11
笑い方がハイジと一緒だ。下品なとこもアイツそっくり!!
この人すっごいやりづらい。苦手だ……。
「カワイーね、耳まで真っ赤になっちゃってよォ」
もうイヤだ。一刻も早くここから逃げ出したい。
だいたい私を呼び出しておいて、ハイジも白鷹先輩もいないってどういうこと!?
私、なんでこんな変態キンパツを相手にしなきゃいけないのよ!!
「あんまイジめちゃ可哀相だろ、タイガ」
「そうっスよ、白鷹さん怒らせたらヤバいっスから」
「うっせーな、ビビってんじゃねえよてめえら」
他のヤンキーさん達のそんな言葉も、変態キンパツにはどうでもいいことらしい。私は早く白鷹先輩が来てくれることを祈った。
そんな祈りが通じたのか、ガラッと大教室の戸が開いた。
現れたのは──待ち望んでいた、白鷹先輩だった。
「どこ行ってたんだオメーはよォ。愛しのペットちゃんがお待ちかねだぞ」
両手に何か荷物をいっぱい抱えて入ってきた、白鷹先輩。
そんな先輩に、黒羽先輩が呆れたような視線をやる。
白鷹先輩に会うのは、学校中が大騒ぎになったあの時以来だった。
初めて彼と会った時はどんなにすごい人か知らなかったけど、今じゃとっても影響力のある人なんだってわかってしまった。
だから、何となく萎縮してしまう。どうしてこんな人と、私が会っているのか。
変な人だと思ってたけど……今もそれは変わらないけど、ホントのとこどうなんだろ。
ヤンキーのボスなんだから、やっぱり怖い人なのかな……。
「トラ、どいて」
「あ?なんでだよ、そっち座れよ」
私の隣に座っている黒羽先輩を見下ろす白鷹先輩は、なんだか不機嫌そうだった。
……あれ、なんで黒羽先輩が「トラ」なんだろう。
むすっとしている白鷹先輩に、向かいのソファーに座れと促す黒羽先輩。
でも白鷹先輩は譲らない。
「あ、私そっち行きますから、ここどうぞ」
こう着状態の二人に、私は席を立って向かいのソファーにまわった。
っていうか……こんなことで争わないでほしいな……小学生じゃないんだから。
すると、なぜか白鷹先輩は私の隣にどすんと腰を下ろした。
何なんだ、あっちに座りたかったんじゃないんだろうか。
「ははーんわかったぞお前。タマの横に座りたかったんだろう」
へ?
黒羽先輩のセリフに、思わず私は白鷹先輩を見てしまった。
その横顔は無表情で、何を考えてるのかはわからなかったけど、綺麗だなと見惚れてしまっていた。
「そうかそうか、そんなにタマちゃんが気に入ったか。じゃあよ、イイコト教えてやるよ」
ニッと口の端を持ち上げる、黒羽先輩。
コイツまさか……!!
「タマちゃんはバージンなんだとよ!よかったな~、お前に汚されたいらしいぜ?」
「ちょ、ちょっと何てこと言うんですか!!」
あんたこそ、そのお口縫ったほうがいいんじゃないの!?私が縫ってやるわ、ブスブスっとまつり縫いでな!!
それにそんなこと言ったら、白鷹先輩がまた鼻から出血を……!!
「当たり前だろ、俺のなんだから。誰にも渡さねえよ」
……え?
……先輩、今……なんて?
予想に反して、白鷹先輩は涼しい顔で答えた。
黒羽先輩も想定外の反応に驚いたのか、ぽかんと口を開けていた。
下唇に吸っていたタバコが乗っかっていたけど、落ちそうになって慌てて持ち直していた。
もしも……もしも私が白鷹先輩のペットじゃなく、一人の女として見られていたなら、さっきのセリフは胸キュンものだ。
いや、胸キュンどころじゃない。脳天ズキュンだ。あの世へ一直線だろう。
ああでも……ペットじゃなかったら、こんなこと言ってもらえないんだろうな。女嫌いなんだし。
なんて悲しい運命……!!
「タマ、お前のために買ってきた」
おもむろに白鷹先輩は、抱えていた袋にパンパンに詰まっていた物を、テーブルの上にばさっと広げた。
ええっ、何!?私のために何を買ってきてくれたの!!?
やだ、アクセサリーとかかしら!先輩ったら、そっけないフリして女心をよく理解してるのね!!
少しドキドキしながら、私は先輩が買ってきた物が何なのか確かめようと、テーブルに視線を下ろした。
そこには大量の犬用の首輪が、散乱していた。




