表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/130

26



おさまっていたはずの鼓動が、再び息を吹き返したみたいに速く打ち始める。



太郎さんの口から語られる、お兄ちゃんの話。



みんなが、お兄ちゃんを知っている。


私だけのものだと思っていた“花鳥響”の名を、当たり前のように口にする。




その意味は?


彼らとお兄ちゃんの間には、何があったの?


不安、期待……様々な感情が入り混じる。



お兄ちゃんの死の真相も……太郎さんは把握しているんじゃ……?




通されたのは、十二畳ほどの和室だった。


ハイジに連れ込まれたような簡素な和室じゃなくて、もっと格式高い和室。


障子があって掛軸まで飾ってあって、床の間には品のいい焼き物が並んでいる。


どれも安物には見えない。


部屋の中央には、少し歪んだ形をした木製のテーブルが置かれていた。



畳の香りが、柔らかく鼻先をくすぐる。


ここは客間なんだろう。


外観は洋風なのに、こんな部屋もあるんだって感心してしまった。



「どうぞ、座って」



ドラマで見るような、偉い人を接待するための料亭の一室みたいな部屋。

呆気にとられ立ち尽くしている私に、太郎さんが座布団を敷いて招いてくれた。




「……失礼します」




テーブルを挟んで向かい合わせに座る、太郎さんと私。




ああ……ダメ。


ごめんね心臓くん。フル稼働させちゃってごめん。



抑えられないの。



響兄ちゃんへの、想い。



太郎さんに抱いてしまっている、期待。




「そういや、まだ自己紹介もしてなかったな。名前は白鷹太郎。歳は、ももちゃんのお兄さんの一つ下。好きな食べ物はプリンパフェでーす」




にこり、と太郎さんは満面の笑みを浮かべた。



まるで、幼い子に話しかけるみたいに。



お兄ちゃんの一つ下ってことは、私の四つ上。

ジローさんの三つ上。



今、二十歳ってことかな。


二十歳のおにーさんからしたら、確かに私なんてガキンチョだろうな。


それにしても……お兄様。

プリンパフェって……プリンなの?パフェなの?パフェにプリンが乗っかっちゃってたりするの?


甘党なんだろうか。



私も、自己紹介しなきゃ。



「わ、私は花鳥ももです。好きな食べ物は……ば、馬刺しです!!」



……馬刺し?



なんでだ!!なんで私、馬刺しなんて言っちゃったんだ!!馬刺しなんて昔九州に旅行行った時に、一回食べただけじゃないか!!


おいしかったけどね!?



緊張しすぎじゃん私……よりによって、十五の乙女が馬刺しって……!!


可愛くねええぇ!!



「ぶはっ、し、渋いなぁももちゃん!!」と、太郎さんは大笑いしていた。



「違うんです!本当はケーキが好きで……!」と必死に弁解しようとしたのに、太郎さんの笑い声にかき消されてしまった。



聞き入れてもらえる様子はない。

もう諦めるしかなかった。



っていうか……太郎さんの好物のプリンパフェのほうが、よっぽど女の子らしいってどうなの!?



ひとしきり笑った後、太郎さんは目尻に溜まった涙を人差し指で拭い、姿勢を正した。



私は恥ずかしすぎて、ただ小さくなるしかなかった。



「ももちゃん、急に呼び出したりしてごめんな。なんせ今日を逃したら、次はいつ帰ってこられるかわからないんだ」



さっきまでジローさんを叩きのめしていた人とは別人みたいに、太郎さんは穏やかな口調で話し始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ