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ジローさんが動いちゃいけない理由が、あるんだろうか。
彼らにだけしかわからないような、何かが。
けど今考えたって仕方ない。わかりもしないことを考えたところで、謎は解けない。
それより早く、早く小春を……
「相手が悪い。魁帝ってのがな」
まるで私の心を読んだみたいに、トラさんがタバコを灰皿で揉み消しながら静かに話し出した。
「下っ端だからだとか、そんなんどーだっていいんだよ。問題は相手が魁帝のヤロウだってことだ。ルールを破りやがった」
「……どういうこと?」
「タマちゃん、お前にゃ言ったところでどーしようもねえよ。諦めてセンセーに泣きついてこい」
「ダメだよ!そんなことしたら、小春がヒドイことされる!!ジローさんじゃないと、ダメなの!!」
「そうか。そりゃ残念だったな」
「っ、!!」
何よ……普段はえっちなことしか言わないくせに、肝心な時は冷たくて……何なのよ、なんで不良やってんのよ!!
不良は喧嘩が十八番じゃないの!?
「バカ!!トラさんなんか大っ嫌い!!変態バカ!!トラさんなんか、始めっからアテにしてないんだから!!」
「おい待てコラ。てめえ言ってくれんじゃねえか。バージンのくせに口は達者だな」
「か、関係ないじゃん!!」
「それとトラっていうな。ステキで無敵なタイガ様と呼べ」
「やだ!!エロキング!!変態タイガ!!」
「上等だお前、犯すぞコラ」
「いひゃひゃひゃ!!」
思いっきりほっぺたを両側からむにーっと変態キングに引っ張られたから、仕返しにわき腹をこちょこちょしてやった。
すると、思いっきり後ろに飛びのいた変態キング。
ふん、いいじゃない!“タイガ”って呼んでやるわよ!ステキでも無敵でもないけどね!
「バカヤロウ、やめろ!!」と焦った様子のタイガを見て、私は閃いた。
このエロ大王の弱点を、発見したかもしれない。
ああ、こんなことしてる場合じゃない!!変態と遊んでる場合なんかじゃない!!
「ジローさん、小春は……私の大切な友達なんです」
タイガはほっといて、ジローさんにもう一度声をかけた。
「本当に優しい子で……私を何回も助けてくれたんです。すごくいい子なんです!!お願い、どうしても助けてほしいんです!!ジローさん!!」
頭を下げて、全力で彼に頼んだ。他にいい方法が思いつかない。
頼み込むしか、ない。
「だから?」
やっと口を開いてくれたと思ったら、残酷な一言。
顔を上げて、ようやく彼と目が合った。
次の言葉がノドまで出掛かっていたのに、それを引っ込めてしまうほどに、ジローさんの目は冷め切っていた。
ダメだ。この人は、何がなんでも動いてくれない。
私の祈りは……通じない。
これがジローさんの本当の姿、なんだ。
「……あんなぁ、言ったろ?ジローを動かしてえなら、それなりの“理由”がいる。何の“得”もねえのに、コイツがほいほい言うこと聞くわけねえだろうよ」
絶望に打ちひしがれる私に、ニィっと笑ってみせるタイガ。
“ヒントはやったぞ。後は自分で考えろ”と、私に伝えるように。
得……ジローさんにとっての、得。
………………
…………
……わかった!!そういうことなんだ。
ジローさんに助けてもらうには、ソレしかないんだよね。
なんてことない、小春のためなら。
それくらい、どうってことない……はず。
私は覚悟を決めて、ジローさんに決意の眼差しを送りつけた。




