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ジローさんが蹴られたり殴られたりしてる横で、飛野さんとタイガは涼しい顔ですき焼きをつついていた。



これ、日常茶飯事だったりするんだろうか。

私なんかビクビクしてしょうがないっていうのに。



「俺に逆らうなんざ一万年早えんだよバカヤロウが」と、太郎さんは床に這いつくばったジローさんを足げにし、さも自分が格上なんだと知らしめるような目つきで弟を見下ろしていた。



ジローさんは黙って、むすっとしていた。

綺麗なお顔なのに、口の端からちょっと血が滲んでいた。



どうしよう……逃げたい。



キングオブキングの前じゃ、私なんて余りにも無力。その眼光だけで、あの世行き。



逃走しようかと、微かに腰を浮かした時だった。




「ひっ……!」




ゆるりと振り向いた太郎さんと、視線がごっつんこした。




「ごめんなぁももちゃん。見苦しいとこ見せちまって」




仏のようなスマイルを向けてくれた、太郎さん。

なぜかその笑顔に背筋が凍った。





お兄ちゃん……本当にこの人と知り合いだったの!?お兄ちゃん何してたの!?どんな人だったの!?




そしてなぜこのお方が、私のことを知っているの!!!




「なぁ、タローちゃんなんでコイツ知ってんの?」




まるで私の心を覗いたかのように、タイガがタイムリーな質問をお兄様にしてくれた。




「なんでって、お前……この子は響さんの妹じゃねーか」




何をいまさらそんなことを聞くんだという含みを持たせて、太郎さんがタイガに返した。




「響さん?響さんって……?」




首を傾げるタイガ。




「何ボケてんだ。響さんっつったら、花鳥響しかいねえだろ」




太郎さんの眉間に皺が刻まれる。トボけてんのかと言いたそうに。



ちらりとタイガの方に目を向けた瞬間、ビクッと肩が揺れた。


大きく開いたタイガの口からぼたぼたと、すき焼きの具が逆流していたのだ。



その顔も、ヒドかった。

これ以上ないくらい呆けて、マヌケ面だった。



「き、汚い!!!」


「コイツが響さんの妹……あの響さんの……?」



半分あの世に逝きかけのタイガが、虚ろに呟く。



コイツも知ってんの?お兄ちゃんのこと!!ちょっと、どうなってんの!?



ほんとにお兄ちゃん、どういう人だったのおおお!!?



「嘘だろ!?だって全然似てねえじゃねーか!!!響さんと血繋がってんなら、もっと美人だろ!!名字が一緒なだけじゃねえの!?俺は信じねえぞ!!!」



うるさいな、人が気にしてることを!!


とイラッとしてると、「失礼なことをぬかすな」と太郎さんがタイガの頭を叩いた。



それでもタイガの目は仰天の色一色で、私から逸らされることはなかった。



飛野さんが「な、ぶったまげただろ」と楽しそうにしていた。



「ももちゃん、ここじゃゆっくり話せねえから部屋変えようか」


「え……は、はい」



太郎さんは優しく笑って、私を別の部屋に案内してくれた。





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