恢網の民・罰の檻
「これ…学校のときと同じ」
呟いて首を傾げる。口をついて出た自分の言葉が腑に落ちなかったかのように。
「学校…?」
手から運んでいた板材が落ちた。
周りの人々はベスが立ち止まってなにか独り言をつぶやき始めたとき、少しだけ手を止めたが、すぐに作業に戻った。
蹲って頭を抱えだしたときは苦しんでいるように見えたから、何人が駆け寄った。
「おい!大丈夫か?」
突然立ち上がったベスは、それらを無視して駆け出して行ってしまった。誰も追いつけなかった。
呆気に取られていた人々は、やがて持ち場に戻って作業を再開した。
あの形相がしばらく頭から離れなかった。
ベスは夜に一人で湖にいた。
また突然、足を止めた。
懐から四角いものを取り出した。それがタダと呼ばれている携帯連絡機であることを思い出した。操作すると、前面に記号が現れる。
帰る
たったそれだけ。発信者の番号に見覚えはない。
ベスは大きく息を吸った。
疲れた様子がなかった。しばらく走り続けていたにもかかわらず。運動音痴に定評のあるベスが。
周りを見回して、歩いて来る人影に目をとめた。
夜の湖は静かだった。2人はしばらく何も言わなかった。
「……………チェオ」
沈黙を破ったのはベスだった。
「…それってどういう表情のつもりなの?」
「…ベス…?」
チェオの表情はほとんど動かなかったが、声には驚きが滲んでいた。
「なに?チェオ」
「…どうして?」
「ぼくがききたい」
2人はお互いに状況を話した。
さっき急に思い出したこと、なんとなくここに来たこと、同じだった。
つまり、どちらも何もわかっていなかった。
「…おかしい」
「なにが?」
「全部」
正確には思い出せないが、少なくとも60年以上経っている。
「チェオ、誕生日は?」
チェオが年月日を答える。
「…二日違いだ。また」
「あのとき、私たちは…死んで」
「ただ死んだのとは違う」
輪廻説というものがある。死んだ者の魂は巡ってまた別の命になる。誰が提唱したのかは不明だが、広く信じられている。
ただ死んだだけなら2人の魂が巡っただけ。
2人は巡るはずの魂がないのだ。ないはずなのだ。
「願いは?」
「少なくともきみのは叶ってる。ぼくは何を願ったのか思い出せない。…多分、認識ごと変えたから」
戦争は終わった。世界はその前とは変わった。彼らの願った世界に近くなった。
「そんなことをできるのは悪魔以外に思いつかない」
では何故2人がここにいるのか。
「…。私たち、前回の記憶があるし、名前も同じ、見た目も…ほとんど変わってない。…ベスが願ったの?」
「…断言はできないけど違うと思う。そんなこと…考えたことなかったはず」
「…」
「…そうだとしたら、悪魔はぼくたちの魂を要求なんてしないとおもう」
「…それもそうか…。…ごめん」
「いいけど。…わからないね」
2人は頭を捻った。
「…誰かが一緒にいた…?」
***
「…そんな気がしてきた。そいつらが願ったとしたら」
XXが切るとXXが呻く。
「複数だったっけ?思い出せないな…。何を願ったのかも」
誰かがいたことしか思い出せない。最後にどうなったのか思い出せない。
「でもそんなことを願う理由がわからないんだよね」
「何人いたのかな?私は何を願ったのかな」
「…魔物と…禁域…あとは精霊…魔法もかな…」
***
「きっと言葉はそうだ」
今使っているのは生まれてから習った言葉。
「この言葉が一切通じない人間に会ったことがない。どこでもこの言葉が使われている」
記憶の中ではそうではない。そして思い出せる限り今の言葉は使われていなかったはず。
戦争が終わった後何があったのか知らないが、新しい言語が作られて全員がそれだけを使うようになったというのは不自然だ。
XXが説くとXXが頷く。
「君が言うと説得力あるね」
***
「そういえば、魔法は使える?」
XXが問うとXXが答える。
「いや」
「やっぱりか」
「精霊には嫌われてるみたいだな」
「無理もないか」
***
「悪魔が魂を手放す理由がわからない。この世界の側に悪魔が把握できていなかった仕組みがあり、それが働いたと考える」
XXが述べるとXXが笑う。
「なんの影響ですかそれ」
***
「で。…どうするの?」
真実がどうあれ。
チェオの言葉にベスは少し考える。
「どうするべきだと思う?」
問い返されたチェオは少し黙ってから答える。
「なんとなく、だけど」
それを聞いたベスは苦い顔になった。
「やっぱりか」
同じ結論になった。別行動をとることになった。
我々は一緒にいてはいけない
特にきっかけはない
輪廻説も少し扱いが難しいかな。解説も
伏字は文字数関係ない
もう少し形式を考えようかな。繋がりのある話どうしくらいはタイトル真面目に考えるとか




