第1話 朱眼の転生者
赤い光を見た 赤くて赤くて赤くて赤い 赤い光を僕は見た 綺麗で脆くてそれでも赤い その赤だけを僕は見た 美しいああなんて美しい そんな赤を僕は見た 僕だけしか見ないであろう 僕にしか見れない赤を見た
小学三年生になった僕の家での出来事だった、弟と一緒に勉強していると、年の離れた兄がこっちにやってきてスマホを操作し始めた。
僕達はそこで年の離れた兄に携帯を向けられ『――やってみる?』と言われた。兄からしてみればただの気まぐれだったかもしれないその行為が、僕にとっては人生最大の失敗だった。
ハッキリ言うと僕はハマった、いや、ハマり過ぎた。
最初は楽しいだけだった。強いキャラが当たった時にちょっとした自慢をしたり、兄と共通の話題を持てた事自体が当時の僕にはとても嬉しく感じられた。
でも時間が経つとそうでは無いらしい――兄は家を出て社会人になった後、僕とはあまり関わりを持たなかった。その時の僕はまた仲良くなれると本気で思っていた。
ゲームが全てから逃げる口実になっていた事に僕は、今まで気付くことができなかった。違うな、気付いていたのに治すことが出来なかったんだ。
兄を恨をんでいるわけでは無いし、全ては僕の責任だなんて事は僕自身がよく分かっていたつもりだった。だけど、いざ現実を突きつけられると僕は逃げてしまった。いやこの際だからはっき言おう。僕分かっていたのに立ち向かわなかったんだ。
勉強が出来ないのも僕の責任、運動が出来ないのも僕の責任、指示されたことも出来ないのも僕の責任、そう全ては努力をして来なかった僕の責任だった。
ただ悔しかった――ただ兄と仲良くなるために遊んでいたゲームが、いつの間にか僕を壊す引き金になるなんて思ってもいなかった。いや本当は・・・僕が引き金だったのだろうか。
いやもう何も考えたくない、もう疲れたんだ。
だからその責任を全て捨てる為に僕は、ある事を実行してしまう事に決めた。いや決めてしまった。だけど、こんなの唯の押し付けだって事は自分が1番分かっている。だけど・・・だけどもう疲れたんだ。
家の重いドアを開け重い足を全力で動かす。訛りきっていた体が悲鳴を上げているのを堪え、走る――鼓動かなり早くなって気分が高揚してくる――走る――走る――走る
目の前の通りを走り過ぎ、目的の建物に着いた。人気のない建物の階段を見つけ、その後直ぐに階段を大急ぎで上がった。
疲れたら休み、1呼吸置いてからまた大急ぎで階段を上がり続けた。流石に疲れすぎたせいか体の節々が痛い。それでも僕は止まれなかった。
そして、走って上がった先に見えたのは『見知らぬ天井』ではなく、風通しの良い屋上だった。
早速僕は持ってきたものをバックから出し、靴を揃えて置いて遺書を隣に置いた。
――善は急げだ。
『遺書とペットボトルしか入ってないけどね』
そんな独り言の後、僕は大空へ羽ばたいた。
青い光を見た 青くて青くて青くて青い 青い光を僕は見た 綺麗で脆くてそれでも青い その青だけを僕は見た 美しいああなんて美しい そんな青を僕は見た 僕しか見ないであろう 僕以外も見える青を見た
『生体情報を確認しました。』『準備プロセスを開始します。』『損傷率の高い眼球の回復及び身体の再構成を測ります――成功しました。』『概念・〚無意味な人生〛を獲得――成功しました。』『特殊技能〚落下耐性〛を獲得――成功しました。』『概念・〚苦しみの中〛を獲得――成功しました。』『固有特殊技能〚朱眼〛再獲得――成功しました。』『固有特殊技能〚朱眼〛の効果により、ステータス補正を加えます。』『外界に適応する為、新たな身体を再構成します。』『身体は以下の項目から確率で選ばれます。』『〚ヒト・ハイヒューマン・エルフ・ローエルフ・ハイエルフ・ダークエルフ・ドワーフ・ホビット・アニマノイド・ライカンスロープ・ウェアタイガー・オーク・ソウドボア・リザードマン・ミノタウロス・ダンピーラ・マーメイド・ヒッポグリフ・ヴァンパイア・バンパニア・サイクロプス・ゴブリン・ホブゴブリン・オーガ・トロール・ハーピー・アラクネ・アルラウネ・アルラウン・サキュバス・インキュバス・ドラゴニュート・ドラゴニア・ドラゴノイド・etc〛』
作者の椋鳥です。本当にこの作品を描き始められる事を読者の皆さんに感謝申し上げます。この度はこの小説を読んでいただき、ありがとうございます。出来れば星やブックマークを付けて頂けると有難いです。今後とも宜しくお願いします。