第2話 因果かはたまた必然か
深く深く沈んでいくような感覚だった。周りは全て水とスライムを合わせたような物体で覆われていて、目の前は暗いのに何故か不安じゃない――本当に不思議だ。
手足は動かず感覚も無い筈なのにどこにでも行けるような・・・そんな万能感がここにはあった。
死んで無いのかもはや死んだ後なのかすら僕には分からないが、取り敢えず意識がある事だけは分かっている。何か出来ることは無いのだろうか――と言っても考えること以外ここでは出来ることがない。ここで一生を過ごすのは嫌だが、出来る事はあまり無さそうだ。
少し経ったがこんな事をしていてもあまり状況は変わらなかった――強いて言うなら少し下に沈んだ気がする位だ。時間の概念が無いこの空間ではどのくらいの時間が経ったのが分からないから、どれくらいの速度で下に進んでいるか知る方法が無い。
体感で分からないかと最初は調べようとしたがなかなか上手くいかない。一体どこまで沈んでくんだ?混乱してしまうとどうにも出来ないので少し落ち着こう。
その時、僕の脳内に綺麗な声が響いた。『〚第一特異点ユグドラシル〛での活動を推奨します。』『以下の選択肢から選んで下さい。「YES/NO」』
第零惑星特異点ユグドラシル?一体何の話なのだろうか、活動を推奨するということは他にも選択肢があるのかもしれない。
どうするべきなのかを考えてみてもあまり考えが纏まらない。僕は一体どうしたら良いんだろうか。だけどYESかNOの選択肢から選ぶのだったら僕は――
YESを選びたい。
そう思った。あまり深く考え過ぎても良くないと思うし、この機会を逃したらもうこの選択は出来ないかもしれない。
もしかしたらなんて考えを上げていけば切りがないが、間違えたとしても苦しいとしても自分で、自分自身の選択でそこえ行ってみたいと願った。
だから僕はYESを選択した――たとえこの選択が間違っていたとしても。
『YESを選択しました。』『第一特異点ユグドラシルへの自身の再構築――転生を開始します。』
赤い光を見た 赤くて赤くて赤くて赤い 赤い光を僕は見た 綺麗で脆くてそれでも赤い そんな赤を僕は見た 僕だけしか見ないであろう 僕にしか見えない赤を見た
星龍歴687年8月――その青年は第一特異点ユグドラシルへと転生を果たす。それは因果かはたまた必然か。数多の伝説と偉業を残す、この世界の『朱眼の転生者』として。
眩しい――何て眩しいんだ。目を開けた先に見えたのは眩しく光る太陽だった。手を上げてみると動かせるし足を使って立つことも出来た、なんて嬉しいんだ――足と手が動かせるだけでこんなにも喜んでしまうなんて本当にどうかしてしまったのではないのだろうか。
辺りを見回すと僕は、余りの光景に思わず感動してしまっていた。こんなにも綺麗な景色を今まで見たことが無かった。そう、ただの1度だって。
話で聞いたエメラルドの様な草やダイヤモンドの様な輝きの空、真珠のような美しい湖などは一生見れないと思っていた。
だけどこんな所で見られるなんて夢にも思わなかった。こんな景色がみられるなんて――本当に夢みたいだ。
僕は生まれつき目が悪かったせいで、夜空などを満足に見ることが出来なかった・・・日常生活での不便は余り無いのだが、景色を見ると自分の目の悪さを再確認してしまう。
『それは誠に嬉しい限りでございますマスター。』うぁっ――びっくりした。貴方は一体なんなんだ?『私はマイマスターのスキル〚朱眼〛の効果により召喚されたサポーターです。』
そういえばそんなスキルがあった気がしないでも無い――因みにそのスキルの効果にはどのような物が有るんだ?『では早速説明させていただきます。しかしまず最初に基礎知識を説明させていただきます。
『スキルとは魔力――つまりMPを使い発動させるものです。魔力は生命の源で全ての生物に例外なく与えられていますが、魔獣や悪魔は魔力が無くなってしまうと死んでしまいます。』
つまり魔力は魔獣や悪魔にとって生命の源という事か?『その認識で正しいかと思われます。』
『そしてそれ以外の生物は例外を除いて、魔力が枯渇しても死に至ることはありません。しかし魔力不足になってしまうと目眩や吐気、頭痛や腹痛などになってしまう恐れがあります。|固有特殊技能は一部の例外を除いて、獲得することができません。』――じゃあ一部の例外ってなんだ?
『ヴァンパイアなどの〚血統存続〛や迷宮または魔王や魔神を討伐した際の特別報酬などが挙げられます。』――ありがとう。結構分かりやすかったよ。説明を続けてもらえるかな?
『はい。では説明を再開させていただきます。固有特殊技能は大抵の場合は生まれながらに獲得している事がほとんどです。また、その確率は約0.0005%――50万人に1人の確率となっています。』・・・そんなに少ないのか。余り能力を晒すのはやめておこう。
『では本題に入ります固有特殊技能《》〚朱眼〛の効果は以下の通りです。』
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固有特殊技能〚朱眼〛
[由来]伝説の種族ハイヒューマンの英雄キリマガリアが持っていたとされるユニークスキル。数多の敵を屠る為に改良され続けた執念の産物。
使用可能特殊技能〚朱眼解放〛〚朱眼魔術〛〚朱眼支配〛〚眼技収集〛〚有機看破〛〚自律神機〛
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〚朱眼解放〛
[概要]英雄キリマガリアが認めた物には必ず使用したとされる唯一無二のスキル。しかしこのスキルを発動したのは生涯でも数十回程度だったとされている。
効果 ・全てのステータスに+70%の補正をかける。与えるダメージにも+70%の補正をかけ常に超幸運状態が続く。しかし効果も莫大な為、750時間に1回のみの使用が可能。
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〚朱眼魔術〛
[概要]英雄キリマガリアが魔王城の攻略のみに使ったとされる超極大魔法で、消費魔力が他と比べ圧倒的に多いが、使った瞬間に空が朱色に染まると言われている。
発動可能魔法 ・夢の終わり・死神の歌・最後の晩餐・悪魔の楽園
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〚朱眼支配〛
[概要]英雄キリマガリアが魔王に使ったとされる支配系最強のスキル。朱眼魔法の次に消費魔力が高いが、それ相応の力を有する。
効果 ・魔力及び体力が1割未満の有機物に対して使用が可能。対象を絶対に支配する。
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〚眼技収集〛
[概要]英雄キリマガリアが魔王から奪ったとされるスキル。しかし英雄キリマガリアが最も嫌悪するスキルである事から、必要最低限しか使わなかったとされている。
効果 ・魔力及び体力が1割未満であり、自身に心からの敗北を認めた有機物のみに使用が可能。対象の片眼とスキルを全て奪う。しかし奪った対象の殺害は不可。
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〚有機看破〛
[概要]英雄キリマガリアが最初に取得したとされる、消費魔力が無いというとても珍しいスキル。格下にしか使えないが、英雄キリマガリアはこのスキルを最も使っていたとされている。
[効果] 魔力消費無しで、自身のステータスの半分以下の相手に使用可能。使用した場合は相手に気付かれること無くステータス情報を回覧することが出来る。
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〚自律神機〛
[概要]願いによって顕現した自立型神機。
[効果] 縺ゅ↑縺溘?鬘倥>繧貞掌縺医k蜚ッ荳?辟。莠後?蜉
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『〚朱眼〛の効果はこの様になりますが、現在の状況では能力が制限されてしまいます。』能力の制限?具体的にはどれくらい制限されるんだ?
『――現状使用可能なスキルは2つになります。』
たったの2つだけ・・・なのか
どうも、作者の椋鳥です。ここまで見てくれてありがとうございます。感謝しきれないほど皆様にはお世話になっています。これからも宜しくお願い致します。
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