10
大魔王の眼差しに金縛りにかけられ、ごくりと唾を飲み込んだ。
「お前……」
息をするのも苦しくなってきた。
その口から一体どんな罰を命じられるのか、生きた心地がしなかった。
私……何を言い渡されるんだろう……。
パターン1
『海に沈められるか山に埋められるか、どっちか選べ』
どうせなら川に流してやってください……。どんぶらこ~っと……。
そしたらおじーさんおばーさんが拾ってくれて、ぱかっと割ってくれますから……。
「まあ、おじーさん!『桃』の中から『もも』が!」
な、なーんちゃって~……。
……ダメだ、笑えない……。
その前にジローさんに、桃ごと叩き割られるのがオチ……。
パターン2
『目玉焼きはしょう油か、ソースか。どっちだこのヤロウ』
むしろ塩派です。
私は脳内で二通りの予想を終え、力尽きた。
大魔王ジローは、恐ろしく手強かった。
「お前、」
げっそりとやつれきった私に、ついにジローさんは判決を下すようだ。
もうどんなパターンでも、どんとこいだ。
煮るなり炒めるなり、好きにしてください……。
「お前は俺の犬なのかそれともトラの犬なのか、どっちなんだよ」
「……へ?」
ジローさんの目は、とっても真剣だった。
トンデモ質問をぶつけてきた彼の声が、何となく拗ねているように思えるのは……気のせい?
私はちょっと時間をもらって、考え込んでしまった。
犬……誰の犬……。
私は犬……なんで、犬になったんだろう……。
タイガの犬なわけがない。
それなら、残るは一人だけ。
「ジローさん、です……」
なんだかすんなりと、答えてしまっていた。
当たり前のように聞いてくるジローさんに、あっさり犬を肯定してしまった。
「だったらトラになついてんじゃねえよ、じゃれてんじゃねえよ」
低い声で恐い顔しても、言ってることは……ジローさんだった。
なんてことない、私に見せてくれるジローさんの“顔”だった。
「お前より俺の方がせくし~でサイコーなご主人様なんだから、当然だよな~」
拗ねちゃったジローさんを意地悪くタイガが煽るもんだから、その表情は変わらなくとも不機嫌オーラが濃くなったのが私には手に取るようにわかった。
ジローさんの目が……目が、怖すぎる……!!
「ち、違いますよジローさん!!私、タイガになんかなついてないしじゃれてないし、犬でもないし、えっちだからイヤだし、変態だしキンパツだし……」
誤解を解こうとテンパる私の横で、「お前夜道に気をつけろよ」とすごく意味深なタイガの発言が聞こえたけど、それより何より今はジローさんをなだめるのが先だ。
「タマ、おて」
半泣きの私に容赦なく、ジローさんは平然と命令してきた。
ええええ!!い、今ここでですかジローさん!!みんないるのに!?
あの時はまだ二人っきりだったからできたのに、ここは人が多すぎるし……むちゃくちゃ恥ずかしいんですけど……!!
しかもみんなの視線が、私に集中しちゃってるんですけど!!




