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永遠の欠片  作者: 匹々
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煙る魔鏡・暮れる軌条

昔話でもしましょうか

テナが目を覚ます。

側で作業をしていたユタに尋ねる。

「今何時?」

ユタは無言で置時計を目の前に持ってくる。それからまた作業に戻った。

テナは起き上がって部屋の扉を開ける。

椅子に座ったとき、玄関からフヅが入って来た。

「平気なんですか?」

「多分」

「何か食べられますか?」

テナが頷くとフヅは台所に行く。

待つと、温めた飯を持ってきてテナの前に置いた。

フヅがテナの向かいに座ったとき、ユタが部屋に来た。

「気がついたら呼べと言ったはずですが?」

フヅの言葉にユタは顔も上げずに答える。

「今行こうと思ってたんだ」

「呼ばれても本人が部屋にいなかったら意味ないでしょうが」

ユタも座る。

「なんでユタに任せたの」

「薬を取りに行ってたんです」

「なんだかんだ言って心配性だよな」

ユタの言葉にフヅが憤慨する

「逆に、お前は心配じゃなかったんですか」

「俺、落ちたのせいぜい2メートルでしょ?」

「頭を打ったんですよ?報せを聞いたときは肝が冷えました」

「医者は?」

「問題なしと」

「目覚めるまでいませんでしたねえそういえば」

「暇じゃないんでしょ」

ユタが残りの皿をフヅのほうへ押しやる。

「学校は?」

ユタはテナを見ている。

「また新しく銃の使い方を教わったよ」

フヅがわかりやすく顔を顰める。

「ひっどいものですねえ」

「全く」

ユタは席を立ちながら続ける。

「人の殺し方なんて他人から教わるものじゃないだろうに」

部屋に向かってユタが見えなくなるとテナとフヅが顔を見合わせる。

珍しく同意したと思ったらあれである。

「どちらかというと殺されないためのなんだけど」

「そこでもないです」

テナの呟きにフヅが突っ込んで残された野菜を食べ始めた。


戦争は決着がつかないままもうすぐ100年目になる。

こんな田舎でも兵教育をするほどらしい。

子どもに殺し合いをさせることの残酷さをフヅが嘆いていると部屋の扉が開いた。

「じゃあ大人が頑張れ」

「…お前はつくづく生意気なガキですねえ。今のは腹立ちました」

「フヅならできるだろ」

「俺をなんだと思ってるんですか」

「そうだよいくらなんでも、戦局を変えるのは時間がかかるよ。5人くらいはいないと」

「さりげなく人を兵器呼ばわりしないでください」

「で?できたの?」

テナがユタの持ってきたものを見る。ユタは机の上に広げてみせる。

「悪くないですね」

「これは?」

テナが指さした部分の空白は、悪魔の記号が入る部分だった。

「悪魔の話は?」

「学校で聞いたけど」

「あれは教わってないようなもんだ。おい」

ユタが顎でしゃくるとフヅは露骨に顔を歪めてから咳払いをしてテナに向き直る。

「悪魔は侵略者です。他の世界からこの世界に来ました」

近くにあった紙に記号を書き込む。

「ある科学者の実験の結果だと言われています」

「バカだよねそいつ。たしか戦争が終わってすぐじゃなかった?」

「科学者っていう連中は碌なことしないからな」

「その後、人間と悪魔の間に戦争が起こりました」

「なんで?」

「悪魔はこの世界で人間を××しようとしました。そこで人間と衝突したようです。戦争の後負けた悪魔は封印されました」

「そこまではもう聞いただろう。重要なのは契約についてだ」

フヅは一度大げさな息を吐く。

「悪魔は代償を差し出した人間の願いを叶えます」

「封印されてる悪魔がどうやって?というか人間はどうやって悪魔と接触したの?」

「知りません」

「どんな願いも叶うの?」

「知りません。代償次第じゃないですか?」

「そこだろ知りたいのは。前に聞いたときは違う答えだったぞ?」

ユタが言うとフヅが舌打ちする。

「よく覚えてやがりましたねえそんな前のこと」

「俺も覚えてるよ。恨むなら過去の自分を恨みな」

「聞いたんですか。…この話をすれば俺は軍に怒られます」

「殴れそんなやつら」

「そんな野蛮なことは出来ません」

「よく言うよ」

ユタは盤を出してきて駒を並べる。腹の立つ目でフヅを見て口の端を歪めて言った。

「知っていることを聞かせろよって言ってるんだ」


二人とも出かけて一人になってから、フヅはユタがこの家に来た時のことを思い出した。

ユタの親は鉄道事故に巻き込まれて死んだ。戦地で死にたくはないと言っていたが、戦争とは関係ない死だった。

彼女がいなければフヅは命令違反で殺されていた。そして学校時代のフヅの唯一友人と呼べる存在だった。

子供が生まれたとき、フヅも祝いに行った。

自分が死んだら子供はフヅが引き取ってほしい。

「いいでしょう。そのとき俺がまだ生きていたらの話ですが」

冗談めかして答えたことを今でも忘れられない。

家に来たユタはフヅを見るなりその生意気な口を開いた。

「よくもまあ残りの人生をくだらない約束に費やす気になれたな。馬鹿なのか?」

その日テナも家にいた。横で見ていたテナは驚いた顔をした後笑いながらユタに言った。

「フヅは嘘がつけないんだよ」

ユタはテナのほうを見てからフヅを挑発的に見上げる。

「約束を嘘にしたくないっていうことか。馬鹿なんだな、フヅ」

フヅの知るどんな子供とも違った。

「お前はちっとも親に似ませんでしたね」

違和感を覚えながらフヅは微笑んだままそう返した。

「それがどうした?」

フヅは持論を語った。親と子は近づきすぎないくらいがちょうどいい。自分は訊かれたことにだけ答えるようにする。

ユタはポカンとした顔をしてからなにやら納得したように頷いた。

「フヅに友達がいなかった理由が分かった。なるほどな」

横からテナも口を挟む。

「俺はむしろ一人いたっていうのが不思議だったな」

それに笑ったユタはそれからフヅを見上げる。

「これから一緒に暮らすだけの他人は、どうだ?何か言いたいことは?」

「…それもそうですね」

フヅは笑顔を引っ込めた。

「まったく、いい度胸ですねえ、ガキども?」

大人げなさで知られるフヅと恐れ知らずで知られるユタは、初対面からそれはそれは口汚く罵り合った。皆のストレスと陰口をたたかれるテナがときどき茶々を入れた。


一か月後にフヅの兄は病気で死んだ。その子であるテナはフヅの家に来た。

そこまで思い出したとき、フヅは上空に奇妙な音を聞いた。

こっちでは年は書かないほうがいいかな

どうしても内面を書くわけにいかない罪人たち

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