11
でも……迷ってる暇なんか、ないじゃん。
小春が怖い思いしてるのに、私がこれぐらい我慢しなくちゃどうするのよ。
どうにでもなる。別に死ぬわけじゃない。
ちょ、ちょっと恥をかけばいいだけなんだから。
腹をくくれ!女気を見せるんだ!!
くっと手を丸め、口を横に結ぶと、私はジローさんの手の平に狙いを定めた。
そして丸めた手を……断腸の思いで、置いたのだった。
腹を抱えて爆笑するタイガの笑い声に、死にたかった。
「よくできた」
だけど私の視線の先で、ジローさんが優しく笑うから。柔らかな声で、ナデナデしてくれたから。
涙腺が緩みそうになった。
でも、泣いてなんかいられない。
「ジローさん、お願──」
「行くか」
もう一回頼み込もうとした時、ジローさんは立ち上がって一言……呟いた。
「どーせやるんなら、ハデにやってこいよ」
ジローさんにそう言ったタイガの声は、楽しそうだった。
「え、ジローさん……それじゃあ……」
「忘れんなよ、さっき俺に言ったこと」
突然の急展開に、呆気にとられている私を見下ろすジローさんの目は、やる気に満ちていた。
……さっきのって……もしや、『舐める』宣言のこと、かしら……。っていうかソレしかないよね?
覚悟を決めて言ったんだ。
やっぱやめるなんて……そんな卑怯なことしない。
私はジローさんに、頷いてみせた。
ジローさんはほんの僅かにだけど、嬉しそうに目を細めた後、のそっと教室の出口に歩き出した。
ダルそうに出ていくジローさんの背中から、目が離せなかった。
えっと……つまり、これは……小春を助けてくれるってこと?
ジローさん、私のお願い……聞いてくれるの?
魁帝のヤツらを退治してくれるの?
動いてくれた……あの、白鷹先輩が。
キングが、重い腰を上げてくれた!!タマ効果って、すごい……!!
「し、白鷹さんが……他人のために……」
「しかも相手は魁帝だぜ!?」
「信じらんねえ……俺、起きてるよな!?つねってみてくれ、叩いてくれ!!」
「ももちゃん、すげえじゃねーかオイ!!」
ジローさんが出て行った後、白鷹ファミリーのおにーさん達は顔を見合わせて口々に率直な感想を述べていた。
なかにはハイジもビックリの、ドM発言も飛び出ていた。
彼らの表情も全員が目を見開いて茫然としていて、よっぽどボスの行動に驚いているようだった。
直ぐ後には、わっと教室中が沸いて、おにーさん達の興味は私に移った。
な、なんかよくわからないけど、絶賛されている!!おにーさん達の瞳が少年みたいにキラキラ輝いている!!
不良界のことなんて私には理解できないけど、どうやら『白鷹次郎が自ら赴く』こと、それも『魁帝が相手』だということは、彼らにとっては大事件らしい。
おにーさん達の反応が、それを物語っていた。
「やってくれんじゃねーのタマちゃん。初めてじゃねえか、アイツが女の言うこと聞いたのなんてよ。あ、女じゃなかった。犬だった。ペット想いの飼い主持って幸せだなぁお前」
ニヤニヤするタイガのわざとらしいセリフも、どうせ私への仕返しのつもりなんだろう。




