【新】深雪くんはどうやら重たいらしい
佐川深雪
彼は、中学3年の頃から高校3年の現在まで、私が恋し続けている男の子である。
彼を意識しだしたきっかけは何てことはない、彼の容姿ゆえである。
みゆき、という中性的な名前の響きに反し、年頃の男の子らしく日に焼けた少し大きなおでこ。シュッとした印象的な吊り目。それらはパッと目を引くものではないものの、よく見ると均整が取れていてかっこいい。
密かに面食いな私は、いつからか同じクラスの彼を目で追うようになり、あっという間に恋に落ちた。
名前を女っぽいとからかわれても笑って受け流す姿。男子の輪の中でも下ネタを一切口にしない姿。家族が大好きと揶揄されてもスルーする姿。
友達に話したら、きっと、"細かいね"と言われてしまう、彼の一瞬一瞬の姿。
そんな些細な場面に出会っては、深雪くんの新たな一面を知った気がして、あぁ好きだなぁと思ってしまうのだ。
人を好きになると、やはり意中の相手を四六時中眺めてしまうのも仕方のないことで、中3の頃、私はクラスが同じなのをいいことに、暇さえあれば彼を眺めていた。
そうなると、当然、深雪くんと目が合い「しまった」と焦ることもしばしば。だが、彼が少し目を見開いた後に、あの印象的な吊り目を細め、ニヤッと笑う姿と言ったら……!
かっこよくて、あまりにもかっこよくて。気恥ずかしい状況にも関わらずときめいてしまうアホな私は、また性懲りも無く彼を目で追うということを何度も何度も繰り返した。
そうしてささやかながらも独り幸せだった時間は気づけばあっという間に過ぎ、私たちは高校へ進学した。
幸運なことに、深雪くんと私は地元から少し離れた同じ進学校を受験し、特に深雪くんは成績が若干足りていない点について不安視されていたものの無事合格することができた。
彼と高校でも会えることを友達伝いに知った時には、心の中で大喜びしたものである。
しかし、私の運はそこまでだった。
☆
「あ!うちらおんなじクラスじゃん!」
「本当だ〜!やった〜、え、一緒教室いこ??」
「お前何組だった?」
「俺、5組」
「あ、田中と一緒じゃね?俺んとこ、同じ中学の奴が全然いないんだよな〜」
高校の入学初日、クラス名簿の貼り出しを前に周りが賑わう中、私は一人途方に暮れていた。
同じクラスになれたらと楽しみにしていたクラス発表。
なのに、それなのに、私は一組、彼は七組で随分と離れてしまったのだ。クラスが違うどころか、これでは教室が離れすぎて最悪彼の姿を見ることもできないのではないか。
「ま、まさかね……」
そして、その予想は当たった。
「終わった……」
実際に学期が始まってみれば、彼のクラスとの合同授業もなければ、彼の教室近くに行く用事すらない。
それなら用事を装って彼の教室近くまで見に行けばいいのでは?
もちろん私も最初はそう考えた。
だが、同じクラスだった頃に思いを馳せていた私は気づいてしまったのだ。
もしかして私の振る舞いって直球過ぎた?私の恋心、深雪くんにバレバレ?
一度そう思ってしまうと、もうその考えは頭に染み付いて出ていってくれない。一人空回ってた可能性に悶える私は意図的に深雪くんの視界へ入ることすらためらってしまう。
そうしたことが続いた結果、入学して一月経つ頃には、私はすっかり深雪くんと接触する機会を失ってしまった。
しかし、そんな私でも自然に彼の姿を見られる時間が実はほんの少しだけあった。
部活動の時間である。
彼は陸上部、私はテニス部で、勿論活動場所は異なる。しかし、同じ学校に居れば、校内のランニングやウォーミングアップなどのふとした際に彼を見かけたりすれ違ったりすることも多々ある。あの少しニヤッとして笑う彼も眺めることができたのだ。
さらにラッキーな日には彼と一瞬目が合うこともあり、勿論思い込みの可能性もあるが、その時間はすぐに部活中の密かな楽しみとなった。
そうして、彼に近づく勇気もないまま、休み時間や部活時間に廊下や校庭で彼を見かけては喜んだり、探し出した彼のSNSアカウントが時々更新されるのを眺めたりしている間に、私は高校3度目の春を迎えた。
この間、私は彼と一度も同じクラスになることができなかった。一体なんということだろうか。
高校3年にもなれば、学校や家でも進学についての話題が飛び交い、いよいよ受験を意識せずにはいられなくなってくる。だが、そんな時にも私が気になるのはやはり深雪くんのことであり、彼の進学先は私の最重要トピックであった。
恋心のために進学先を決めるなんてことはしない。……まぁ、近くの学校は検討するかも。
ただ、彼は一体どこに進学するのか、それがわからなければ何も出来ない。このまま彼の姿も見れなくなってしまっていいのか。
2年の間ですっかり距離の離れてしまった私にはどうしようもない問題であるのに、それはしきりに私の頭を悩ませた。
☆
そんなある日の放課後、考査前で部活が休みに入った私は、教室に残り、他のクラスメートが談笑する声を聞きながら、ひとり問題集に取り組んでいた。だが、苦手な数学に手をつけたところ、全く問題が解けない。ウンウンと唸ってみても、さっぱりなどころか周りの人の話してる内容が頭に入ってくるという始末。
こりゃ無理だ。早々に見切りをつけた私は、明日友達にでも聞いてみようと心に決め、荷物を持って教室を出る。
そうしてそのまま廊下を歩ききり、階段を降りている頃、ふと後ろから少し小走りで走ってくる足音がした。かと思えば、その足音の持ち主は、踊り場に差し掛かった私に重なり、タイミング悪くぶつかってきた。
私は突然の衝撃に、反射的にすみません!と声を上げ、ぶつかった相手を見る。すると、なんということだろう。意中の相手、深雪くんではないか。
彼もまた、すみません急いでてと言って顔を上げると、私に気づいたのか、
「お、久しぶりじゃん、」
と続きを言いかけ、ぶつかって落とした教科書やらペンケースやらに目を向ける。つられて私も目を向ければ、そこには文具類などの見慣れたものに混じって、異質なものがあった。ゼク◯ィだ。
そう、ゼ◯シィである。あの、高校生でも知っている結婚情報誌だ。名前を知っていても見たとことはなかったそれを、なぜか深雪くんが持っているのである。
深雪くんは私がそれに気づいたと見るやいなや、少し顔を赤らめ慌ててゼ◯シィやら教科書やらを拾う。
「いや特に相手はいるとかじゃないけど!興味あってさ!じゃ!」
嵐のように現れた彼は、そう言うとまたあっという間に去っていった。
「…………」
残された方の私といえば、今見たことを脳内で反芻し、混乱する。
ゼ◯シィ……深雪くんがゼ◯シィ。これは一体???え、深雪くん、結婚を考える人が……?
いや待て、特に相手がいるわけではないって言ってたよね?でも、相手もいないのに普通買う?ドレスとか結婚式場とかに興味がある感じ?ウェディングプランナーになりたいとか???
私の脳内は高速で回転し、ゼクシィを持っていた理由について色々考えてみる。だがどんなに理由をつけてみても、"深雪くんに実は結婚を考える人がいる”という説が一番ありそうで脳をちらつく。
これまで恋人の影も無かった深雪くんに、実は恋人がいて、しかも結婚を考えるほどの仲である。
その可能性は私にとって青天の霹靂であった。
これまで深雪くんが同じクラスの女子や部活の女子マネージャーと楽しそうに話す姿を見かけても、羨ましい気持ちや妬ましい気持ちを宥めることができた。それは、彼が恋愛話と無縁だったからだ。
でも彼は結婚まで秒読みかもしれない。
そう思うと、胸がかき乱され、居ても立ってもいられない。
重い足で家に着き自分の部屋でベッドに突っ伏せば、彼が顔を赤らめ言い訳してた姿が目に浮かぶ。
自分自身は行動を起こさないことを棚に上げ、彼に裏切られたような気持ちになった私は、”あぁ。こんなことなら恥ずかしがらず告白しておけば良かった”。そう思い、少し、泣いた。
☆
そして、あの衝撃から一週間ちょっと経った今日、考査も終わった私は、いつも通り、放課後になるやいなや部活へ向かった。すると、ちょうど部室棟前に差し掛かったタイミングで、同じクラスメートであり男子テニス部でもある富沢くんに声をかけられる。
「浅田!今日は女子、テニスコート先?」
富沢くんは教室でも普段から割とよく話す男子で、部室棟やテニスコートの前でもこうしてよく声を掛けられる。
ただ、部室棟前のような目立つ場所で長々と話すと、部活のチームメイト達の生暖かい視線を感じるような気がする。それに富沢くんと話す姿を深雪くんに見られて勘違いされるのも絶対嫌だった。
そんな事情もあり、私はいつものように、富澤くんとの会話を早く終わらせるべく、言葉を返す。
「あ〜、うん。男子は今日走り込みから?毎日大変だね。頑張っ、」
私の目に、鞄を背負い部室棟へ歩いてくる深雪くんの姿が映る。
彼の姿を見たのは、ゼク◯ィの日以来であった。
何日振りかに見る彼の姿。その姿に、ときめきと悲しみ、嫉妬、身勝手な憤り、様々な感情がないまぜになった私は、”私だって深雪くんじゃなくても”と、一方的な対抗心を心に灯した。
「浅田?」
「……ってね〜って。
いや、ほんと、富沢くん、毎日筋トレも自主練して努力家だよね。……っしかも、ほら!勉強も頑張ってるし。今日返ってきた数学のテストとか何点だった?」
「ん?おぉ、90ぐらい?」
「90?わ〜〜富沢くんほんと頭良いね!私70点いかなかったよ、ハハ……。え、富沢くんなんかいつにも増して恰好良く見えてきたな〜……なんて、ハハハ。……っあ!よ、よかったら今度、数学教えてもらえない?」
「あ〜まぁいいけど?」
いつもより1トーンほど調子を上げて、慣れないながらに大きな声で褒めちぎる。
急に富沢くんを褒めはじめた私に彼も一瞬怪訝そうな顔をする。だが、なんとかうまく褒められたのだろう。富沢くんも満更でもなさそうに、どこができなかったの?などと訊いてくる。私はそれに応えながら、丁度私たちの横を通り過ぎていく深雪くんを盗み見た。
真顔の彼と私の視線が一瞬交わる。
私と目があった深雪くんは、大きな声で会話していたから目を向けただけですよ、とでも言いたげな、まるで気にしてなさそうな様子で、ふい、と視線を逸らし私の横を通り過ぎた。
そして残された私といえば、
……あぁ、深雪くん、ほんとに私に興味が無いんだ……
当たり前の事実を改めて突きつけられ、ショックを受けていた。
途端に媚びてしまったことへの後悔や恥ずかしさが噴出する。
私は後悔に苛まれながら富沢くんとの会話をなんとか終わらせると、今あったことを忘れるようにひたすら部活に励んだ。
☆
だが部活が終われば、嫌でもその感情と向き合わなければならない。部活をなんとかやり過ごした私は、学校の閉門時間ギリギリに正門を潜り、チームメイトと別れたあと、一人憂鬱な気持ちで歩く。
すると、道の先のコンビニ前で、深雪くんが携帯を触っている姿が見えた。
中学校区が同じだったことから、深雪くんも私と同じ地域に住んでいるのだろう。下校の際、駅までの道のりや、車内で彼を見かけることは時々あった。
このようにコンビニ前で見かけることも度々あって、そんなとき、私はいつも心を浮つかせたものだ。
だが、先ほどのことがあったばかりでは流石にそのような気持ちにもなれない。私は少し俯きながら足早に彼の前を通り過ぎた。
すると、少し歩いたところで
「……さだ……………浅田!」
唐突に名前を呼ばれ、後ろから肩を掴まれた。
振り向けば、先程コンビニ前にいたはずの深雪くんが立っている。
頻繁に彼を見かけてはいたものの、彼に声をかけられるのは、先日のゼク◯ィ事件を除けば、中学の時以来、時間にして約2年ぶりである。
「えっ、さ、佐川くん?ど、うしたの?帰るところ?」
「うん、帰るとこ。浅田は最近調子どう?部活とか」
いきなりの出来事に驚き、なぜ?と思いつつも、現金な私の声は自然と跳ね上がる。
「えっ、うん、まぁ元気かな、インハイ近くて最近部活が忙しすぎるけど」
「あー、わかる、俺のところも同じ。そういえば少し前、浅田がシングルで練習してるの見かけたけど、今度のインハイ、個人で出るの?」
「あ、そうそう。個人戦に出ることになって……」
なんとか平静を装い、言葉を返す。
深雪くん、部活見てくれてたんだ。
時々部活中にすれ違うことはあったものの、部活のことを話すのは初めて。認識されていたという新事実に困惑や沈んでいたのも忘れて一瞬嬉しくなる。
でも、彼には仲の良い恋人がいて……
恋人がいるのに、わざわざ気を持たせるような事をする深雪くんに私は複雑な気持ちを抱く。
「まぁ、そんな感じかな。じゃあ私、そろそろ……」
本音を言えばもっと話したい。でも、恋人の存在を知っていながら懸想して近づく人にはなりたくなくて。
後ろ髪を引かれつつ、早々に話を切り上げようとする。すると、
「うん。あ、そうだ、俺、実は浅田に訊きたいことがひとつあって。
……浅田さ、今日の部活の時、男子テニスの人と話してたよね?」
会話終わりの雰囲気をぶった切るように、唐突に質問をされた。ん?男子テニス?
「え?あ〜〜っと、うん?富沢くんのこ」
「好きなの?」
「え?」
「浮気?」
いつの間にか真顔になった深雪くんが訳のわからないことを言う。
うわき……浮気?誰が?何を?いや聞き間違い?
「ん?えーーっと……?」
私が戸惑っていると、彼は頭を掻き、苛立ちを誤魔化すような表情をした。
なに?なぜ苛立った雰囲気に?
「今日、部活前に話してたよね、俺見たよ。
すごい褒めちぎってたじゃん。浅田があんなに褒めるなんて珍しいね。
てか目合ったよね、誤魔化すのは無理があるんじゃない?」
「え?あ、うん?」
「……はぁ。もう焦れったいから言うけど、浅田ってさ、いつも俺のことガン見してたよね。部活の時も。廊下ですれ違った時も。そわそわして可愛いな〜って思ってたよ。
なのになんで浮気したの?」
何をいうかと思ったら、まさか目で追っていたことをバレていたとは!深雪くんの急なぶっ込みに、頭は一瞬にしてパニックになる。
「え!いっ、いや、見てないし!」
「ふ〜ん、じゃあ、あれは俺の勘違い?
それは無理があるよ、浅田。
……ていうか、浮気は否定しないんだね。
はぁ。まさか、あのテニス部のやつに本気ってことはないよね?
ほら、あれはほんの気まぐれで、俺が好き、俺しか好きじゃないって言って?
そしたら、うん、他所に浮気したことは許す。
で、今日から付き合おうね。
これからは登下校も昼休みも放課後も一緒だし、休みの日も一緒に過ごせたらいいなあ。あと、俺達同じ大学目指してるから。入学後のこととかも……」
「さ、さがわくん!?」
流れるように淀みなく話す深雪くんの勢いに押される。
話の内容を全部理解できてないが、これは彼が私を好きということだろうか。いやでも深雪くんには恋人がいて……
「だからさ、」
「っわ、たし知ってるよ!深雪くんには恋人がいるって!ゼ、ゼク◯ィ持ってるの見たんだから!」
勇気を振り絞って、深雪くんを遮り声を出す。ちょっと声が裏返り、顔も熱くなって目がジワっとする。なのに、
「え、それ、浅田とのこと考えてだけど。」
「え?」
唐突に訳のわからないことを言う深雪くん。
「だから、あれは、浅田と付き合ったときのことを考えて、結婚についても情報収集しとこうかなって。付き合うだけ付き合って、結婚考えてませんでした、っていうのはやっぱり無責任だろ。
それに、俺としてはあの雑誌を見せて、浅田にアピールしたつもりなんだけど?」
「え?」
「浅田だって、最初から"結婚絶対なし、付き合うだけ!"って考えの人より、結婚も視野に入れて考えてくれる人と時間を過ごしたいだろ?」
「まぁ、そうかな?」
なるほど?なんとなく一理ある気がする。じゃあ、深雪くんは恋人なんかいなくて私のことを好きってこと?
「じゃ、じゃあさ深雪くんは私のこと好きってこと?」
「うん、そう。好き。」
深雪くんがちょっと照れ臭そうに目線をそらす。この距離で見る初めての表情にキュンとする。かわいい。レアだ。そして、私は気づく、両思いということに。それならやることは一つしかない
「っ……!み、深雪くん!私も深雪くんが好き、です…付き合ってください!!」
「……うん。喜んで。」
思いもよらない幸運に身体が震える。急に火照りだした顔で深雪くんと見つめあうと、ふと満面の笑みだった深雪くんが何かを思い出した表情をした。
「あ、そうそう。付き合ったら言おうと思ってたんだけど、俺、ほんとは今すぐにでも結婚したい派なんだ。でも、親の説得の問題とかもあるだろ?だから、俺、大学卒業までは結婚待つよ。その間に説得できるよう頑張るし。
だからさ、浅田も大学行ったらすぐに同棲して、卒業後には必ず結婚するって約束して?」
「けっこん!?」
「中学からの仲じゃん。5年なんてあっという間だよ」
深雪くんは私ににじり寄ってきて、すぐ上から私をじっと見つめる。
いや、ちかい!思いの外近い彼との距離に、そしてどんどんと展開する話に頭がくらくらする。
「だってさ、結婚は絶対しない、って思いながら付き合うって時間が勿体ないし、不誠実じゃん?浅田、俺のこと大切にしてくれるでしょ?」
「うん……」
勿論深雪くんのことは大切にしたい。でもなんだかうまく丸め込まれてるような?
「良かった!じゃあ、結婚する、って宣言して指切りして?」
彼が言うがままに、宣言をし指切りをした。彼は満面の笑みを浮かべてくれて、あぁ何か色々と約束してしまったけど、これは大団円といってい、
「あ、あと、浮気は金輪際許さないし、実際うっかりもあったから、これからはなるべく男には近づかないって約束してくれる??浅田は目離すと心配だからさ。彼氏のお願いだし聞いてくれるよね」
深雪くんが笑顔のまま、きゅっと目を眇め、更に付け加える。
「……」
深雪くんは、どうやらまだまだ私の知らない顔を持っているらしい。そして何やら重い。
「うん、いいよ。」
でも、それでも、一つだけ明らかなことがある。それは、彼から向けられる好意に私は深い喜びを覚えているということだ。だからそう、
きっと私は彼から離れられない。
幸福感と、どこか諦めのような気持ちとを抱く私に、彼が目を細めニヤッとした笑顔を浮かべる。
なにか大変な約束をしたかもしれない。頭の端でうっすらそう思いつつ、大好きな彼のその笑顔を記憶に刻みつけるべく、私はただ彼を見つめ続ける
のであった。
おしまい