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降臨

雲上10m。

そこでは、アレックスと5人の天使による音速の追いかけっこが繰り広げられていた。


『もしもし。アレックスさん、聞こえますか?』


「おお!メルちゃん!ちょっと手を貸してくれない?今天使に追われてて、地上の偵察どころじゃ無いんだ!」


『天使?…まだお若いのに、そんな…』


「お迎えが来た訳じゃ無いわ!天使ってのはその…とにかくやばい航空部隊!」


V字のフォーメーションでアレックスを追う天使軍。

皆軍服を来ており、純白の羽には機械の装甲が取り付けられていたが、腰には銃では無く剣を納めた鞘があった。


先頭の一人が格好に不釣り合いな金色の剣を抜き、切っ先をアレックスに向ける。


すると、焔を模したそのうねうねの剣から、光り輝く光線が放たれた。


「うわぁ!?」


アレックスは慌てて回避する。


「メルちゃん!早くしないとボク本当に死んじゃうよ!お願いだから手を貸して!」


『はい。』


アレックスの右肩の上に魔法陣が展開し、メルティの右腕が、彼女の肩にしがみつくように召喚される。


「メルちゃん!手を貸してってそう言う意味じゃ…」


『それを敵の方に投げて下さい。』


「え?」


『良いから早く。』


アレックスは言われるがままに、メルティの手を追手に投げ付ける。


縦に回転しながら宙に放り出されたメルティの手のひらに、蒼色の丸い光が灯る。

それは、メルティの目だった。


「何だ。」


天使達が爆弾を警戒して散ろうとした次の瞬間、彼等を包囲する様に無数の魔法陣が展開され、そこから青い鎖が放たれた。

鎖は瞬く間に天使の胴体に巻き付き5人を鎖で連結させ、メルティの手がその鎖を掴む。


腕の下に残りの体が召喚され、メルティが鎖にぶら下がっている状態になる。


天使5人の浮力がウランを超える重金属の質量に敗北し、彼等はメルティごと落下していった。


「や…やば…何て脳筋な戦法なんだ…」


『どんな魔法も、使い方次第ですからね。アレックスさんはそのまま上空で待機…いえ、もう雲の下まで来ても大丈夫だと思います。』



〜〜〜



「このナイフ凄いじゃない。どんな鋼鉄でもバターの様に切れるわ。お姉さん気に入ったわ♪」


基地の壁内入り口前に積み上がった死体の山の頂上に座るジェニファが、手の中で青いナイフをくるくると弄びながら呟く。


死なない体に必殺の武器。

鬼に金棒とは正にこの事だった。


「メルティちゃん。後方支援サンキューね。あの爆弾犬が無かったらあたし、今頃拘束されて酷い目に…あれ?メルティちゃん?」


ジェニファは立ち上がり、屍の山の上からメルティを探す。

しかし、何処にも見当たらない。


その次の瞬間、死体の山の前、基地とは反対側の方に、メルティと5人の天使が墜落してきた。


「うわ!わ…わわわ!?」


その衝撃で山が崩れ、ジェニファは数十人の下敷きになった。

天使達は無傷だったが、彼等を天上へと導いていた機械武装は壊れてしまった。



ーーーーーーーーーー


構造解析完了。

新たな設計図が解放されます。


【イカロスウィング】

主に授けられし、天翔る翼です。

リンカネイションにのみ装備可能で、装備者に飛行能力を与えます。

かつて空を夢見た科学者が、大地の呪いを抜け出そうと、叡智の全てを結集させて作った翼。人が空を飛んだ翌の日に、文明は神の怒りに焼かれて消えた。


素材

【ブラフニウム】2000個

(現在所持数35295個)


ーーーーーーーーーー



「………」


メルティは最初、破壊した物を分析して新たな設計図を生み出しているのだと思っていた。

しかし解説文には、まるでそれが遥か昔から存在したかの様に書かれている。

メルティにはそれが疑問だった。


「鎖は物を縛り繫ぎ止める物だが、お前のそれはその鎖の機能、つまり繫ぎ止める力を失わせる事で始めて鎖を理解する。お前の思う通り、お前がイチから考えない限り、それはイチから設計図を創っているわけじゃ無い。この世界の法則下で機能している物体を解析して、類似品の設計図を、文字通り“解放”してるのさ。」


「ふみゃあ!?…あれ?」


それが一瞬なのか、それとも10数秒間での出来事なのか、メルティには区別が付かなかった。


「マスターの声がした気がする…」


メルティの知らない情報を話した辺り、幻聴で無い事は確かだった。


「イーザイドの自動人形を確認。」

「これより交戦を開始する。」


輝く剣にて鎖を焼き切った天使達の抑揚の無い声に、メルティは我に帰る。

彼等は再び浮上していたがその高度はせいぜい、屋根より高い、程度だった。


「一応聞いておきますが、平和的解決の余地はありますか?」


メルティは問い掛ける。


返事は、無い。


「分かりました。《創造・イカロスウィング》」


メルティの背に、大きな機械の翼が召喚される。


それは蒼みがかった金属で出来た飛行機の翼の様な形をしており、左右に一つづつ、下向きで噴射口の様な物が付いている。


「…我らが翼を真似たか。」


「さあ。この場合どうなんでしょうね。」


噴射口から、炎と煙の代わりに蒼い光が放たれる。

メルティは殆ど音を立てずに、ふわりと空までやって来る。


「天に居ましを許されしは神とその使徒のみ。貴様もまた、魔女であるか。」


天使達が一斉に剣を構える。

メルティの翼の刃型機械が逆立ち、高速飛行に特化した形に変形する。

変形している途中は、移動こそ出来ないものの浮力は維持された。


「行きますよ。」


メルティは姿勢を低くする。


次の瞬間、跳躍だけで天使達の元に辿り着いたジェニファによって、彼等は等しく、大鎌で首を刎ねられた。

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