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今は2時間目の授業中。
私の席は窓際だ。先生の退屈な持論をそこそこ受け流しながら、窓の外に目をやった。
「あ……」
そこから見えたのは、校門をくぐってグランドを歩く二人の男の姿。
一人は銀髪。つまり、白鷹先輩だった。
そしてもう一人は──金髪だった。
眩いばかりの、鮮やかな金。
緑や赤じゃないということは、ハイジとケイジくんではない。
……新種かしら。見たことないし。
明らかに遅刻だというのに、二人は少しも慌てる様子なんか見せず、ダルそうに両手をポケットに突っ込んで歩いている。
さすがキング。
だけどあの金髪、誰だろ。
白鷹先輩は背が高いのもあるけど、その存在感はさすがというべきか。自然と、目が彼を追ってしまう。
けれども隣の金髪も、白鷹先輩に全く引けを取らない。
白鷹先輩と肩を並べて歩いたって、劣ることはない。それどころか、圧巻とまで思ってしまう。
あの金髪からも、どことなく王様の雰囲気が感じられるのは……気のせい?
無表情な白鷹先輩に対して、あくびしたり眠そうに目をしょぼしょぼさせる金髪。
「ちょっとちょっとみんなぁ、白鷹先輩と黒羽先輩だよ!!」
「え、うそ!マジ!?」
「どこどこ!!」
「すげえ、二人揃ってんじゃん!」
「ヤバ、かっこよすぎ~!!」
な、なんだなんだ!?
授業なんかそっちのけで、グランドを歩く二人を一目見ようと席を立つクラスメイト達。
みんな窓際に押し寄せてくるもんだから、私はぎゅうぎゅう押されて潰れそうだった。
先生の注意する声すら掻き消すほどの、大歓声。
まるで校舎全体が、揺れているかのよう。
よそのクラスは勿論のこと、それどころか階下の二年生も三年生も窓から身を乗り出して、銀と金を覗いているようだった。
学校中を大騒ぎにさせるあの二人って……いったい何者なんだ!?
「ね、ねぇ小春……あの金髪知ってる?」
いつの間にか小春も窓際に来ていたので彼女に尋ねてみると、目をまん丸にして教えてくれた。
「ももちゃん、黒羽先輩も知らないの!?白鷹先輩と同じ二年生だよ、黒羽 大駕先輩!白鷹先輩と黒羽先輩が、この学校のツートップなんだって」
クロバ……タイガ。
知ってた。名前だけは。
本人を見たことがなかったんだ。
全校生徒が注目する中、白鷹先輩と黒羽先輩は何も気にせず校舎に足を進めていた。
鳴りやまない黄色い声。ほとんどが、女子のキャーキャー言ってる声だった。
それもそうだろうな、二人とも超がつくほどのイケメンなんだもん。
でも、白鷹先輩は決して顔を上げない。女子と目が合わないように。
なんだかそれが可笑しくて、笑ってしまいそうになる。真っ赤になる先輩を思い出して。
対する金髪の黒羽先輩は、へらへらしながらみんなに手を振っていた。どうも正反対の二人のようだ。
だけどそんな二人を出迎えるのは、彼らにとって心地の良い歓声だけじゃない。
「いい身分だなオイ!!」
「ニヤけてんじゃねーぞてめえら!!」
「調子にノんなよクソガキが」
男の野太い声で、銀髪と金髪にヤジが飛ぶ。
まだ何か言ってるっぽいけど、周りの騒音で聞き取れなかった。
たぶんこんなことを彼らに言えるのは、三年生だろう。これだけ目立てば敵だって多いはず。
歓迎されるばかりじゃ、ないらしい。
それでも、やっぱりというか慣れているのか、キング二人は完全に無視だった。
「白鷹、お前人殺しなんだろ!?」
その時だった。
それまで完璧スルーだった白鷹先輩が、立ち止まった。
誰かが言い放った、この一言に。




