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でも……迷ってる暇なんか、ないじゃん。



小春が怖い思いしてるのに、私がこれぐらい我慢しなくちゃどうするのよ。



どうにでもなる。別に死ぬわけじゃない。

ちょ、ちょっと恥をかけばいいだけなんだから。



腹をくくれ!女気を見せるんだ!!





くっと手を丸め、口を横に結ぶと、私はジローさんの手の平に狙いを定めた。




そして丸めた手を……断腸の思いで、置いたのだった。




腹を抱えて爆笑するタイガの笑い声に、死にたかった。






「よくできた」






だけど私の視線の先で、ジローさんが優しく笑うから。柔らかな声で、ナデナデしてくれたから。



涙腺が緩みそうになった。



でも、泣いてなんかいられない。





「ジローさん、お願──」

「行くか」





もう一回頼み込もうとした時、ジローさんは立ち上がって一言……呟いた。





「どーせやるんなら、ハデにやってこいよ」





ジローさんにそう言ったタイガの声は、楽しそうだった。





「え、ジローさん……それじゃあ……」


「忘れんなよ、さっき俺に言ったこと」





突然の急展開に、呆気にとられている私を見下ろすジローさんの目は、やる気に満ちていた。



……さっきのって……もしや、『舐める』宣言のこと、かしら……。っていうかソレしかないよね?



覚悟を決めて言ったんだ。

やっぱやめるなんて……そんな卑怯なことしない。




私はジローさんに、頷いてみせた。




ジローさんはほんの僅かにだけど、嬉しそうに目を細めた後、のそっと教室の出口に歩き出した。




ダルそうに出ていくジローさんの背中から、目が離せなかった。




えっと……つまり、これは……小春を助けてくれるってこと?



ジローさん、私のお願い……聞いてくれるの?

魁帝のヤツらを退治してくれるの?




動いてくれた……あの、白鷹先輩が。




キングが、重い腰を上げてくれた!!タマ効果って、すごい……!!






「し、白鷹さんが……他人のために……」

「しかも相手は魁帝だぜ!?」

「信じらんねえ……俺、起きてるよな!?つねってみてくれ、叩いてくれ!!」

「ももちゃん、すげえじゃねーかオイ!!」






ジローさんが出て行った後、白鷹ファミリーのおにーさん達は顔を見合わせて口々に率直な感想を述べていた。


なかにはハイジもビックリの、ドM発言も飛び出ていた。



彼らの表情も全員が目を見開いて茫然としていて、よっぽどボスの行動に驚いているようだった。



直ぐ後には、わっと教室中が沸いて、おにーさん達の興味は私に移った。




な、なんかよくわからないけど、絶賛されている!!おにーさん達の瞳が少年みたいにキラキラ輝いている!!




不良界のことなんて私には理解できないけど、どうやら『白鷹次郎が自ら赴く』こと、それも『魁帝が相手』だということは、彼らにとっては大事件らしい。



おにーさん達の反応が、それを物語っていた。





「やってくれんじゃねーのタマちゃん。初めてじゃねえか、アイツが女の言うこと聞いたのなんてよ。あ、女じゃなかった。犬だった。ペット想いの飼い主持って幸せだなぁお前」





ニヤニヤするタイガのわざとらしいセリフも、どうせ私への仕返しのつもりなんだろう。





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