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「ハイジのバカ!うそつき!!何がジローさんは女嫌いよ、エロエロ大王じゃんか!!バカぁ!!」
不意にぽろぽろと涙が流れてきて、私はハイジの胸をぽかぽか叩いてた。
安心した途端に緊張の糸が切れて、涙腺も緩んでしまったらしい。
「だからごめんって言ってんだろ、泣くなよ。ももちゃんらしくねーじゃん、急に女らしくなっちゃって。俺もまさかジローちゃんが、ここまで攻めてくとは思ってなかったからよ」
楽しそうに笑いながら、ハイジは頭をナデナデしてきた。それから首輪を外してくれた。
何なのよ、私を何だと思ってんのよ!!ひどすぎる!!
どうせハイジにとっちゃジローさんが進歩したって喜んでんのかもしれないけど、私はほんとにほんとに怖かったんだから!!!
「おいおいピーチ姫よォ……マ〇オを差し置いてルイー〇とイチャついてんじゃねえぞ~」
だ、誰と誰がイチャついてるって!?
ピーチ姫って……ピーチ……桃……もも……わ、私!?
マリ〇とル〇ージ……。
ハイジとケイジくんの髪の色を見て、納得してしまった。
彼らはクリスマスだけではなかった。
国民的人気兄弟にまで、なれてしまうのだ。
ただしグレちゃってるけど。
そして、こんなくだらないことを言ってくるのは──
「お前、バージンのわりにはなかなかイイ声出してたじゃねーか。ジローのテクに鳴かされたか」
ひょっこり下から顔を出した、変態キンパツ。
私を見ると、やらしい目でやらしいセリフを吐いて、上に登ってきた。
もともと狭い所なのに、大きな男が四人になって、さらに狭苦しくなってしまった。
「全部覗いてたの!?」
「様子見にきてやったんだよ。感謝しろよ、もうちょっとでこんなとこで脱バージンするとこだったんだからなぁ」
「なっ……何よ、変態トラさん!!」
「おいコラ。なんでお前まで俺をトラって呼ぶんだ。しょーもねえことジローに仕込まれてんじゃねえぞ、犬っころ」
「犬っころって言うな!」
「クロちゃん、あんまコイツからかうなって。慣れてねえんだから」
売り言葉に買い言葉な私達のやり取りを、制するハイジ。
あんただって最初からかってきたじゃん!って言いたかったけど、ハイジよりもこのキンパツの方が何倍もムカつく!!!
「ハイジ!!気をつけろ、ジローちゃんが……!!」
そんな私達の後方から、何やらケイジくんの苦しそうな声がした。
三人で振り返れば、お腹を抑えてうずくまっているケイジくん。
その横で腕ごと胴体をぐるぐる巻きにされているジローさんが、再び鬼と化し、仁王立ちになっていた。
恐らくケイジくんは彼に、お腹に蹴りを入れられたんじゃないだろうか。
ジローさんの目が、鳥肌立ちそうなくらいアブナイものになっている。
「クロちゃん、早くアレ!!」
身の危険を察知したハイジが、トラさんに向かって慌てて叫ぶ。
すると「そう焦んなって」と言いながら、のんびりした動作でトラさんは制服の内側を探ると、一冊の何かの雑誌を取り出した。
その雑誌を開けるとトラさんはジローさんの目の前に、見せ付けるようにバッと突き出した。
見せられた雑誌を凝視する、ジローさん。
数秒後、彼の鼻から大量の血が美しい弧を描き、噴出されたのであった。
崩れ落ちるジローさん。
雑誌の表紙をよく見てみれば、えっちな服を着ていやらしいポーズをとったおねーさんの写真が。
トラさんがジローさんに見せたのは、エロ本だった。




