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「……ハイジくんが花鳥を連れてこいって言うからさ」




こそっと私に耳打ちしてくれた、爽やかイケメン。



再び私は氷河期時代に突入した。氷の壁は厚かった。



彼もヤンキーだったのだ。ハイジ軍団の一員らしい。くそっ、紛らわしい!!



なんちゃってヤンキーめ!オシャレヤンキーめ!!



ハイジが浮かれている私をどこかに隠れて覗いて笑ってんじゃないかと思って、きょろきょろしてみたけど、あの目立つ緑頭は見当たらなかった。




「あれぇ雲雀くんじゃん!どうしたのぉ?ももと知り合いなのぉ?」




三途の川から帰還したらしい朝美のねちょっとした声が、オシャレヤンキーくんに絡みつく。




「えっ!?あ、いや……っていうか誰!?」




知らないのかよ!!てっきり朝美とお知り合いなのかと思ったよ!!




「あ、ごめんごめ~ん。畝野朝美っていいま~す、よろしくね雲雀くん☆」




わぁ、星飛んじゃったよ~。



オシャレヤンキーくんもたじろいでるし、完璧ドン引きじゃんよ~。




なんだか朝美って、すごい人間なんじゃないだろうか。



女王だ。デリカシーゼロの、ノンデリ女王。



ハイジなんか足元に及ばない。女王にかかれば、ありんこ同然だろう。




意味もなく、私は朝美に尊敬の眼差しを向けていた。




「ははっ……それじゃ俺、ちょっと花鳥に用あるから……」


「う、うん行こうか」




女王の魔の手から逃れるべくそそくさと、私とオシャレヤンキーくんは教室を後にした。



「すごいね、あのコ……友達?」


「はあ、まあ……」



朝美のパワーに圧倒されたらしく、オシャレヤンキーくんは私に苦笑いで尋ねてきた。



曖昧な返事を返したものの、友達だとは言い切れないし、違うとも断言できない。非常にあやふやな関係なのだ。



でもそれくらいの距離感を保ったほうが、朝美と付き合っていくにはちょうどいいんじゃないかと思っていた。




「俺、雲雀 克也(ひばり かつや)っていうからさ。覚えといてよ」




そう言って、ハニかむ彼。

克也……かっちゃんだな。



かっちゃんはヤンキーというよりも、普通の今時のオシャレさんという雰囲気だ。


サッカー部にいそうな、学年のアイドルっぽい感じの。



将来美容師になるとか言われたって、全然違和感ない。だって童顔で可愛いし。



なぜ彼が白鷹ファミリーに仲間入りしちゃったのか、不思議なくらいだった。



「あ、うん。私は……もう知ってる、よね」


「そりゃね、白鷹さんのペットだしね。俺らの間じゃすっかり有名だよ、ももちゃん……じゃなくてタマちゃんだっけ?」


「……ももです」


「そっか」



オシャレヤンキーかっちゃんは可笑しそうに、くしゃっと顔を崩した。



……私、そういう認識なんだ。白鷹ファミリーの中では、『白鷹さんのペット』として記憶されているのね……。




「あれからずっと白鷹さん、ももちゃんのことばっか聞いてくんだよ。タマはどこだ、タマは何組だ、なんで俺のとこに来ないんだ、エサは何味が好きなんだとかさ」




いや、エサって……聞いてどうすんですかジローさん……。

「やっぱビーフ味かな~でもササミも捨てがたいな~」とか答えればいいんですか……。




「でもほら、ハイジくんがお前を連れてくのにちょっと学校を騒がせただろ?で、そのほとぼりが冷めるまで待ってたんだけどさ、ついに白鷹さんも限界来たみたいで。『タマのクラスまで行く』とか言い出したからさ。それはマズイってなって、ハイジくんがお前を呼んだんだ」


「……そう。だからしばらく音沙汰なかったんだね……」


「ごめんな、嫌だとは思うけどさ……俺らのために一肌脱いで、ももちゃん!」




もうすぐあのキングダムに着こうという時、かっちゃんはパンと手を合わせると、本当に申し訳なさそうに眉を八の字にして、頭を下げてきた。




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