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なんで?なんで魁帝の生徒が、うちの学校に来てんの?
お願いって何?どう見てもヤンキーなんかと関わり合いのなさそうな私達に、こんな目つきの悪い人達が何をお願いするっていうの?
魁帝の男に絡まれている私達を横目に、北遥の生徒達は目を合わさないように足早に帰っていく。
誰一人、助けてくれる人なんていなかった。
当たり前だ。
私だって逆の立場だったら、口を挟もうなんて絶対に思わない。
変に正義感を振りかざして、痛い目みるなんて誰だって避けたいに決まってる。
とにかく、相手にしないに限る。
「いこ、小春」
縮こまっている小春の手を握ると、私は男達の横を通り抜けようとした。
だけど──
「きゃあ!ももちゃん!!」
「おい、騒ぐんじゃねえよ」
魁帝の男の一人が、小春の腕を掴むとそのまま後ろに捻り上げた。
「っ、いた、い……!!」
「小春!!ちょっと……何すんのよ、やめてよ!!」
痛みに顔を歪める、小春。
彼女に近寄ろうとすると、違う男が身を乗り出してきて行く手を阻んだ。
「だからさぁ、お願い聞いてっつってんの」
「……お願いって、なに」
「呼んできてくんねえ?白鷹次郎を。いんだろ?」
そうか、ヤンキーの目的はヤンキーっていうわけね。
有名人のジローさんは、うちの学校だけじゃない。魁帝にまで名が知れ渡っているんだ。
変人なのに。女の子に弱いのに。すぐ鼻血出しちゃうのに。むっつりえっちなのに。犬好きなのに。無口なのに。無表情なのに。
それでも、彼はヤンキーの頭なんだ。
危なそうな男達に、狙われるような人なんだ。
“ヤバい”人、なんだ。
私が、何も知らないだけ。ジローさんがいつも何してるのか、これまで何をしてきたのか。
何一つ、知らない。
私が見ている彼は、ペットのタマちゃん代わりの私と戯れる彼だけ。
“ヤバい”ジローさんの一面は、私といない時のジローさんなのかもしれない。
「……そんな人と、私達何の関係もないのに呼んでこれるわけないじゃない。自分達で呼びにいけば?」
落ち着いてよ、私の心臓。
声、揺れてないかな。ちゃんと話せてるかな。
そう……ジローさんと、平凡な私と小春が知り合いなわけないとわからせないと、解放してくれない。
小春はもう涙を目に溜めて、恐怖に飲まれている。
腕をがっちり拘束されている彼女を早く助け出したいのに、非力な私じゃどうにもできない。
「なに生意気な口きいてんのお前。呼んでこいっつってんだよ」
冷たい目に見下ろされ、背筋がゾクッとした。
危険だと、本能が警鐘を鳴らしてる。
何をするにも躊躇いのなさそうな、冷酷な眼差し。
「オトモダチがどうなってもいいのかよ。こんな細い腕、ちょ~っと力加えたら簡単に折れそうだよなぁ」
「、うっ……!」
小春の腕を掴んでいた男が、さらにギリッと力を入れるのを見て……もう逆らおうなんて、思わなかった。
「やめて!小春には何もしないで!呼んでくる、白鷹先輩を呼んでくるから……!!」
涙目になる。焦りだけが、胸を占めていた。
こいつらは、私が従わなかったら本当に小春に危害を加えるかもしれない。
取るべき行動は、一つ。選択肢なんて、ない。
「センコーにチクったりすんじゃねえぞ。白鷹以外のヤツ呼んできたら、コイツの腕へし折るからな」
小春を見やった後、魁帝の男はそう念を押してきた。
私は血の気の引いた顔でこくこくと頷いて、了承の意思を示した。
「小春、すぐ戻ってくるからね」
震えだした小春に一言告げると、彼女は一度弱々しく首を縦に振った。
そして私は踵を返すと、無我夢中で校舎に走り出した。
ジローさんがまだ、『あそこ』にいることを願って。




