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ジローさんの顔面はおでこと鼻からの出血で、えらいことになっていた。
さすがにこれは可哀相なのでハンカチで拭いてあげると、またえっちなことをされそうになった。縛られてるくせに。
でもグレマ〇オとグレルイー〇が助けてくれたので、ジローさんのえっち攻撃は防ぐことができた。
相も変わらずジローさんは「なんで舐めねえんだ」とか「俺の許可なしで勝手に首輪取るんじゃねえよ」だとか、悪態をついていた。
そんな横暴ジローさんをトラさんは軽く蹴ってコンクリートに転がすと、足でぐりぐりと彼を踏みつけていた。
トラさんの表情は、鬼の首を取ったように嬉々としていた。
よっぽどジローさんに何か恨みでもあるんだろうか。仲が良いのか悪いのか、この二人はよくわからない。
お縄状態のジローさんは足げにされて、ちょっぴり悔しそうにトラさんを睨んでいる。
「ジロー、お前はまだまだ甘ェんだよ。耳なんかじゃタマちゃんは満足しねえぞ。女がどこ舐められたら一番喜ぶのか、この俺が教えてやるよ」
トラさんはえっちオーラをたっぷり含んだ口調でジローさんにそう言うと、ジローさんの耳に唇を寄せてぼそっと一言囁いた。
それが何だったのかは聞き取れなかった。でも聞かないほうがいいのは、本能で察していた。
そして、本日二回目の鼻血噴水。
大爆笑の変態トラさん。
本当の鬼は、この人だと思った。
いつかジローさんが出血多量で死んじゃうんじゃないかと、私はハラハラしていた。
「縄ほどけよ」
「ダメだって。ジローちゃん、またももに手出すだろ」
「桃には興味ねえ」
両方の鼻の穴にティッシュを詰めてもらったジローさんは、むすっとして座っていた。
ハイジに脅しかけるも、聞き入れてもらえないようだ。
縄を解いたが最後、暴君ジローは赤・緑・金をあの世へ送ってしまうだろう。
それを彼らも、感じ取っているのかもしれない。
「ジローちゃん……タマちゃんのイヤがることばっかしてたら、ほんまに嫌われんで。なぁタマちゃん」
ケイジくんは少し大げさな口ぶりでジローさんに言って聞かせると、私に目配せをしてきた。
とりあえずこくんと、頷いておいた。
「なんでだよ、なんでタマが俺を嫌うんだ!そんなわけねえだろ」
するとジローさんは動揺しだして、それを見たケイジくんがにやりと口元に笑みを作る。
「なんでってなぁ……そんなん考えたらわかるやん。ウザイことされたら、誰だってそいつ鬱陶しい思うやろ?ええかジローちゃん。今ここにいんのは二代目タマちゃんなんやで?先代タマちゃんと違って、なついてくれるわけちゃうねんから。ヘタしたら一生嫌われるかもな~」
すっかり私が犬だという前提で話を進めていく、ケイジくん。
だけど彼にはジローさんの考え方を改めさせる狙いがあるようだったから、私は黙っていることにした。
「い、一生……!ケイジ、お前いい加減なこと言ってんじゃねえよ!」
どんどん殺気立っていくジローさんが珍しくて……なんだかちょっぴり、ワクワクするのはなぜ?
無感情・無関心・無感動三拍子揃ったジローさんのこんな姿って、滅多に見られるもんじゃないんじゃないだろうか。
「んじゃ本人に聞いてみよか?タマちゃん、さっきのジローちゃんどう思った?」
余裕とさえ思わせるにこやかな表情で意見を求めてくる、ケイジくん。
私は目をぱちくりさせながらも、ジローさんに文句を言ってやろうと決めた。




