六
その翌日に、シギの町では祭りがあった。 観子は前の日に、祭りの当日は店を休むことや、エリセとワニヤは当日、朝から祭りの方へ駆り出されることなどを告げられた。説明を聞く限り、ワニヤは振る舞いの食べ物を用意したり提供する仕事があって、エリセは会場の設営に動員されているということだった。エリセはチロウも連れて行って手伝わせるのだと言った。それなら自分もワニヤの手伝いに、と観子は言いたかったが、昼は家に戻って食事をとるから、留守番と普段通りの家事と、何より昼食の準備を頼みたいのだと言われ、観子には引き受けるほかはないのだった。昼には皆が帰って来て、一緒に食事をした。祭りは午後から始まるようだった。エリセとワニヤには催しの間中仕事があるのだったが、チロウはここで解放された。そしてワニヤは観子に、チロウを連れて祭りを見に行くよう促したのだった。
こうして休日は第一には留守番に、そして次に祭りの見物に費やされたのだった。結局、この二つのどちらについても、快い時間を観子は過ごすことが出来た。留守番には何の不安もなかった。この家でする炊事にも洗濯にも、観子はもうすっかり慣れていた。久しぶりに過ごす一人の時間は、何も考えずにぼうっとただ手を動かしているうちに流れて行った。外からは時々、通りを行く、おそらくこれも祭りの準備に関わっているのであろう人たちの、話したり笑ったりする声が聞こえた。祭りも、この世界の、このシギという町の普段の営みを、遠くから眺めるような気持ちで、観子はこれを楽しむことが出来た。そんな風に、自分自身と切り離してここで行われていることを観察するのは、観子がこの世界に来てからまだ一度もしていないことだった。
祭りは素朴なものだった。その点は観子にも予想がついていた。この世界で、この町で、そんなにも派手で洗練された催しが出来るとは考えにくかったからだ。ところがそのにぎわいは、観子が考えていたようなささやかなものではなく、それをずっと上回るものだった。一体これだけの人数がどこにいたのかと、集まっている群衆を見た観子は思った。後で彼女が知ったところによれば、シギの町だけではなく、ほかの農村からもこの祭りへ出かけて来るものがいるのであって、つまりこれはオドの国全体を挙げての行事とさえ呼び得るものなのであった。町の中心には広場があって、それはまさにこうした時のための場所なのだが、普段は町並みのど真ん中を巨大な生物がついばんだ跡のような奇妙な空白をたたえているこの広場が、今や多数の人間とその活気の受け皿となっていた。この受け皿からは絶えず中身があふれていた。止まることなくうごめいている群衆の間の、いたるところから湧き出ている楽しげな雰囲気は、それ自体手の触れられぬ流体のようなものであるがゆえに、町とか広場とかいう物質的な容器ではこれを保持することは出来ないのだった。
人ごみの中、どこを目指すでもなく、ただ通りやすそうな隙間を見つけてはそちらへ流れるようにして、観子とチロウは歩いて行った。群衆は、広場を取り囲むようにして輪になってわだかまっていたが、その輪にはところどころに切れ目があって、観子たちは不意に、ちょうどそんな風に切れ目となっている場所へと出た。するとその位置からは、そこで催されているものを含め、広場の全体を見渡すことが出来た。広場の中心にはやぐらのようなものが組まれていた。観子にはそれが、人が登るには小さく、またこうした祭礼で用いるのには飾りっ気がなさ過ぎるように見えた。そのやぐらを中心に少し外側を、二十人ばかりの人間が一列に円を作って並んでいた。このものたちはしきりに、肩から紐で提げた太鼓のような楽器をばちで叩いて鳴らしていた。(和太鼓、ではないな。)観子は心の中で言った。(でも和太鼓だって、時間を遡っていけばどこかの段階で、現在ある姿とは似つかないようなものになるはずなんだ。やめよう、こんなところに手がかりを探そうとするのは。)
この楽器奏者たちの輪のさらに外側で、同心のもっと大きな円を作っているものがあった。それは年の頃十歳くらいの子供たちで、全て男だった。人数は五、六十人いるようだったが、彼らが絶えず動き回っているので、観子はそれを正確には数えられなかった。彼らは、太鼓の円の外側を回りながら、その音に合わせて踊りを踊っていた。そしてそのさらに外周を取り巻いている人々は、ほかでもないこの子供たちによる舞踊を見物しているのだった。子供たちの舞っている動作それ自体は、観子の目には少なくとも素朴なものと映り、彼女はそれを高度なものとも簡単なものとも判断をつけられなかった。ただこの数十人の同時に行う動作の一致や調和から、またこうして練り歩くようにして踊り続けながらも彼らの作っている円が崩れないことから、観子にはこれが一定の訓練を積んだ上でのものだということが分かった。観衆、見守っている大人たちの顔にほぼ例外なく浮かんでいる微笑みとは対照的に、子供たちは誰一人として笑ってはいなかった。驚くべき真剣さばかりが見出される彼らのその表情を見て、観子は自分のまだ知らない、この祭りがここの住民たちの間に持っている、強い意味合いの存在を思ったのだった。
しばらくの間、観子たちはこの祭りを見物していたが、そのうち、太鼓の音が止んで小休止となった。踊っていた男の子たちは退場した。そして今度は、さっきと同じだけの人数の女の子が集まって来た。これからこの女の子たちの踊りが始まるようだった。観子は、周囲の人々を見回してみて、何やら食べ物を手にしている人間の多いことに気付いた。串に刺さったそれは、肉だか餅だか練り物だか、一見しただけでは分からなかったが、とにかくそうした食べ物を、多くの人が手にしているのだった。観子はふと思い付いて、隣にいるチロウに言った。
「何か食べる物、もらってこようか。」
チロウは観子の目を見ながら、静かにうなずいた。しかし観子はわざと、「どうするんだ、食べるのか?」ともう一度尋ねた。すると、
「食べ、る!」
こう、チロウは返事をしたのだった。
祭りと聞いて観子が思い描くような、ずらりと立ち並んでどこまでも続く出店というのは、ここにはなかった。それはむしろ炊き出しのようであった。提供される品は限られたものだったし、しかも無料だった。棒のついた大きな飴のような菓子をもらって、観子たちはまた広場の方へ戻った。そこかしこに用意されている桟敷や長椅子や、とにかく腰を下ろして休める場所の中で、空いているところを見つけて二人は座った。そうして並んで、二人は黙々と飴をなめた。広場にはまた太鼓の音が響いていたが、観子たちの座っている場所からは群衆の背中が見えているだけで、何が行われているのかは分からなかった。
(飴だ。砂糖があるんだ。こんなお菓子みたいなものも。でも今日まで気が付かなかったな。こういうのは、貴重なんだろうか、祭りだから特別に、とか。)
観子はそんなことを思った。それは何かを考えているというより、思考がひとりでに動き回るのを、ほったらかしにしているのだった。
(これは公共の行事なんだから公金でまかなわれるんだろう。こういう食べ物も。自分たちの出した金で、自分たちが食べる。まあ、まあ、それは分かる。実務に携わっている人たちは?エリセさんやワニヤさんみたいに。町の人間全員がそうした仕事を担うわけではないなら、その人たちには何か手当てが出るのか?公金から?あの子たちはあの踊りを、いつ練習したんだろう。あれは誰が教えるんだ?あの子たちは普段、何をしているんだ?何か、学校のような、公共教育の場があるのか?公共の…この町の、いやこのオドという国の、財政は?どれくらい金があって、どんな風に使っているのか、私が今から知ろうと思ったら、どうすればいいんだろう?)
急に観子は、この世界に来たことで自分の周りから消えた、かつて当たり前にあった全てのもののことを思い出した。
(財政なんて、それを教えてくれるもの、学校も、図書館もテレビもインターネットもないのに。)
いつまででも考えていられそうなことをこうして考えているうちに、日が傾き、あたりは薄暗くなってきた。広場では踊るものもなく、太鼓の奏者たちも解散してがらんとしていたところに、あの中心に置かれたやぐらだけが虚しく取り残されていた。相変わらずそこには大勢の人がいて、陽気なおしゃべりと笑う声とがどこからでも聞こえていたが、いつからか、そうした人たちがやぐらの周りに集まり始めたことに観子は気付いた。またやぐらとは別の場所、広場のある一角に、姿を消していた太鼓の奏者たちが一塊になって集まっていて、その彼らが、ある瞬間、一斉にその太鼓を打ち鳴らした。
二十人分をひとまとめにした一打は、人々のざわめきを吹き飛ばしながら広場を突き抜けて行った。その拍子はさっきの踊りの時とは全く違い、一打と一打の間には異様な長さの間があった。打たれるたび、この世で唯一の音のように全てをかき消しながら生まれてくる轟音は、次にいつそれがやって来るのかという緊張感によって、間にある静寂を音そのものよりも恐ろしい時間に変えてしまっていた。時々、減衰していく余韻の彼方からは小さな子供の泣く声が聞こえていた。
観子はすっかりこの太鼓に注意を奪われてしまい、辺りが急激に暗くなっていることや、そのことがこの場の異様な雰囲気を助長していることなどには気が付かなかった。そして「わあっ」という歓声が上がって初めて、観子は視線を動かしてその出所を探した。それはあのやぐらだった。やぐらには火がかけられ、かがり火が、周囲にわだかまっている人間たちの頭よりもずっと高いところまで、その身を伸ばしていた。
「キャンプファイヤーだ。」
そう観子がつぶやくと、チロウの「キャン?」という声が聞こえた。
「いい、いい、覚えなくって。どうせ使い道がないんだから。」
苦笑しながらこう言うと、観子は立ち上がって、もっと近くへかがり火を見に行こうとした。しかし歩き出そうとした途端に後ろから腕を引っ張られて、彼女は進むことが出来なかった。彼女は振り返ると、それをした相手、自分の腕をつかんでいるチロウを見た。
「ミコ、駄目。そっち、駄目。」
火が怖いのだと、観子にはすぐに分かった。チロウの目が怯えをたたえていたからというだけではない。チロウはこれまでにも、日常の中の火を使う場面ではいつも、怖がる様子を見せていたのだ。
(調理に使う程度の火なら、怯えながらもどうにか近づけるようだけど、あの大きさとなると駄目なんだ。それとも、初めて目にするせいかも知れない。)
こう考える観子には、いずれにせよ、嫌がるチロウに強要してまであのかがり火を見物したい気持ちはなかった。だから彼女は、チロウが引っ張るにまかせて火から離れて行き、それが視界から消えたところでようやく二人は立ち止まった。
二人は建物に挟まれた細い路地を通って広場から離れ、路地がもっと広い道にぶつかると角を曲がってその広い方の道へ入った。建物が間に入って、広場はそこに集まっている人々やその中心にあるかがり火と共に、二人のいるところからは見えなくなった。まだ聞こえているはずの人の声は、輪郭を失ってぼやけてしまっていた。あの太鼓の音だけが、そこで催されている祭りの面影を辛うじて保っていた。
観子はチロウの顔を、回り込むようにして見た。チロウもそうする観子に目を合わせた。その表情はぽかんとしたもので、何のためにここまで移動したのかを、移動を欲した本人はすでに忘れているようだと、観子にはそう思えた。観子がため息をつこうとした時にチロウが視線を動かし、同時に誰かの足音が、観子の耳に聞こえた。
「やあ。会えるだろうとは思っていたけど、こんな人気のない場所でとは思わなかったな。」
そう足音の主は言った。その人物とは、ミトカであった。
「祭りは楽しんだかい?」ミトカが聞いた。
「ああ。そっちは?」
「うん、まあ。僕は半分仕事みたいなものだからね。いや、それよりも君たちのことだよ。ゆっくり出来たのなんて、今日が初めてなんじゃないか?」
問われて、観子には上手く答えることが出来なかった。
「そう、確かにな。」
「大分お疲れだったと見えるね、これまでのところ。」
しばらく、観子は黙っていた。ミトカも黙って、観子が何か言うのを待っていた。やがて観子は口を開いたが、言うべき言葉が見つかったからというよりは、言葉が出てくるにまかせて、彼女はそうしたのだった。
「なあミトカ。」
「うん?」
「ミトカはここで、働いて、この町で、一人の人間として、自立しているんだよな?」
「そのつもり、というか確かにそのはずなんだけど、どうしてか君にそう改まって聞かれると、自信をなくすんだよね。」
ミトカは冗談めかしたが観子は変わらぬ調子で続けた。
「私は、お前にああ言われたからって、元の世界のことを、すぐにさっぱり忘れることは出来ない。」
「うん、そりゃまあそうだと思うよ。」
「お前も、ユアンも、これぐらいの歳の人間は、ここでは自分の人生を生き始めてる。」
ミトカは「ああ、ユアンね。」と相づちを打った。
「私は、元の世界では、まだ何もしていなかった。」
「うん、そうなんだね?」
「だけど今、こうなった以上、ここでそうするのが普通とされていることは、ちゃんと出来るようになりたい。小さいけど、それが今の私の目標なんだ。成り行きとはいえ、今いる場所で、私なりにやりたいと思えるものを持っていたいんだ。」
「良いじゃないか、素晴らしいことだ。」
ミトカはもう、観子のこういう熱っぽさには覚えがあったので、ここはとにかく観子の調子に合わせておこう、というつもりでいた。
「ミトカ、あの時、出会ったのがお前で良かった。もっと悪いことになる可能性なんて、思えばいくらでもあったんだ。だけど自分の今の状況を、私は楽しいとさえ感じてる。それはお前のおかげだと思う。少なくとも、お前と出会えた幸運のおかげだ。」
しかし不意に投げかけられたこの台詞は、ミトカにとってはあまりにも気恥ずかしいものだった。同時にミトカは、観子がこの真剣な会話に置いている価値を理解してもいたので、これを受け取るに神妙な面持ちを崩さぬよう、彼の全神経を奮い立たせなければならなかった。ミトカの必死の努力のおかげで、観子はそれに気付くことなく言葉を続けた。
「チロウも、そう悪い奴じゃなかったってことが分かったし、な。」
名前が出て、観子もミトカも、チロウの方を見やったのだが、その時、ずっと静かにしていたチロウが急に動いてどこかへ振り向いた。彼は遠くの暗がりの、ある一点を凝視していた。観子もまた、チロウが見つめている先を見た。ほとんど一瞬のことではあったが、観子はそれを見ることが出来た。あのウニヨという男と、この男が背中に添えている手によって、半ば押しやられるようにして一緒に歩いているユアンが、観子たちのいる通りの一方の側から現れ、通りを横切ってまた一方の側へと消えていった。今見たものの意味を観子が考える前に、同じくそれを見たらしいミトカがこう言った。
「ユアンだ。昼間にも会ったんだけど、ずいぶん気が重そうだったよ。何でも、お母さんとあのウニヨって人と三人で話すのを、今日はどうしても避けられそうにないってさ。」
「そうなのか。」と観子は言った。「それで、今から家へ行くんだな。」
彼女の胸はにわかにユアンの心配で一杯になった。誰の助けも望めない場所で、昨日のようなあの痛ましい表情で作り笑いをしているユアンを想像してしまうと、観子は自分の中にさっきまであった明るい気持ちが、みんな溶けてなくなっていくような気がした。ただこの時、観子がその悲しい気分を長く味わうことはなかった。ほかの、もっと恐ろしい可能性と、今ならまだそれを回避できるかも知れないという希望が、観子にそれ以外のことを考えられなくさせたのだった。
「ちょっと待って。あっちにユアンの家があるのかい?」ミトカが驚いて言った。
「ああ、そうだよ。昨日店が終わった後、エリセさんと一緒に送って行ったんだ。」
「それっておかしいな。僕はついさっき、ユアンのお母さんを広場で見たんだよ。もちろん一人でじゃない。あの人はきっと、一人では出歩かないだろう。小間使いみたいな、付き人を連れてた。だけどそれって、今家には誰もいないってことじゃないか?ほかの誰かならともかく、あの二人が二人だけで家へ行ってどうするのか、ちょっと腑に落ちないというか、」
観子は目を丸くして、最後まで聞いていることも出来ず、立ち上がった。
「チロウ!」
言うが早いか、観子は駆け出した。チロウもすぐ後を追った。背後で、「ミコ!待ってよ!」というミトカの声が聞こえた。
「ウニヨさん、そんなに急かさないで下さいな。家へ着くまでに転んで怪我でもしたら、お話しするどころではなくなってしまうわ。」
さっきからもう何度も繰り返している同じ抗議を、ユアンまた口にした。
「はは、ついつい、焦ってしまうな。」
ウニヨはこう答えたが、ユアンは、相手の目には自分の姿が見えていないのではないか、自分の声など聞こえていないのではないかという、これもやはり何度も感じている同じ印象をただ受け取っただけだった。今日、母親と、このウニヨと三人で同席することはどうやら避けられそうにないと、ユアンはあきらめていた。そして出来る範囲で、想定される不愉快な時間を耐え抜く覚悟をしてさえいたのだが、さも浮かれたように勇み足となっているこのウニヨの姿は、ユアンを早くもうんざりとした気持ちにさせていた。しかし彼女はこの後に待っているものの方を考えようと努めた。結婚という、当事者である自分が一抹の可能性すら感じていない目標に向かって、ウニヨと母親が見せるであろう、婉曲的なようで露骨な、迂回をしながらもその気は急いているような、そういう見るも不快な計略の数々を、まるで気付かぬ振りをしてやり過ごすためには、相当の心構えでいなければいけないとユアンには思われたのだった。家へ着いた時に即座に感じてもよかったはずの違和感が、実際には遅れてやって来たのは、あるいはユアンがこのような彼女なりの心の準備のために忙しくしていたせいかも知れなかった。
二人ともが家の中へ入り、ウニヨが後ろ手に戸を閉めたところで、ようやくユアンはおかしなことに気が付いた。
「お母さん?」
ユアンは呼んだが返事はなかった。「お母さん!」そう再度呼びかけながら、奥へと歩いて行こうとするユアンだったが、不意にその腕が強くつかまれ、彼女は横の客間に引っ張り込まれてしまった。それをしたのはウニヨだった。彼はユアンの背後で静かに客間の戸を開け、そして彼女を引きずり込んだのだ。突然の乱暴に抗議すべくユアンが振り返ると、ウニヨは今度は馬鹿に丁寧な手つきで、部屋の戸を閉めているところだった。
「何をなさいますの?ウニヨさん。」
しかしウニヨは返事をせず、戸を閉めた格好のままでいた。ユアンはわずかに怒りを覚えながら言った。
「お母さん、いないみたいだわ。どうして今になって出かけたのかしら。私、ちょっと近くを探しに行きますわ。」
するとウニヨが口を開いた。
「いや、留守で構わないんだ。」
これだけを言うとまたウニヨは黙ってしまったので、ユアンには彼の言葉の意味するところは分からず、余計にいら立ちながらこう言ったのだった。
「構わないことありませんわ。そもそも三人でお話しするつもりだったのでしょう?これでは家に来た意味がありませんし、それに私のような未婚の娘の家に二人だけでいるなんて、ウニヨさんの名誉に障りますわ。」
この最後の部分を聞くと、ウニヨは顔を上げてユアンを見た。ユアンも自分のこの発言にははっきりとした意図を持っていたので、ウニヨの目を、彼女はまっすぐに見返した。
「僕もまた未婚の男子であるからね。例えば、特に、当事者の間で将来的な合意が持たれている場合、こうして二人でいることが名誉を損なうものとは、必ずしもならないんじゃないかな。」
ユアンは呆れた。この男は自分の惚れた相手は自動的に自分に惚れてくれるものと、そう本気で思い込んでいるのだろうか。むしろこの男の言動は、相手がすでに自分を愛していることを前提としてはいないか、ユアンにはそうとさえ思えた。自分の意志や人格を無視していると思わせる、こうした態度は、ユアンが何にもまして許せないものだった。
「申し訳ありませんが、これはウニヨさんのおっしゃるような場合とは全然違っていますわ。私たちの間では、そうした合意はおろか、それに先立つ何かの話さえ、これまでに交わされたことがないのですから。」
ユアンはより決定的な言葉を口にしているつもりだったが、一方のウニヨにはその言葉の重みを真摯に受け止めている様子がまるでなかった。ユアンは頭に血が上るような気がした。
「第一、今日はそれこそ、そんなお話をなさるつもりだったのではないのかしら。それをこんな先走った乱暴で順序を取り違えて、これまでせっせと遠回りをしてきたのが、台無しですわ。」
これはもはや罵倒だと、ユアンは言いながら自覚していた。怒りを覚えているためと、失礼な行いをしている自覚とのために、彼女は今非常に緊張していた。「いや、これは、意見を交わすところではないよ。」とウニヨが言った時も、ユアンは相手が何を言っているのか分からなかった。それから始まったウニヨの話を聞くにあたっても、ユアンがそれを理解するために必要な冷静さを取り戻すまでには時間がかかった。というのも、たとえどれだけ冷静であっても素直には飲み込めないような事実が、そこにはあったからだ。
ユアンたちのいる客間は、応接の間とは別に設けられたもので、客人がそこで休んだり、もしそうしたければ宿泊することも出来るように寝台までもがしつらえてあった。ウニヨが、ぽつりぽつりと、語りながらその言葉に合わせるようにして一歩、また一歩と前へ出て来るために、それから遠ざかるようにユアンは自然、後ずさりをしていた。そしてユアンは寝台のあるところまで来ていることに気付かず、さらに後ろへ下がるつもりで、思わずそれへ腰かけてしまった。見上げると、うつむいたウニヨの顔があったが目は合わなかった。ウニヨの視線はもっと下を向いていた。
「これは、互いの思惑をすり合わせる場ではない。話はついているんだ。僕と、君のお母さんとの間でね。君を妻にしたいという僕の意思に、君のお母さんが応えてくれている。僕は、結婚することで僕が君や君のお母さんに約束できる幸福がどんなものになるか、具体的に提示した。そして君のお母さんは納得した。」
約束しうる幸福の具体的な提示。それが金銭の話であることはユアンにはすぐに分かった。もとより母にあるのはそのことだけだと、彼女にはよく分かっていたのだ。そんなこと、と彼女は思った。
これで話が終わったとはとても思えなかったが、当のウニヨは黙りこくってしまい、不自然な沈黙が続いた。その意図をユアンが量りかねていると、突然何かが覆い被さって来て彼女を寝台に押し倒した。それはウニヨだった。ウニヨは馬乗りになってユアンの服に手をかけた。「やめて!」とユアンは叫び、ウニヨとの間に自分の腕を割り込ませて力一杯押した。するとバチンという大きな音がした。何が起こったのか、ユアンには最初、分からなかった。ただ、顔の半分を襲っている不思議な感覚と、キーンという耳鳴りと、一時真っ白になった視界が徐々に元に戻ってきてそこに見えた、自らの右手をぼうっと見つめているウニヨの姿とを、総合的に考えてみて、自分はウニヨに打たれたのだということがユアンには分かった。
「私、あなたを絶対に許さないわ。」ユアンが、震える声で言った。
「僕を、というところが違う。」
ウニヨは妙に落ち着いていた。それがユアンには癪だった。こんな蛮行に及ぶことも、その際落ち着きを失わずにいることも、平素のウニヨに対するユアンの認識を裏切るものだった。ユアンはウニヨをもっと小心の人物と考えていたのだ。そのウニヨがかくも淡々と、自分に対する侮辱をやってのけたことが、ユアンを怒らせていた。しかしウニヨの次の言葉が持っていた、その新鮮な衝撃が、怒りを含めたユアンの全体を一気に凍り付かせた。
「今夜のことを提案してくれたのは君のお母さんなんだよ。この国では姦淫の罪は重い。僕はいいさ、自分の国へ帰ればね。しかし君と君のお母さんは汚名を着ることになる。ところで、僕たちが夫婦になるならば、この罪は問題にならなくなる。というより、罪自体がなくなる。妙案だ。お母さんが同意してくれたからこそ、この手が使えるんだ。合意は、なされている。あとは君が協力してくれればいい。」
ユアンは驚きに目を見開いていた。ウニヨが続けて「さ、お母さんを幸せにしてあげるんだ。これがその手段だよ。」と言った時、彼女のその目から涙がこぼれた。最初に彼女は「あ、あ、」とそれだけを声に出したが、後は声を殺し、肩を震わせて静かに泣いた。
ウニヨがこの瞬間に寄せていた期待は大きかった。ウニヨは、今日まで自分の意図に応じないばかりか自分を正面から相手にすることさえせず、ひらりひらりと身をかわし続けてきたユアンを、本人の知らない間に逃げ道を塞ぎ、ついに捕らえることの出来るこの瞬間を、確かに心待ちにしていたのだ。果たして待望の瞬間は訪れた。しかしウニヨが目にしたのは、彼が期待していた以上のものだった。一人の、美しくも気丈な女性の、その心のくじかれ折れる様が、それをしたのは自分の富と力なのだということが、そしてもはや自分の懐中のほかにこのくじかれた女の収まるべき場所はないのだという事実が、自らの気分にどんな作用をもたらすのかを、ウニヨはこの時まで知らなかった。ウニヨはユアンを見た。自分の自由になるべく置かれた、肉で出来た玩具がそこにあった。
(そう悪いことでもないと、すぐに分かるさ。)
こうウニヨは心中でつぶやいた。彼は据わった目をしてユアンを眺め、炎が揺らめいたり蛇が這ったりするように、何かが自分の中でうごめくのを感じていた。
駆け出してすぐに観子は、日が沈んだ後のこの町で、昨日一度行ったきりの場所を目指して急ぐことの困難に気が付いた。暗い夜道も、不慣れな町並みも、舗装のされていない土の地面も、全てが邪魔をするように観子には感じられた。見ると、チロウはそんな困難など感じていないようだったし、ミトカにも慣れた様子があった。しかし目的の場所を分かっているのは自分だけなのだ、そのことがもどかしく思えて、観子はとにかく、急げるだけ急いで先導しようと努めた。
ユアンの家が見えて観子が「あれだ!」と叫ぶと、チロウは走る足に力を込め、物凄い速力で一気に観子たちを置き去りにしてしまった。ユアンの家の戸口に立ったチロウは、扉を音を立てずに少しだけ開けた。そして中でかすかに物音がしたのを聞くと、すぐさま家の中へ入った。家は大きく、部屋はいくつもあったが、彼は迷わずある一つの部屋を、ユアンとウニヨのいるあの部屋を目指して駆け付け、思い切り戸を開けた。
部屋には二人の人間、すなわちウニヨとユアンがいて、ユアンは手で顔を覆って泣きじゃくっていた。ユアンの衣服ははだけていて、それをせっせとはだけさせているのがウニヨだった。寝台に仰向けになっているユアンに覆い被さるようにしていたウニヨは、背後で勢いよく扉が開いたため、振り返ってそちらを見た。そこにチロウが立っていた。この二人には面識がなかった。ウニヨはチロウの身なりを見て、そう地位のある人間ではなさそうだ、と考えた。人間を、まずそのように測るのが彼の習慣だった。一方チロウはウニヨだけでなく、ユアンをも観察した。ユアンの半ば脱がされた服を、ほとんど露わになっているその胸を、チロウは見た。そして次に、それをしている人間を、ウニヨを見た。寝台から立ち上がり、咳払いをしながらチロウの方へと、何かかしこまった言葉遣いで「初めてお会いするように思うのですが、思い違いだったら失礼。それで、私の知る限りあなたはこの家の住人でもなければ、招かれた客でもないはずですが、」などと言いながら近付いて来るウニヨを、チロウは見た。
チロウは自分の目撃した場面を観察し、その上で、この状況の意味を正しく理解した。しかし彼がそこから導き出した行動は、彼なりには正解であったとしても、ほかの人間なら誰一人として肯んじ得ないようなものだった。不慣れな人間の社会で、慎重さと洞察だけを武器にして、これまで上手く周囲に溶け込んできたチロウだったが、ここに来て彼は勘違いをしたのだ。『こうしたことが、まかり通るのだ。』それが彼の抱いた誤解だった。この誤解は、彼の今日までの慎み深い暮らし振りを、爆発を待っている強い内圧へと転化させ、その上でそこに火を点けてしまった。彼は今、言わば、人間らしく振る舞ってきた反動で動物に戻ってしまったのだ。
まだ何かをしゃべっているウニヨの目を見ながら、チロウは、何かを言おうとするかのように口を開けた。チロウには何も言うことなどなかったが、そうすれば相手の注意を惹くことが出来るのを、彼は知っていた。ウニヨがチロウの口元に注目している間に、チロウは一歩前へ踏み出した。それで彼は十分な距離に、ウニヨの顔に手が届く距離に来た。
ほんの一瞬、一度だけ、筋肉を緊張させ、チロウは左腕を跳ね上げるように動かした。途中で肘を基点に前腕を鞭のようにしならせ、手の平を返し、手を開き、指先で、なでるようにして、ウニヨの顔を叩いた。いずれかの指がどちらかの、あるいは両方の目に触れて、「うっ!」と言いながらウニヨはのけ反った。もうチロウは次の動作に入っていたのだが、こうしてウニヨが目をつむって動きを止めたことはチロウに都合が良かった。何より体が正面を向いたままなのが良かった。チロウは、そのおかげで何の困難もなく、相手の股間を蹴り上げることが出来たのだから。力まず素早く打ち上げた足の甲が、相手の恥骨に当たるのをチロウは感じた。その間に挟まれているものがどうなったかは、ウニヨの反応が教えてくれた。
「うーっ!うーっ!」ウニヨはうずくまると、こういうえずくような声を上げた。
チロウは後少し、手を加えておきたいと感じていた。彼は、相手を全くの行動不能にするか、そうでなければ少なくとも行動しようという意思を完全に失くさせておきたかった。チロウはおもむろに身を屈めると、ウニヨの髪をつかんで顔を上げさせようとした。ところがいきなり目を突かれて怯え切っているウニヨは、今一度至近距離で顔を晒すことを怖れ、まずいことに、さらなる被害から自身を守るつもりで、チロウに向かって手を突き出してしまった。
チロウは向かってくるウニヨの手を口で受け止めた。つまり嚙み付いた。ウニヨは、全然予想していなかった種類の新たな激痛の追加により、痛みのためとも驚きのためとも言い切れない、変わった悲鳴を上げた。
「ううわああ!」
反射的に手を引き抜こうとするウニヨだったが、指を嚙まれているせいで、引っ張った力がそのまま痛みとなって襲ってくる。それが分かるとウニヨにはもう出来ることがなかった。チロウはチロウで目一杯の力で噛み付いていて、彼はいっそ指が切れるまでそうしているつもりだった。しかしずっと聞こえていたウニヨのうめく声が変化してきて、どうやら相手が泣いているらしいことに気付くと、チロウはもう大丈夫だろうと判断をして噛んでいた手を放した。
ウニヨは小さな塊になってすすり泣いた。これで相手を無力化したと、チロウは感じた。チロウはそして、ユアンの方を見た。ユアンもまたチロウを見ていた。はだけていた胸元は今や隠されていたが、チロウの脳裏には彼がこの部屋に入って来た時のユアンの姿が今もあって、それが現に目で見ている光景以上に、彼の意識を刺激していた。
目の前でくり広げられた突然の、かつ一瞬の暴力沙汰の、その勝者の姿を見つめていたユアンだったが、自分を見るチロウの目つきに何かを感じて、彼女は思った。こうして、このチロウはウニヨがまさに及ぼうとしていたその行為を中断せしめたわけだが、彼がそれを妨害したのは、もしや彼自身がそれを行うためだったのではないか。彼は被害者を救ったのではなく、獲物を横取りしたのではないか。このようなことが、ユアンの頭には浮かんだのだ。彼女はそれを、考えたとは言えなかった。ただチロウの不思議に力強い目つきと、何かをし終えたというより何かをしている最中であるような、彼の放つ緊張感を見ていると、ユアンには自分の頭にあるこの可能性は、ほかのものよりも、あり得そうなことと思えるのだった。
実際この予感は当たっていて、チロウはこの状況を、ただ好機としか感じていなかった。チロウとユアンには一応の面識はあったが、これまで両者の間には、会話と呼べる次元の接触すらなかった。だが今のチロウには関係のないことだった。邪魔者はつつがなく排除した。相手の女にも逃げ出す素振りはない。彼にはこれで十分だった。しかし客観的には不十分だということが彼には分らなかった。それを見落としている当の彼には、自分が何を忘れているのかは分からなかった。彼は、チロウは、観子の存在を失念していたのだ。
チロウが凄い速さで行ってしまった後を、観子とミトカは大急ぎで追った。まだ距離があるとはいえユアンの家はもう見えているのだから、到着はそうも遅れないはずだった。
「チロウ、一人で大丈夫かな?」
しかし横を走るミトカがこう言った時、観子はまさにそのことに不安を覚えているところだった。いずれにせよ、それはすぐそこに迫っている未来の話だった。観子には可能な限り速く走るという、一つのことしか出来なかった。
家へ着き、すぐそこに扉の開けられていた客間へと飛び込むと、その姿を見て観子は思わず「チロウ!」と叫んだ。聞こえていないはずはなかったが、チロウは振り向かなかった。観子はそこにうずくまっているウニヨを見た。それをしたのがおそらくチロウだということは、容易に考えられた。チロウが何をしたのかは、それについては確認をする必要があると観子は思ったが、それよりも彼女は今、チロウの様子の方が気になっていた。反応なく、こちらに背を向けたままのチロウの向こう、寝台の上で自らを抱くようにしているユアンを、観子は見た。ユアンもユアンで観子たちの到着にまるで気が付かないかのように、その目をチロウから離そうとしなかった。そのユアンの目が、普通ではなかった。観子にはそのユアンの目が、観子の位置からは見えない何かを、その何かの異常さを、反映しているように思われた。考えるより早く、観子はチロウの前に割って入り、自分の目でユアンの見ていたものを確かめた。
「チロウ!」
もう一度観子は名前を呼んだ。と同時に正面から彼の目を見た。それを見るのが二度目だったおかげで、彼女はチロウの目に燃えているどろっとした光の意味をすぐに理解した。観子は視線を下へ向けた。そこに、チロウの股間に、予期した通りの不自然な隆起を彼女は見出した。
「チロウ!駄目だ!おい、チロウ!」
観子はチロウの肩を両手でつかんでぐいぐい揺さぶりながら言った。こんなやり方が上手く行く確証は全くないということが、不思議とこの時の観子の頭には浮かばなかった。観子の行動は単純に、直感によるものだった。そしてそれは結果を伴った。
「チロウ、大丈夫、だな?」
あのどんよりとした発光がなくなり、チロウの目がいつもの透明さを取り戻すのを、観子は見た。彼女が「お前、怪我してないか?」と聞くと、チロウはゆっくりとした発音で「大丈夫。」と答えた。
観子は今度はユアンに駆け寄って言った。
「ユアン!大丈夫?何かされてない?チロウはもう心配ないから。ユアンは?何ともないの?」
ユアンは半ば放心状態だったが、観子の呼びかけには反応し、こう答えた。
「うん、大丈夫。ミコ、ありがとう。来てくれたのね。どうして?」
「ユアンとこの人が家の方へ行くのを見たんだ。だけどミトカがユアンのお母さんを広場で見たって。家には誰もいないんじゃないかって。それで、私…!」
これを聞くと、ユアンは微笑み、こう言った。
「そうだったのね。ミコ、ありがとう。」
その微笑はいつもの彼女らしいもので、いつでも彼女を特徴付けている明るさと優しさをこの笑顔の中に見つけ、それで観子はようやく安心することが出来た。また、ここへ来ることになった経緯を口にしたことで、観子は今まで失念していたウニヨの存在を思い出した。彼女が振り向くと、ちょうどミトカがウニヨに声をかけているところだった。
「あの、大丈夫ですか?うわ、何か怪我してます?痛そうだなあ。」
「当然の報いだわ。」
こう即座に口を挟んだのはユアンだった。
「お気の毒さま、痛い思いをして。けれどウニヨさん、あなたが人から奪おうとしたものの重さを差し引いた後で、あなたがそれを痛い痛いとおっしゃる権利が、どのくらい残っているのか疑問ですわ。」
ユアンの言葉の調子で、観子には彼女が怒っていることがすぐに分かったし、またここであわや起こりかけていた事態が何ものであったのか、それが自分の悪い予感とそう違わなかったことが察せられた。
「ウニヨさん、よろしくて?それが未遂に終わったということは、行われつつあった蛮行そのものが消えてなくなるということではありませんわ。あなたのおっしゃる通り、この国で姦淫は重罪です。それを強要しようとしたものが受ける罰の重さがどんなものか、あなた自身の身でお確かめ下さいまし!」
こんな風にユアンが言いたいことを言い切った後も、ウニヨはまだ黙ったままうずくまっていた。しばらく誰も何も言わなかったが、待ち切れなくなったユアンが何か言おうとした時、ウニヨが小さな声でぶつぶつ言っているのが聞こえた。
「失礼、何て?」
ミトカが聞き返すと、ほとんど同時に、ウニヨは顔を上げてチロウをにらみ付け、こう叫んだのだった。
「許さない!許さないからな!お前、こんな風に人を怪我させて、ただで済むと思うなよ。訴えてやる。訴訟だ!この傷害は必要以上の、道理のないものだ!お前がやり過ぎていることは誰の目にも明らかだ!この国の法の下で、償いをつけさせてやる。絶対にだ!」
五、六と二本新たに投稿しました。この作品は次回の更新で完結する予定です。次の投稿は来年一月ごろになると思います。後少し、お付き合いください。