26・そんなはずない!
それからしばらくして俺は荒れて、女遊びが激しくなった。
もちろん表面上は昔に戻ったからこそたくさんの女を落とすことができた。
でも、どの女も消えそうなあの感覚はどこにもない。
存在感が溢れてて、桜木さんよりずっと自分を主張ているように思えた。
中庭にはたまに行くけどそこにはやっぱり桜木さんの姿はない。
そのまま半年が過ぎて、ある日中庭をチラリと見て驚いた。
座っている。
見覚えのある陰が。
うそだ・・・・・・そんなはずはない。
だって・・・・・・もう半年も・・・・・・!
「あん、もぉちょっとぉ!滝野!うちを置いてどこ行く気ぃ?」
「悪い、急いでるからどいて!」
すこし強引に押し切った。
中庭に出てみると、やっぱりいた。
見覚えのあるその姿は・・・・・・。
「桜木・・・・・・さん?」
その影は振り返って顔をしかめるとこういった。
「あなた、誰?」
「・・・・・・え?」
「冗談よ。滝野君。遊び人ですっかり有名になっちゃった滝野君でしょ?違う?私のことなんてすっかり忘れてるんだと思ったわ。」
「ウソだ・・・・・・だって、あの時・・・・・・桜木さんは・・・・・・。」
「ええ、消えたわ。こんなに長く消えたのは私もびっくりよ。」
むけられたかすかな笑みが、苦しくて俺は下を向いてしまった。
下を向いてから驚いた。
「桜木さん!足!!」
「・・・・・・ああ、まだ不確かな存在なのは変わらないし。それにあの時言ったでしょう?消えたら本当にそれが最後かもしれないって。でもやっぱり私は幽霊じゃなかったみたい。もしくは新しい未練ができたからとどまってるって言うのもあるかも。まぁどちらにせよ私は消えるわ。そろそろ。時間がないの。もう私には。さぁ、この手をとってくれるかしら?」
伸ばしかけた俺の手を見て桜木さんはこう続けた。
「いいの?」