21・今の俺は何をしたい?
今の俺は何したい?
桜木さんのとこ行くか?
行ってどうする?すきだなんて言えないのに。
・・・・・・本当に俺は恋を知らないのかな。
ただ、怖いだけなんじゃないのか?
俺。
もし失敗して桜木さんが消えることになったらどうしたらいいかわかんなくなるから。
俺も、俺自身が消えることが怖いから・・・・・・。
結局俺はすべてから逃げてるのかもしれない。
言い切れるか?
どんなことになっても桜木さんの近くに居たいと。
言い切れるか?
自分は犠牲になってもかまわないと。
すべて、すべて言い切れるか?
分からない。
でももう、逃げたくない。
気付いたら俺は勝手に走り出していた。
「がんばれよー」と後ろから崎田の声が聞こえた。
がんばるよ。
俺、チキンだけど。
でも、俺・・・・・・。
「桜木さん!!」
消えかけてるその背中は大きくびくりと揺れた。
まだ、泣いていたのだろうか。
数分たった今でもなお、雪景色にはとてつもなく寒そうなその姿で。
「俺、桜木さんと居たいんだ!どうしてって聞かれても困るんだけど・・・・・・。」
数歩桜木さんに歩み寄ったら、彼女は振り返らずにこういった。
「こないで。」
「な・・・・・・んで・・・・・・。」
「私・・・・・・本当はバカだから・・・・・・そういうこといわれると・・・・・・勘違いしちゃうの・・・・・・昔からそうだった。裏で外人みたいな背と顔が怖いって言われてるの、知ってたのに・・・・・・初めて友達ができたって小さい頃浮かれてたら、ひどいどんでん返しにあった。だから、もう・・・・・・人は信じない・・・・・・勉強で、あこがれる人ができても、ただそれだけで、誰も信じないと決めた・・・・・・そう・・・・・・決めた・・・・・・はずだった。」
「はず?」
「こないで・・・・・・私は消えるの。それこそ私の望みだった。私が居なくなればあなたも普通の生活ができるんだよ?なのに・・・・・・あなたが来てしまったら・・・・・・私はもう二度と消えたいとは願わなくなってしまうでしょう。」
桜木さんはゆらりと立ちあがった。
その足はもうほとんど形が分からない。
まるで幽霊だ。
「桜木さん、足が・・・・・・。」
「昔はこんなことなかったのよ。でも、最近はおかしいの。心身共に。何日も続けて消えたり何日も続けて今みたいに出てきたり。消えたらいつもこれが最後だと思う時があるわ。だからこないで。中途半端なやさしさはいらないの。いえ、やさしさ事態・・・・・・いらないのよ。やさしいことは罪だわ。だってその人が優しい限り・・・・・・どんなに私を見てくれなくても、私はその人に甘えたくなるから・・・・・・。」
小さな声なのにはっきり聞き取れた。
どうして決め付けるんだろう。
どうして・・・・・・俺はこんなに桜木さんを気にするんだろう。
ただ、頭で考えるより体が答えを知っていた。
「ちょ、滝野君!?」