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不安がないっていえば嘘になる。
本城咲妃の件もあるし、もっと憂鬱なのが白鷹先輩グループのこと。
あまり関わり合いになりたくないけど、ハイジは私を先輩にまた会わせる気マンマンだったし、先輩もまた来いって言ってたし……。
やだなぁ……美形が鼻血出す場面なんて、そう見たくはないものだ。
じゃなくて目立つことが嫌いな私には、目立ちすぎる彼らとお近づきにはなりたくない。
「はぁ……」
「……ももちゃんやっぱり昨日のこと気にしてる?あの、ハイジくんのこと……」
ため息をついた私の顔を、小春が心配そうに覗き込んできた。
「……あのね小春、実は言ってなかったんだけど……小春には言っておくね。私が田川に告白した時、ハイジが偶然にもその場にいたんだよね。私全然気づかなくてさ」
「ええっ!?それじゃあ……見られてたっていうこと?」
「そう。で、あいつに絡まれたっていうか……からかわれているというか……」
白鷹先輩が女嫌いだということと、それを私が治す役目に抜擢されてしまったということだけは、小春にも言えない。
とりあえず、心配をかけている彼女にだけは簡単な事情を説明しとかなければと思った。
「そうだったの……ももちゃん何も悪くないのにね……」
「うん、でもまあすぐに飽きると思うよ」
しょぼんとする小春に明るく返して、私は話題を変えた。
そう、何でもないことなんだと思ってもらいたくて。
学校に着いて、昇降口から教室へと向かう道のりで私は沢山の視線に串刺しにされた。
“あ、あのコでしょ?ほら昨日の──”
“ほんとだ。っていうか大したことないよね”
“超モサいじゃん。なんでハイジくん、あんなコと知り合いなわけ?”
モ、モサ……!こらえろ、こらえるんだ私!!
こそこそ話してるわりには声でかいっつーの!!聞こえてんのよおねーさんがた!
“あんなのタヌキじゃん”
“言えてる〜”
ぬあっ!!
謝れ!全国のタヌキに謝れ!!
全タヌキを敵にまわしたくなかったらな!!
そんなこんなで朝っぱらからどっと疲れ、教室に入った私の足取りは重かった。
タガメじゃなくてよかったとひっそり喜ぶあたり、私って意外にもプラス思考じゃんと思った。
「ももぉ~昨日はごめんね?」
席に座ったと同時に耳に飛び込んできた女の声に、急激にテンションが下がった。
「……なに?」
「やだぁ、怒ってる?ほんっとごめん!!ももの気持ちも考えないで、アサミ言い過ぎたよね……」
相変わらずの間延びした口調で謝ってきたのは、朝美だった。
わざとらしく眉を下げてくねくねしている彼女に、さらなる疲労が溜まる。
「いいよ、もう」
「ありがとぉ~!!アサミとももはぁ、仲良しだもんねっ!!」
ジ、ジンマシンが出そうだ。全身がむず痒い!!
完璧なアレルギーだこれ!アサミアレルギー!!ダメだ、治療法が見つからねぇ!!
「じゃあ仲直りの握手しよぉ」
そう言って朝美は私の手を強引に握ると、ブンブン振った。
ふおおおお!!あんたわざとだな!?悶え責めか!新手の拷問か!!
「ももどうしたのぉ?息荒いよ?目も恐いしぃ」
「べ、別に……」
息も絶えだえ、のどの奥を掻きむしりたい衝動を抑えつつ、なんとか私はその場をやり過ごした。




