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永遠の欠片  作者: 匹々
18/21

白く冷たく軽く暗く

広間にメオがいた。

「あ、待っててくれたんだ」

「まあ」

アタシに気づくと帽子を押さえてこちらを見た。

「雪、気づいた?」

窓を指さすと首を巡らして頷く。

「珍しい…どころじゃないですね。こんな季節に降るのは初めてだと思います」

もうすぐ真夏。例年ならボーアはほとんど晴れている。

「雪が降るような気温でもないしね」

「意外。ルカは気温なんてわからないと思ってました」

「この前も言われたな同じようなこと」

メオが視線をこちらに戻す。

「改めて、久しぶりですね」

「久しぶり。最後に会ったのっていつだっけ」

「ヴァルセの試合を見に行った時でしょうか。ブクヘンが出た」

「もう覚えてないや」

学生時代の友達。今は丁軍に所属しているらしい。特殊な事情でボーアにとどまることは少なく、アタシはボーアにほとんど来ないのもあってしばらく会っていなかった。

「それにしてもよくわかりましたね。眼鏡なかったのに」

「そうかな」

「ないと印象変わるって言われます」

今のメオは眼鏡をかけて、昔とは違う丁軍の帽子を被っている。たしかに印象は変わるかもしれない

なんとなくわかっただけだからうまく説明は出来ない。かく言うアタシもバンダナがないと誰だかわからないとか言われる。

「メオも温泉来るんだね。あれ、オズファにいたって聞いてたんだけど、違った?」

「今までいましたよ。帰って来たんです」

なんだかマホがそんなことを言っていたような気もする。

「あ、そうだ。学校やめるってなったときに会いに行ったんだ」

「会いましたか?」

「いや、会えなかったんだけど。お使いで台車運ばされてたのがそうじゃない?」

「やっぱり変なところ覚えてる」

しばらく思い出話や会っていなかった間の話をした。

「ところでなんで一人でこんなところにいるの?」

「…せっかく近くに寄ったので、温泉に行ってみたかったんです」

「いいの?それ」

「連絡はしたので」

そういえば連絡手段があったな。アタシは使わないから忘れていた。

「マホ怒ってない?」

メオが視線を逸らす。

「…それはそうと、転んだんですか?」

さっきぶつけた肘が赤くなっている。

「バレたか。雪が降ってたから、早く教えてあげようと思って」

「…気をつけてくださいよ」

何とも言えない表情を見せる。アタシは昔からよく転んでいた。

二人で玄関の方を見る。雪はまだ降っているらしく、暗い。

「早く合流しないとじゃない?」

「さっき連絡がありました。真っすぐ帰ります。とはいっても、雪だとバスが止まるかもしれないんですよね」

「これくらいなら大丈夫じゃない?」

この季節に雪が降ることがないからわからない。

「つめてっ」

何故か頬に飛んできた。


「久しぶりですね」

軒下に出て空を見上げていると後ろから声をかけられた。

真っ白な外套と顔を覆う仮面。

「エル」

なぜか蒲焼の皿を持っている。この地域の特産品。

それを食べるわけでもなくメオに差し出した。

「あげます」

「いらない」

「どうしたのそれ?」

「向こうの売店で買ったんですけど」

「…自分で食べなよ」

未だにエルのすることはよくわからない。

手に持った蒲焼を眺めているエルに訊いてみる。

「エル、馬車が動いてるかどうかってわかる?」

「わからないです」

まあダメ元だ。期待はしていなかった。

「今日は何しに来たの?」

「君たちはどこへ行くんですか?」

「…マホたちと合流したいんだけど。できるだけ早く」

「そうですか。では」

そう言うとエルは背を向けて歩き去った。

「…何をしに来た」

それを見送ってメオが呟いた。

「知ってるの?」

「何度か会ったことがあります」

「へえ」

既にエルは見えなかった。

雪が舞う中、遠くの空に稲光が見えた気がした。

調子乗るとすぐ転ぶ。そのわりに未だに大きな怪我はしていないのがまた

「痛い目に遭わないと学べないのに、痛い目に遭う機会すらなくなってるんだよ」

背中の傷は残った

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