1・妨げ
「ブワハハハハッ!!」
笑い声が響き渡る空間の中でただ面白いことを探していた。
「ちょっと、静かにしてくれない?」
本を読むのを妨げられて、話すのを妨げられて、お互いに妨げになった。
長い髪、綺麗な顔立ち、スタイルのよさ。
完璧一匹狼。
そんなクールな女と。
とげとげした髪、人なっつこい顔立ち、平均より低い背。
ムードメーカーの男との出会い。
ここはさまざまな人間が通う特殊学校。
どう特殊かというのは、まぁさまざま。
宇宙学部、美学部、さまざまな特殊能力がある変態クラスからめちゃくちゃ平凡クラスまである。
だけど、たまに居るんだ。
同じ空間に切り取られたまんまなような奴。
それをここでは一般的に幽霊と呼ぶ。
とゆうか呼んでいる。
なかなか会わないし、友達も居ないみたいだし。
友達とか不要みたいだし。
「なんで?昼休みなんだからいいじゃん。」
「ちょ、滝野!!まずいよ!こいつ、“幽霊”じゃないの!?」
俺、滝野 健一
バカでうるさいといわれるムードメーカー。
「しゃべるなとは言ってないでしょ、もっと静かにしろといっているの。」
無表情でどこまでも冷たい顔。
だ、ダメなんだって、こうゆう奴見ると・・・・・・うずうずすんだって!!ぜってぇ笑わしてやる!!みたいな!
「その本、楽しい?」
「あなたには関係ない。」
そう言って女は過ぎ去っていった。
というか学校の木の下の木陰で座りなおして本を読み始めた。
「ちょ、ちょっとぉ!まずいよ!真面目幽霊じゃん!!のろわれたらどうしよ~!!怖いよー!」
話してた女子の一人が怖がった。
「まぁ、そんときゃ俺が守ってやるって。」
冗談半分で二カッと笑ったら相手も笑い返す。
「まじー?ありがとー。でもアンタみたいなひょろひょろじゃ無理ー。」
「なぬっ!?俺ひょろひょろじゃねーし!このたくましい筋肉を見よっ!」
腕まくりをして筋肉を見せるとまたあたりが笑い声に包まれた。
「うるさいっ!!!」
鳥たちがいっきに飛び立ち、みんなも一瞬にして黙った。
「なんでうるさくするわけ?私、注意したよね?うるさくするなら他行ってよ。“昼休み”なんだからここでしゃべってる必要も無いでしょ?」
うっすらと微笑した。
いや、歯を見せた。
顔はぜんぜん笑ってない。
「うわぁ・・・・・・やべえよ。おい、滝野!真面目に行くぞ!!」
そう誰かが叫んでみんな血の気が引いた顔で走っていく。
「あんたさ、本読んでんの邪魔したのは悪いと思う。けど、あんたが何やってってもかまわないように俺たちがどこで何しようとかまわないだろ?そんなにうるさいならあんたが動けばいい。それだけなんじゃねぇの?」
背後からみんなが呼んでる声が聞こえる。でも、ごめん。俺、コイツに言いたいこと言っておかないと気がすまないんだ。
笑わない人を笑わせてみたいのと同じくらい、我慢できないんだ。
「ばっかじゃないの?」
ふっと笑われた。
「は?」
「あなた、“幽霊”のうわさ、知らないの?」
「ああ、なんかずっとその場所に変わらずに存在し続ける存在?でも俺、そうゆうの信じねぇし、だいたい、科学的にありえねぇだろ。」
「ありえるの。その幽霊、誰のことだと思う?」
「まさか、あんた?」
「そう。私。そしてうわさは真実。さぁご満足?人をネタにして楽しんでいるような・・・・・・外道人間が!」
カッと目を見開いて俺を睨むと再び本に目線を落とした。
とりあえず今は仲間が呼んでるから行くけど、また来る。
その歪んだ性格、ぜってぇ叩きなおしてやる!!
「滝野おそーい!マジいきなり喧嘩すんだもん。ありえないよー。しってるー?幽霊に逆らった奴はあとで何かしらの形で仕返しされるんだよー?」
「はぁ?なにそれ。」
「まじまじ。先輩とか高熱出して寝込んだとか、腹痛になったとか。いろいろ。」
一人が言い出すときりがなく次々に出てくる。
「あーあ、滝野かわいそー。あたし知らないよー、幽霊に逆らったのは滝野だけだからねー。」
「はぁ!?なにそれ!俺だけ生贄にするつもり!?ひどいよみんな!!なっ!?俺たちは運命共同体だよな?見捨てたりしないよな!?な?な?崎田!」
すると俺より背の高くて俺の親友の崎田は顔をそらした。
「お前だけ血祭り決定かもな・・・・・・。」
「な!!ひっでぇー!!さきたーん!!んなこというなよー!」
「あはは!!滝野あした学校これないねー?」
「俺はさきたんじゃねぇ!!」
すると、スッコーン!!という音と共に頭に激痛が走った。
思わず頭を両手で抱え込みしゃがみこむ。と同時に地面に本が落ちる。
「鼻の下伸ばしすぎよ!女子に囲まれて調子乗ってんじゃないのぉ!?」
う、この声は・・・・・・。