ニ,無能王女と呼ばれた何か
魔物の森を進み,日は沈んだ。そもそも追放されたタイミングでだいぶ日は暮れてたのだが。
二人は岩に腰掛け焚き火を囲む。
「はぁー、焼いただけの魔物肉じゃあ物足りなく感じるわ。リョースゲイル、お塩持ってない?」
彼女はローブの女改め、リンカーラ・モルタリア。
「作ってないのにけちつけんな。」
そして木の影から枝を抱え歩いてきた少年、リョースゲイル・イタクキャー。リンカーラの幼馴染で影武者として追放された男の子だ。
さてここでみんなに謝らなきゃいけないことがある。
『紅宝国第一王女、リンカーラ・モルタリア。彼女は貴族では珍しく魔力を一切持たな(以下略)』の内容だけど
嘘です。
リンカーラ・モルタリア。彼女は好きな人を独占したいがため頑張る!なんて可愛い少女じゃない。
「「「ガァルルルル」」」
「まったく、ようやく焚き火ご飯に慣れてきたってのに、目障りよ。」
振り向き指をパチンと鳴らす。二人を囲んでいた魔物の頭上につららが降り注いだ。
「数十匹はいたと思うんだが。……さすが、自己完結型チート魔力。」
そう、正確には魔力それもかなり強いものをを持っていた。
「リョースゲイル、あの魔物肉も捌いてちょうだい。明日のお弁当にするわ。」
「自分で……、できるわけないな、かりこまりました王女様。」
「元、王女だけどね。」
とリンカーラは笑いながら肉に齧り付いた。
「で、俺らは今どこに向かっているんだ?」
「ふっ、海王魔国シーランダルよ!」
「は?」
衝撃のBGMが走る。
それもそのはず海王魔国とは、どこにあるかわからない魔王の領土なのだ!
「……よりにもよって何故?魔王領へ行く必要がある?誰の頼みだ?」
「あの人よ。」
「あの人か。」
あの人、とはいったい誰なのか?
リョースゲイルは呆れ顔を顰める。
「で、なんで魔王領に行くんだって話だけど、あの人に頼まれたってのが八割。」
リンカーラは高そうな巻物を投げる。
広げると中には文章が書かれていた。
『私の愛弟子リンカーラ
この手紙が全てを思い出し成長したあなたに届いていると信じて。
私のもう一人の弟子に会いに来て欲しい。
魔王城は海王魔国シーランダルにあります。
私たちはそこで待っています。
リョースゲイルと一緒に、長滞在になると思うからちゃんとやることやってから来てね。
楽しみにしてます。
あ、先に書き忘れたけどわかるよね?
私のもう一人の弟子、魔王。
倒しちゃだめだよ?
それじゃ改めて待ってます。 貴方の師匠より』
年季が入って少し黄ばんでいる。
「パパが数年間保管していたそうよ。」
「羨ましいな。俺の師匠はこんなことしない。」
「絶対しないでしょうね。」
二人はクスリと笑う。森も深夜にさしかかり静か。
リンカーラは魔法で生み出した藁の布団に寝転ぶ。
「残り二割は?」
「個人的私怨。」
「勇者にか……、お前本当嫌いだよな勇者。」
「吐くほどね〜。」
寝返りをうちながら意地悪く笑うリンカーラ。
消えた焚き火の薪を拾いながらリョースゲイルは失笑する。
そうリンカーラは勇者が大嫌い。
ま、正式には勇者神楽坂日輝という人間が嫌いっぽいけどね。
真面目バカを絵に描いたような性格の彼とそりがあわないそうな。
片付けを終えリョースゲイルはリンカーラの向かい側の岩に腰掛ける。
そして先ほどの手紙をめくりながら呟く。
「海王魔国てどこにあんだよ。」
「さぁ?」
背を向け寝転んでいたリンカーラが振り向く。
なんとも拍子抜けな声。
「おい。」
「でもなんとなく予想はつくわよ。」
リンカーラはうつ伏せになり顔を上げる。そして木の棒を持った。
「リョースゲイル、砂。」と命じればため息を吐きつつ魔法で砂の山を出してくれた。
リンカーラが書き始めたのは世界地図だ。
リンカーラたちの生きる世界は島を除くと円に近い大きな大陸を六分割して成り立っている。魔物の森を中心にまるでピザみたいに分けられた領土一つ一つに王国があるのだが。人間の国は五カ国のみだ。なら最後の一角、森の延長上、山に隔てられた立ち入り禁止地帯が、
「魔王領てこと。」
「なるほど。」
「まあ行ってみないとわからないけど。あいにく時間は有り余っているし魔王領もなかったらその時よ。」
「……。」
「じゃ私は寝るわ。あんたもここで寝る?」
そういいリンカーラは自分の藁ベットを叩く
「……もう一個藁のベット作ってくれ。」
微妙な顔でリョースゲイルは遠慮した。
リンカーラは口を尖らしながらもう一つのベットを作る。
「釣れないわねー。明日の早朝に出発するから起こしてちょーだい。」
そしてリンカーラは寝た。
リョースゲイルは見張りのためにも起きていようと藁のベットに座り直し呆然と星空を眺めていた。
リンカーラ・モルタリア。無能王女と呼ばれた魔法の天才。
リンカーラ・モルタリア
元紅宝国の第一王女兼勇者の婚約者
訳あって実力を隠している。
リョースゲイルとは幼馴染で腐れ縁
16歳/158cm
グレイっぽい銀髪にエメラルドのメッシュ
膝下あたりまである髪を高めにポニテ
碧眼吊り目
ぜひ絵に描いてください。




