22・すげーすげー
桜木さんの驚く声が聞こえて正直俺自身も驚いた。
俺が桜木さんを抱きしめていたから。
すげーすげー・・・・・・。
俺、こんな大胆なことできたんだな。
「どうして決め付ける?どうして!俺は消えてほしくないんだ。桜木さんも消えたくないならそれで良いじゃないか!時間は進んでるんだって前に言ったよな!?俺たちだってきっと進めるって!」
考えとは裏腹に口はスラスラ動く。
でも、全部確かに言いたかったことだった。
「だから言ったでしょ!?あなたも危険にさらされるかもしれないって!そんなのいや!私は私が犠牲になるのはかまわない、でも、あなたにだけは迷惑かけたくないって!・・・・・・あなたが・・・・・・初めて・・・・・・私が、好きになった人・・・・・・だから。」
最後の言葉が苦しくて俺は後ろからだったけど桜木さんをきつく抱きしめていた。
きっと苦しいだろう。
分かっているのにどうして・・・・・・。
体がまるで自分のものじゃないように感じる。
苦しくて苦しくて。
なのに離したくなくて。
本当にどうすれば良いのか分からなくなっていた。
「いいって言ったよ・・・・・・。」
「え?」
「俺、桜木さんの犠牲になるの、いいって言ったよ!それでもいいんだ!」
桜木さんの手が俺の腕に触れた。
気付かなかった。
ただ、無我夢中で。
桜木さんに・・・・・・体温はなかった。
今までどれだけ触れられても俺ばっかり驚いてて、桜木さんの体温を感じる暇なんてなかった。
ただ、触れられる感覚だけはあって、それが本当に消えてしまうそうで。
ただただ強く抱きしめていた。
「苦しいわ・・・・・・苦しいのよ・・・・・・。」
わかってる。
きっと苦しいだろう。
でも、離すことが怖い。
怖い・・・・・・怖い。
「・・・・・・ごめん・・・・・・だけど。」
「・・・・・・それじゃ・・・・・・告白みたいじゃない。」
思わず力がゆるんだ。
「・・・・・・え?」
「そうよ・・・・・・告白みたい。あなた、私がどれだけの覚悟で言ったものを口にするの?それじゃまるであなたが私のこと、好きなようにしか聞こえないじゃない。」
じゃあそうなのかも知れない。
これが好きだというのなら・・・・・・恋だというのなら。
恋はどれだけ重くて苦しいんだろう。