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ハイジやケイジくん、白鷹先輩はどこまで有名なのか知らないけど、この学校じゃ誰もが一目置く存在。
何やってんのかわからないけど、“ヤバイ”と口々に噂される彼ら。
彼らに関わろうとはしないくせに、みんな彼らのことが知りたくてしょうがない。本当は近づきたいから、情報を欲しがる。
それに……相手が、ちっとも冴えない地味キングな私だから。
自分達よりも格下の人間が彼らと接触したから、余計に興味をそそられるんだろう。
冗談じゃない。
こっちはハイジの身勝手な理由で、日陰から引きずり出されたっていうのに。
「あのさ、ハイジ……くんとかが何考えてんのか私だってわからない。彼らは、そういう人達なんでしょ。何をしでかすのか、いつだって気まぐれ。情報通なあんたの方が、よくわかってんでしょ。私は被害者だよ」
やけに冷静だなと、自分で思った。
どうにも胸らへんがムカムカして、仕方なかった。
私はただ迷惑なだけなのに、なんでこんな質問攻めにあわなきゃならないんだ。なんで、答えなきゃならないんだ。
「ん~……ももぉ、言ってる意味がよくわかんないよぉ?」
わかんなくてけっこう。これ以上話すつもりもないし。
私は朝美を無視して、自分の席についた。
けれどまだ全員、納得いっていないと言いたげな眼差しを送ってくる。
「なぁ、マジお前何やったわけ?」
「ヤバいんじゃん?目つけられたり!?」
「誰にも言わないからさぁ、教えてよ」
口々に投げかけられる、好奇心の塊の言葉。
今まで一度も話したことのない男子や女子が、ここぞとばかりに言い寄ってくる。
誰にも言わない?そんなわけ、ないでしょう。
明日には、学年中に知れ渡ることになるんでしょ。
うっとしい。そんなに知りたいなら、本人達に直接聞けばいいのに。
「あ、もしかして田川くんのことと何か関係あるの!?」
その瞬間、プチッて何かがキレる音が頭の中に響いた気がした。
なんでそこで田川が出てくるんだ。
何もあいつは関係ないじゃんか!!もう終わったことだし、思い出したくもない。
どうしようもなくムカついて、口を開こうとしたその時だった。
「ね、ねぇみんなもうやめてよ!!」
周りの冷やかしを遮った、か細い女の子の声。
うるさかった教室がひっそりとし、その声の主の方へと視線が集中した。
「あ、……ももちゃん、困ってるじゃん……可哀相だよ。これじゃあまるで……イジメみたいだよ……」
自分が注目されていることに恐縮してしまって、俯きながらも必死にクラスメイトにそう言って聞かせるのは……小春だった。
ちょうど休み時間の終わりを知らせるチャイムが校舎内に鳴り響き、それ以上は誰も何も言ってこなくなった。
小春は、人前に立つのがすごく苦手な子。
大声を出すのも、誰かに反論したりするのも苦手。私はそれをよく知っている。
だから小春のこの行動が、どれだけ勇気のいることだったかなんて……考えなくたってわかった。
泣きそうになった。
「ありがと小春。嬉しかった」
「ももちゃん……えへへ」
私も小春も、なぜか涙ぐんでいた。




