2・だれだぁ!俺の頭に本を投げてくる奴はぁ!?
本気で涙目になりながら上を見上げるとやっぱり・・・・・・。
「いってぇな―――!!!菊谷!!」
本を持ってこちらを見下ろしているスポーツバカで猫目で性格きつくて女らしくない菊谷 汐菜!!名前ばっか女でしおらしくても意味ねー女!!
しかも本好き!スポーツバカならスポーツバカらしくスポーツでもやっとけってんのに頭も良いんだからほんとにむかつく!!
何かと俺に絡んでくるし!
「そのひょろっこい腕であたしを守ってくれるといったのはどこのどなただったかしらー?」
「えー!?滝野そんなこといったの?私に言ったことはウソだったのー??ひどーい!!」
「う、うるせー!!俺だ!そうだ俺様だよ!!だーらみんなまとめて女の子は守ってやるっつってんだよ!!」
やけになって叫び返す。
「ふん。」
菊谷はそのまま持っている本に目を落とした。
わっけわかんねー。
それに、あの時は俺もどうかしてたんだ。
たまたま・・・・・・本当にすごく困ってそうで、菊谷が悲しそうだったからいっちまったんだ。
守ってやるよって。
でも先に笑い飛ばしたのはそっちだろ!?
それに誰にでもあるだろ!?若気に至りだよ!過ちだよ!間違えたんだよ!
本当は守りが必要な女なんかじゃない、守る側にむしろまわるような女だ!分かってたはずなのに・・・・・・はぁ・・・・・・。
ありえないことしちまったなぁ。
「滝野~そりゃむりだよー。一人じゃあたしら全員は支えらんないってぇ~。」
「え?何?体重が重すぎて無理とかそういうこと~?」
ぎゃははっと笑うと女子に思いっきり叩かれた。
「いって!」
「信じらんなーい、このばか!」
顔は笑ってるのに真面目に痛い。
バカはどっちだよ!手加減しろよ!リアルにいてぇよ!!
「わーった!冗談じゃん!ギブギブ!!な!!」
そうして女子2~3人の襲撃をかわした。
「お前って罪作りな奴だな~。」
男子の中の一人が俺に向かってそういう。
「は?何が?罪作りってのはモテる男の為にある言葉だよ?俺まったく関係ないじゃん。」
「あ~、鈍感。それさえなきゃもっともてるかも知んないのに・・・・・・。」
「何々?俺様もしかしてモテモテ?イケメン?」
ふざけてポーズまでとったら頭を叩かれた。
「バーカ」
罪作り?俺が?
女子にいままで言われてきたことで多かったのは「バカ、あほ、ひょろひょろ。」それのどこがもててんだよ。
どっちかってーと、俺は崎田のほうが罪作りだと思う。
特定の彼女も作らずに女子をうまくあしらって遊びほうけてんだから。
なのにもてるし・・・・・・。
そして放課後になり、俺はなんとなく中庭へ足を向けていた。
「あ、居た・・・・・・つーか何でたまにしか会えないって割りに簡単に会えるんだ?」
「何?また私を話のネタにしようって?」
その人は本からまったく顔をあげずに俺に言い放った。
「違う。そうだ、俺、ぜんぜんそんな気、なくて、ただ、本当に知らなかったんだ。あんた、名前なんていうの?」
なんか俺が謝るような口調になってしまったが・・・・・・まぁいいか。
「あなたに教える必要ないでしょう。」
「あ、俺、滝野。」
「知りたくないし、聞いてない。だから私も知られたくないし、名乗らないから、あなたも名乗らなくていい。そして二度とこないで。」
「それは無理。」
「はぁ?」
やっとこっちを見た。
怒ってる。すごく・・・・・・。
「俺、あんたのことが嫌いだわ。」
率直な感想だった。
外見は好きだけど、人間じゃないみたいな表情をしてて、無表情だと人形みたいに見えるから。
そういう人間を俺は何人も見てきた。
だから、変えたい。変えられるのなら、ちゃんと生きてて、感情があるなら。
「わっけわかんない。ならどうして私に話しかけてくるの?」
「知りたいから。」
「は?」
「ただ単純に知りたいから。どうしてここにいるのかも、どうして幽霊って言われるようになったのかも。」
「教えたら居なくなってくれるの?」
「全部答えてくれたらね。」
にこっと笑うと殺気混じりの顔でにこっと笑い返された。
「いいわ。ここにいる理由は簡単だから。失敗したの。実験に。そしてたまに見えなくなったり見えたりを繰り返してる。それだけ。他に何か?」
「あ、ヤベ・・・・・・今日バイトだ・・・・・・。」
「この学校、バイト禁止じゃ・・・・・・。」
「でも内緒でやってんの。みんなそんなもんだろ。」
「ふーん。あっそ、二度とこないで。」
「無理ー。」
そう言って走って立ち去った。
わかんない。
生きてんのかな、生きてないのかな。
知るはずない。
実験って何だ?なんで見えなくなったり見えたりしてる?
「滝野~!!」
女子に手を振られたが、「急いでんだ!わりーな!!」と冗談半分でポーズを決めて走り続けた。