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1.双子 高熱の夜

1.双子 高熱の夜


 蒼白氷の季節が近づく、ニアの花が咲く頃。神聖ルグドゥル王国では中立派にあたるハドクリート伯爵家の『麗しき双紫珠』と呼ばれる双子は、その二人ともが高熱に倒れていた。


 神聖ルグドゥル王国においては、子供は全て6歳までは創造神ラフガルドのモノであり、大切な預かり者であるとされている。その為、7歳になる前夜には「人の子になる事を神に報告する」為に、一晩中神殿にて祈りを捧げる儀式を行う。これは、王侯貴族だけでなく、平民も一人残らずせねばならない儀式であり、神聖ルグドゥル王国の国民全ての義務であった。もし、7歳になる前に亡くなってしまった時、人々は「あの子はあまりに可愛かったから、神様が手放さなかったのだ」と言った。


 神からの預かり者であるとする考えは、幼子は些細な不調で生命を落としやすい為に気を使うようにとの教訓であろうとの意見もあったが、古くは王国の創国に由来する。

 この世界には100を超える国と地域の他、万を超える部族があるが、その中でも神聖ルグドゥル王国は最古の創国の歴史を持つ国だった。

 国土の広さは隣国、リドルグラシア帝国の10分の1にも満たない小国だが、神聖の名を冠する通り、ルグドゥル王国には神の力と称される『神聖力』を持つ者が一定数生まれた。

 それは、創国の際に、神がルグドゥル王国の人間のみは、もっとも自らに似せて創らせたからだとの記述が残されている事に起因する。

 混沌とした大地を預かった神ラフガルドは、様々な生命を創り出した。

 神ラフガルドが全ての生命を作り終えた後、神の神気と混沌とした大地の魔素が混じり合い、神ラフガルドの意志から外れて、強大な力を溜め込んだ竜が生まれた。

 又、大地の混沌とした魔素の中からは、神の意に反して、湧き出る様に魔物が生まれた。

 神は自らの半身として一人の乙女を生み出し、その乙女に自らの思惑とは外れて生まれてきた竜を手懐けさせた。

 乙女と乙女に従った竜は、神を手伝い、神の意に反して生まれ出した魔物を滅失させた。

 多くの魔物を滅失させて地上を人や他の動物達が生きるのに適した世界に整えた乙女と竜は、神が作った、神に似せた人々が住まう神聖国を守るように寄り添わせた隣接地に強大な国を造った。

 後にその国はリドルグラシア帝国と呼ばれるようになる。

 帝国となる前、その王国の初代王は、神の半身として創り出された乙女と、乙女に付き従った竜の二人が契って生まれた男の子だった。それ故、この地上で神に似た人々が住まう神聖国にだけは、神の力である神聖力を持つ人間が生まれ、その隣に創国された帝国には、竜の力を持った皇帝が立つ。

 神聖国は、神聖力を持つ者を世界各国に派遣して、創国後も派生する魔物から人々を守り、帝国はそんな神聖国を、悪き企を持つ人間達から守る為に力を尽くした。

 帝国と神聖国の繋がりを強固にし、神聖国を帝国が守り続ける為に、帝国は神の力をより多く持った『聖女』の名を冠する乙女を国王が娶った代において、聖女が子をなした際には、必ずその子を帝国の皇后、若しくは皇配として貰い受けた。

 その歴史は2000年を超え、今もまだ続いている。


 聖女が国王の側妃となり、その子が7歳を迎えてひと月も経たぬ今日。

 王子と同い年の双子は二人して高熱に倒れ、「人の子になる事を神に報告する」儀式の為にラフガルニア聖教会に行く事は出来なかった。

 あまりに美しい男女の双子だった為に神が二人を手放さないのでは無いかと、伯爵家の面々は戦々恐々とした。

 高熱で意識がはっきりとはしない中、兄は隣に眠る妹を抱き寄せ、6歳とは思えないほどの力で抱きしめた。医師や父である伯爵は二人を引き離そうとしたが、妹を抱きしめる意識の無い兄を、同じく意識の無い妹から引き離すことは出来なかった。

 この高熱がおさまり目を覚ました時、妹はそれまでその身に宿していた強い神聖力を失い、兄は其れ迄順調に強くなっていた神聖力をさらに倍増させていた。





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