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ジローさんは早速ベッドに寝そべってるし、タイガはソファーに座ってテレビのサブスクを適当に流し、くつろいでる。



入り口付近で突っ立っている私なんか、お構いなしだ。




「ねぇ、トイレどこ?」




そわそわしすぎて行きたくなってきたから、尋ねてみた。




「出て、もっと奥に突き進んだとこにある」




テレビから目を離さず、無愛想にタイガが教えてくれた。



それでも十分だったから、私は言われた通りトイレを目指した。




「ここかな」




さっきの廊下をもっと奥に歩いていったところに、トイレはあった。



トイレの中も広い。ピッカピカ。



とりあえず用を済ませて、スッキリすると幾分か緊張がほぐれてきた。



うん、トイレはやっぱりリラックス空間だな。



なんか緊張が変に気分をハイにしちゃって、私はつい鼻歌なんか歌ったりしていた。



ちょっとでも、気を紛らわしたかったのかもしれない。



トイレから出てもまだ歌っていた。



鼻歌なんかじゃおさまりきらず、ついには普通に口で歌っていた。




それもなぜか小学生の頃に習った、ある童謡だった。




「ぐりーんぐりーんフフフフフーンフフフフフフーンフ~ン」




静かなフローリングの廊下。いるのは私一人。



誰も来ないだろうと、油断したのがいけなかった。




何だかノってきちゃって、その歌を無意識にバージョンアップさせてしまっていた。




「ヘイYO!グリングリンYO!YO!チェケラッチョ!!」




ラップバージョンだYO!!




最終的には私はラッパーになっちゃってた。


脇を締め両手の指をピストルにして、キレ良くくるりと振り向く。




決まったYO!ヒャッフー!!




なんて、ニヤッとしたら。






「一度病院行こうか、ももちゃん」





振り向いた先には、まさにグリーンなアイツが立っていた。





グリーンボーイの、ハイジが。



それもなぜか上半身裸で。




私の人生終わった、と思った。











げ、幻覚……?



だってハイジがいるわけない。ここ、ジローさんのおうちだし。



余りにもグリーンを意識しすぎて、緑なアイツが幻で見えてるだけだ。



きっとそうだ。そうに違いない。

そうだよね。そうだと言って。


そう、なんでしょ……?




「前々からアブナイとは思ってたんだよなぁ……。けど、ここまでとはな。重症じゃねえか。手の施しようがねえ」




タイガよりももっと哀れみの眼差しを送られ、本気で諦めたようなハイジの口調に、急激な恥の大波が私を襲った。




これは本物の、ハイジだ。




見られてた。


ラッパー『MOMO』になりきってたとこを、コイツに見られてた……!!




「ち、違う!!私、自分を勇気づけようとしてただけで……」


「どんな励まし方だ」


「うわああ~んお願い!!神様仏様ハイジ様!!今のは誰にも言わないで!!」


「安心しろ。言ったところで、お前なら誰もが納得してくれる」




泣きついてみても、ハイジは冷静だった。冷静に私を切り捨てた。



私はもう涙目だった。




っていうか……そんなことよりも。





「なんであんたここにいるの」

「なんでお前ここにいんだよ」





重なった声。



私達は同じ疑問を、持っていた。




怪訝そうに眉をしかめるハイジ。




「私は……ジローさんのお兄さんに、会いにきたんだよ」


「……太郎さんに?なんで」


「な、なんだっていいじゃん。あんたこそ、何なのよ」




いや、いてもそこまでおかしくないけどね。



ハイジは白鷹ファミリーの一員なんだから、ジローさんの家にいたって変じゃない。



タイガや飛野さんが自分の家みたいに過ごしているように、ハイジにもその権利があるんだろう。



でも、今ここにいるなんて思わなかったから。

ラッパーを目撃されるなんて、思いもしなかったから。



それに


ハイジの今の格好が、余計にプチパニックに拍車をかける。



上半身には何も着てなくて、下はゆる~いスウェット。

下着見えそう。っていうか、ちょっと見えてる。

ボクサーパンツ派なんだとか、どうでもいい情報を手に入れ嫌悪した。



首にはタオル。濡れた緑の髪の毛。

こっちに押し寄せてくる、熱気。




完璧お風呂上がりな、ヤツの格好に。




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