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小春が友達で、本当によかった。敵だらけじゃない。私には小春がいてくれる。
こんなにも優しくて、心強い友達がいる。
しっかりしなきゃいけない。小春に心配かけないように、迷惑かけないように。
さっきみたいな思いをさせないように。
その日、じろじろと他のクラスの子からも注目されたし、こっちを見ながら何か話しているのも目についた。
今日の昼休みまでは、自分のクラスメイトでさえ何人私の名前を知っているのかというぐらい、影が薄かったのに。
今ではもう、学年全員に覚えられたんだろう。
『“風切灰次に狙われた”花鳥もも』として。
……最悪。
けれど彼らと関わるっていうのは、こういうことなんだ。
常に人の目が付きまとう。あることないこと噂されて、一人歩きしていく。
もうこの状況を巻き戻すことなんてできないなら、精一杯立ち向かうしかない。
やってやろうじゃん、石ころ根性で!!
「お兄ちゃん、いってきます」
日差しの眩しい、朝。
仏壇の前で手を合わせると、お兄ちゃんの遺影に微笑みかける。
それが私の毎朝の習慣だった。
小さい頃は大人だと思っていた、お兄ちゃん。
そのお兄ちゃんが亡くなった年齢に、私も段々と近づいていっている。
あと二年もすれば、追いついてしまう。
でも、やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだと思う。たとえ年齢を追い越したって、それは変わらない。
響兄ちゃんは私の心の中で、その輝きを永遠に失わない。
カッコよくて、いつだって前を向いて堂々としていた。
密かに私の、憧れだった。
「ももー、何してんのー?お友達来てるわよ?」
キッチンから私を呼ぶお母さんの声に、鞄を持って急いで玄関に向かった。
「友達って……?」
誰だろう。私の家までわざわざ来てくれるなんて。
「いってきまーす」
とりあえずお母さんにそれだけ言って靴を履くと、勢いよくドアを開けた。
太陽の光にほんの少し目を細めて、私は玄関の門前に立つ人物を確認した。
「小春!」
「ももちゃんおはよ~。一緒に学校いこ?」
嬉しそうにふにゃっと頬を緩めて笑うのは、小春だった。
「うん、でも……うちまで来るなんて珍しいね。どうしたの?」
正直ビックリした。
小春が家まで私を迎えに来てくれるなんて、初めてだ。だって小春の家は私の家とは反対方向にあるから、学校を一旦通り過ぎてここまで来なければならないのに。
「別に理由はないんだけどね。ももちゃんと一緒に行きたくなったの!!」
照れくさそうにそう口にする、小春。
なんとなく、察しがついた。
小春は、昨日のことで私に気を遣ってくれているんだ。私が落ち込んでいると思って、来てくれたんだろう。
「私も小春と学校に行くの初めてだし、朝からテンション上がる!」
「ふふっ」
二人で並んで、歩き出す。いつもの通学路を、他愛ない話をしながら、笑いを零しながら。
彼女の優しさに、何度も心の中で感謝した。




