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「助けて、くれないんですか!?ジローさん、ジローさんしかいないんです、助けて!!」
「……お前よォ、何か勘違いしてねえ?」
ジローさんにまくし立てると、横からトラさんが割り込んできた。
トラさんからは笑みが消えていて、見たことのない真面目な眼差しが私を見据えている。
「俺らが正義の味方だとでも思ってんのか?ヒーローだと思うか?」
「……」
「何の得もねえのに、わざわざ面倒ごとに首つっこむバカがどこにいる」
「だって!私の友達が……!!」
「知らねえよ」
ぴしゃりと切り捨てられた、私の願い。
トラさんはタバコの煙を燻らせながら、続ける。
「なーんでお前のダチ助けねーといけねえの?関係ねえしな~」
どうして……どうして、そんなヒドイこと言うの?
困ってるのに……頼る人が他にいないのに……!!
薄情者──そう言おうとしたけど、寸前でそれをぐっと飲み込んだ。
薄情……そんなこと、彼らに言えるんだろうか。
私に、そんなこと言う権利がある?
トラさんの言うことには、一理あるのかもしれない。
助けてくれなんて、虫が良すぎるのかな。
“関係ない”……そう言われてしまえば、それまでだ。
ジローさんは、正義のヒーローじゃない。
ヤンキーだ。
魁帝の男達と同じ、ヤンキーだった。
みんなに恐れられて、“ヤバい”って噂されて。
私は、勝手に“良い人”だと……信じていた。
「……ジローさんも、そう思ってるんですか?関係ないしめんどくさいから……どうでもいいって、思ってるんですか?」
救いを求めて、ジローさんに消え入りそうな声で尋ねた。
ジローさんは立ち尽くす私に、やっぱり視線を上げてくれなかった。
私の問いかけにも……答えては、くれなかった。
助けて、くれない。ジローさんは動いてくれない。
今、私の目の前にいるジローさんは、いつものジローさんじゃない。
おさんぽしている時のジローさんじゃ、ないんだ。
足を組んでポケットに手を突っこみ、ソファーに体を沈める彼は無言のまま。
「ほ、ほんとは強くないの?だから行ってくれないの?魁帝が怖いの?ジローさん、そうなんでしょ!?」
後で考えれば、よくもまあ白鷹次郎にこんなことを言ったな、と思う。
でも、必死だった。とにかく必死だった。
小春を助けられるなら、何だってよかった。
それでも……返事は返ってこない。
私の声だけが、虚しく教室に響くだけ。
「……俺たちがいこうか。白鷹さん、それならいいだろ?」
そんな時。白鷹ファミリーのおにーさん達の一人が見兼ねたのか、ぽつりとジローさんに言葉をかけた。
この状況を打破できるのなら、誰にだって縋りたかった。
だからその申し出は私にとって、心底有り難いものだった。
だけど……アイツらは“白鷹次郎”が目的なんだ。
ジローさんじゃなきゃ、小春に何するかわからない。
おにーさんの好意は嬉しかったけど、断ろうと口を開きかけた。
「オメーら勝手なことすんじゃねえよ」
私のセリフを代弁するかのように、トラさんは低い声と共に刺すような視線をおにーさんに送った。
立ち上がっていたおにーさんはそれを受けて、止むを得ず再び腰を下ろす。
ピリピリした空気が教室内を取り巻いて、緊張の糸が張り詰めていく。
何か……行っちゃいけない理由があるの?
せっかくおにーさん達が行くって言ってくれたのなら、どうしてわざわざ止めたの?
自分達は関係ないから、めんどくさいから嫌なんでしょう?




