三、魔王との慎重な会合と思われた何か
「リンカーラ、そろそろ起きろ。」
「無理〜、魔王城着くまでおぶって〜。」
「はぁー。」
翌日の早朝、まだ太陽も登りきっていない頃に二人は出発した。
魔物も眠っているから森を進んでも襲われる事は少ない。
ただ……
「ちょっとはや〜い。もうちょっとゆっくり〜。」
「さっき遅いって言ったのはどの口だ。」
リンカーラが朝にめっぽう弱かった。
深ーい眠りについたリンカーラの分まで見張りをした結果、だいぶ寝不足気味のリョースゲイル。
彼に幾度となく叩き起こされ、それでもなおリンカーラは爆睡。
結果魔王城に着くまでリョースゲイルがおんぶして走ることになった。
「あ゛〜、眠い。」
リョースゲイルの静かな叫びは誰にも届かない。
「いったん寝かせろ。」
「お疲れ〜。」
そして数時間後、山頂でリョースゲイルは限界を迎えた。
リョースゲイルの背中から降りたリンカーラはぐっと背伸びをする。
「にしてもまさか、こんな国を築いているなんてね。」
日も上りきり快晴、山頂から山の麓を見下ろす。
そこには魔王とはかけ離れたかのような活気のある城下町が広がっていた。
海王魔国の名の通り海に面しており潮風が山まで届き心地いい。
とても大国とは言えないが、
「楽しそう……。」
「?どうした、リンカーラ?」
「……、なんでもないわ!それより、はい。」
リンカーラは両手をリョースゲイルに差し出す。
「は?」
「あんた寝たいんでしょ?だから私の腕に乗りなさいよ。」
「……はぁ?」
「別におんぶでも抱っこでもいいけどこれが一番楽なのよ。さっさと行きたいし、早く!」
「いやいやいや。」
「あーもう長い強制!」
そういいリンカーラはリョースゲイルを担ぎ山頂から飛び降りた。
上手く風魔法を展開し空中でバランスを取る。
『ミスったら死ぬ!』
とリョースゲイルはリンカーラに思いっきりしがみつく。
これぞ紐なしバンジー。
「あっは!気持ちわ!」
「元お姫様が姫様抱っこするなんて……、めっちゃ目覚めた。」
二人は空を飛び魔王城へ降りていったのだった。
少し時間が経ち城の近くまで飛んできた二人。
飛行しながら下を見れば沢山の魔物が城下町で遊んでいる。
「リーザドって商売できるのねー。あ、今目あった。」
「で、どうやって城まで凸るんだ?」
とリョースゲイルはリンカーラを見上げる。
お姫様抱っこ状態で会話してるのでどうにも顔が近い。
「そりゃ、正面突破よ。」
そういい顔を前方に戻す。
そのまま二人に無言が走る。
「ねえ、無言にならないでよ。」
とリンカーラがリョースゲイルの顔を覗く。
下には目を見開いたリョースゲイルが抱かれていた。
「いや、まともな考え方も出来んだなと。」
「このまま手離すわよ。」
「死ぬが?」
なんて喧嘩も繰り広げながら少しずつ下に降りていく。
「お望み通りの正面突破!」
と彼女が目指したのは地面ではなく、魔王城の窓だった。
リョースゲイルを抱えたまま自分たちを囲むように結界を張る。
そして城の窓ガラスに体当たりした。
魔王城の窓ガラスは盛大に割れ、破片は辺りに飛んだがリンカーラたちは無傷で着地した。
すぐリンカーラの腕から降りたリョースゲイルはリンカーラを見つめながら
「お前を信じた俺がバカだった。」
と呟いた。
「魔王様、敵襲です!」
「!」
玉座のある大広間に一匹のゴブリンが入ってきた。
玉座には魔王らしき人影がいる。
配下の声に気付き顔をあげる。
「詳しく報告してくれ。」
「は!銀髪の女と紺髪の男の人間二人組です。上空から窓を破って侵入してきました。」
「は?」
「女の方は兵を眠らせ、男の方はなんか変な香水ばら撒いてます。」
「ほう?」
「あとご近所さんのリザードマン、リザ美さんから山から滑空する二人を見たって連絡がきました!」
黙り込む魔王におろおろしてしまう配下ゴブ男。ゴブ男は思わず声をかけてしまう。
「魔王様……。」
「うん、まあいい、報告ご苦労!」
「また何かあればご報告いたし、ま、s」
「ゴブ男!」
魔王は玉座から立ち上がる。
そのままゴブ男に駆け寄った。
床に倒れ眠っている。
「なんだ、この甘ったるい匂いは。」
廊下から甘ったるい匂いが充満し、玉座のある大広間にまで届く。
魔王は思わず鼻を塞ぐ。
魔王にもダメージを与える匂い。
次の瞬間、勢いよく風が城一体を吹き抜けた。
その時魔王は悟った。襲撃者は只者ではないと。
「よっ!イケメン!香水大魔王!」
「魔王城で魔王、さっきからなんかズレてるな……。」
声と共に玉座の部屋に誰かが近寄ってくる。
魔王は急いで玉座に戻った。
魔王との慎重な会合かと思われたエンタメ回(会合なし)




