誰のせいで
「おれを…愚かだと思うか?」
兵士は2人に訊いた。
カウズは何も言わなかった。ケフは何かを言った。
「え?」
聞こえなかったらしい兵士に少し大きな声でケフはもう一度言う。
「何故だ?」
「…おれはあいつを…犠牲にして生き延びた」
「それがどうしたんですか?」
カウズの言葉に兵士は面食らったような顔をした。
不思議そうな顔でカウズは問う。
「それを誰かに訊いて、どうしたかったんですか?」
立ち上がろうとして、兵士は呻く。
「どんな答えが欲しかったんですか?」
痛みを堪えながら、己を見下ろすカウズを睨む。
「…フッ」
しかし不意に吹っ切れたのか自嘲気味に笑って目線を下げる。
「あんたの言う通りかもな…。こんなことを考えたってなんの意味もない。一緒に死んでいたところで喜びはしなかっただろう」
目を閉じた兵士に2人は背を向ける。
カウズが戻って来た。
「二人が助かるのは無理だったと言いました?」
目を開けて頷く。
「ボクは最初の段階で気づいたけど、まだ荷物をまとめ終えていなかったから、後回しにしました」
「私は面倒だから後回しにしろと言った」
兵士はカウズを見て、ケフを見た。
腰の銃を抜いてカウズに向けた。
「この…ひとごろしっ」
銃声が響いた。
兵士の死体からカウズがグルクアを取る。後ろでケフの足音がした。
「どうだった?」
「あった。使えそうだぞ」
ケフがグルクアを提げて見せる。
「よかった」
「あの兵士は、死ななければならなかったのか?」
「どうしたの急に。殺さなきゃボクたちが殺されてたんだよ」
ケフは少し考えて言葉を紡ぐ。
「私がいなければ、あの轢き殺されたほうのだけでよかったはずだ」
「見てなかった?殺したのはボクだよ」
「それはわかっている」
ケフが黙るとカウズは少し笑う。
「一人目を殺したのは戦車、それを運転してたやつら。ボクたちは見殺しにしただけ。二人目は囮にしただけ。そもそもボクたちが助けなかったら死んでただろうけど。それで二人目を殺したのはボクだよ。グルクアが欲しかったから」
「関係なくはない」
カウズは笑みを深める。
「でもボクたちはグルクアがないと生きてはいけない。それも二人分。なんでそれが必要になったんだっけ?」
兵士と一度別れた後に気づいた。
「新品を買ったのに、二本とも折れた。あの店主には次に会ったときにはちゃんとお礼をしないとね」
「金をケチったからだろうが」
「ボクは金に余裕がなかったんだ。詐欺にあったから。誰が悪い?」
「さあな」
「ボクは任務があるから、なにがなんでも街を出なくちゃいけなかったんだ」
「こんなこと考えたところで無駄なことがよくわかった」
カウズは鼻歌を歌いながら頷く。それをケフは睨む。
「ところで、何故今朝挨拶を返さなかったんだ?」
「前も同じような話したと思うけど」
「話を逸らすな」
「一人で遭難するのと二人で遭難するのってあまり危険度は変わらないらしいよ」
「…」
「でも誰か一人が助かる確率は人数が多ければ多いほど上がる。不思議だよね」
「二度と組まない」




