振り返って、道路にへたばっている魁帝のヤツらに近寄って彼らの前にしゃがみ込んだ。




「お前ら……ルールを知らねえってことは相当魁帝でもナメられてるみたいだな。帰ったら桐生に潰されるぞ。ジローはかなり手加減してるけどな、ヤツは容赦ねえだろうなぁ。覚悟しとけよ」




脅しとも取れるような飛野さんのセリフに、魁帝の男達の顔が青ざめていく。


飛野さんの声色も低くなり、男達に追い討ちをかける。




でも……何よりも、“キリュウ”の名前にヤツらは反応したようだった。



タイガも言っていた、桐生。



いったい誰のことなんだろう。



どうも話だけ聞いていると危なそうな人なのかなとは思うんだけれど、私には何のことだかさっぱりわからなかった。




「ジローと……いや、俺達とやり合うってのは、そーいうことだ。覚えとけ」




刺すような鋭い視線で、飛野さんは魁帝の男に念を押し、スッと立ち上がった。



そして最後に一言、ヤツらに告げた。




「ま、桐生に会ったらよろしく言っといてくれ。歯全部折られる前にな」




物騒なことを平気で言ってのけながら、ニコリと極上のスマイルを浮かべる飛野さんに、一段と男達の顔から血の気が引いていった。




前言撤回。




いい人かもしんないけど、それ以上に飛野さんからは危険な香りがした。




「黒羽とクソガキ二人は?」


「トラは学校ん中にいる。ハイジとケイジは、どーせバイトか女だろ」




魁帝のヤツらをその場に残し、学校へ戻りながら飛野さんがジローさんに聞くと、ジローさんはめんどくさそうに答えた。



「変わんねえな」と、飛野さんはくしゃりと笑う。



それに対して「一ヶ月そこらで、変わるわけねえだろ」とジローさんが返す。



この二人の間にある関係って、どんなものなんだろう。



ジローさんは飛野さんに敬語を使うこともないし、飛野さんもジローさんに遠慮なんてしていないみたいだ。



飛野さんは三年生だけど、だからといってジローさんより偉いっていうわけじゃないのかな。



同等の立場なんだろうか。




飛野さんも、みんなにキャーキャー言われるような有名人なのかな。



でもこの人はハイジやケイジくん、タイガ達とは違って落ち着きを感じるのは……上級生ならではの貫禄?




「それとな、ジロー」




さっきまで朗らかだった飛野さんの顔から、笑みが消えた。


声も、真剣味を帯びている。




「わかってんだろうけど、軽率に動くな」




不意に足を止めた飛野さん。



少し前を行っていたジローさんも、歩くのをやめた。




けれど、ジローさんは振り向かない。背中を向けたままだった。





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